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ナミヤ雑貨店の奇蹟 [日本の作家 東野圭吾]

ナミヤ雑貨店の奇蹟 (角川文庫)

ナミヤ雑貨店の奇蹟 (角川文庫)

  • 作者: 東野 圭吾
  • 出版社/メーカー: KADOKAWA/角川書店
  • 発売日: 2014/11/22
  • メディア: 文庫

<裏表紙あらすじ>
悪事を働いた3人が逃げ込んだ古い家。そこはかつて悩み相談を請け負っていた雑貨店だった。廃業しているはずの店内に、突然シャッターの郵便口から悩み相談の手紙が落ちてきた。時空を超えて過去から投函されたのか? 3人は戸惑いながらも当時の店主・浪矢雄治に代わって返事を書くが……。次第に明らかになる雑貨店の秘密と、ある児童養護施設との関係。悩める人々を救ってきた雑貨店は、最後に再び奇蹟を起こせるか!?


東野圭吾の作品は一定の品質が保証されているようなものなので、安心して読めますが、帯の惹句が
「東野作品史上、もっとも泣ける感動ミステリー!」
なんて下品な謳い文句だこと。
「悩み相談、未来を知ってる私にお任せください」
というのも、中身を読んで書いたのかな? と思うくらい的外れな宣伝文句です。
角川文庫大丈夫か!?

さて、本書は、ミステリーというよりはファンタジーですね。
過去と現在がクロスするような設定が用いられているので、あえていうとSFファンタジー?
まあ、このあたりの設定そのものはちょっといい加減というか、あまり深く考えて設定されているようには思えませんでしたが、こういう設定を前提とすると、あとは如何に重層的にお話を組み合わせていくかに作者の手腕が問われるわけで、そのあたりは東野圭吾なので、うまいものです。

ナミヤ雑貨店に寄せられる悩み相談は、よくある、というか、ありふれたものでありながら、個別の事情というものもあり、簡単には回答が出せないものです。
「オリンピック選手を目指して練習に打ち込むべきか、不治の病で余命わずかの恋人に寄り添っているべきか」(相談者:月のウサギ)
「音楽で身を立てたいという夢を負うべきか、それともあきらめて実家の家業を継ぐべきか」(相談者:魚屋アーティスト)
「子供のできにくい身体にようやく授かった命。でも妊娠は不倫の結果であり、堕すべきか、生むべきか。」(相談者:グリーンリバー)
「平穏な中学生生活を送っていると思っていたら、家が夜逃げすることになり、両親についていくべきか、自分の信じる道を進むべきか」(相談者:ポール・レノン)
「経済的に自立したいと思っているのでいつか自分の店を持つのが夢で、腰掛けのようなOLを続けるべきか、ホステスを続けるべきか」(相談者:迷える子犬)
この乱暴な要約ではちゃんと伝わりませんが、背景含めて考えると、いろいろと重い問いです。
これらの問いに(全部ではありませんが)、三人組が対応できるのか、と当然思うのですが(もともとのナミヤ雑貨店の主、浪屋雄治にとっても難しいことだと思いますが)、そのあたりも作者は配慮していますね。そんなうまくいくパターンばかりじゃないだろう、という読者の想像にも一定の手当てはなされています。
これらの問いを通して、数多の登場人物を絡み合わせていきます。

重要な舞台、というよりはキーとなる場所として、ナミヤ雑貨店と児童養護施設「丸光園」の2つが挙げられます。
これらが強く結びついていきますので、これだけ重なることはない、不自然だ、という評価を下される読者もいらっしゃると思いますが、こういうストーリーの場合、不自然を承知で、幾重にも重層的に登場人物を重ね合わせていくほうが物語が面白くなるように思いますので、これでよいのだと思います。
殊に、最後にくるっと三人組の話に戻っていくあたりは、さすがベテラン作家と思えました。

ところで、ナミヤ雑貨店に忍び込む三人組、年齢設定等ちゃんと読み返して確認してはいないのですが、バブル経済の推移とかを詳しく知るような人物でしたでしょうか? なんとなくですが自分たちが生まれる前の日本の出来事をちゃんと把握しているような人物ではなかったかと思うのです。
344ページから書かれている内容ですが、作品のキーとなる部分なので、気になっています。


<蛇足>
「血の巡りの悪い頭で、一所懸命に考え抜きました」(231ページ)
とあってうれしくなりました。
東野圭吾、偉い! ちゃんと「一所懸命」ですね。当たり前なんですが、間違っている小説が多いので...


タグ:東野圭吾
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