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スケアクロウ [海外の作家 マイクル・コナリー]

スケアクロウ(上) (講談社文庫)スケアクロウ(下) (講談社文庫)スケアクロウ(下) (講談社文庫)
  • 作者: マイクル・コナリー
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2013/02/15
  • メディア: ペーパーバック

<裏表紙あらすじ>
人員整理のため二週間後に解雇されることになったLAタイムズの記者マカヴォイは、ロス南部の貧困地区で起こった「ストリッパートランク詰め殺人」で逮捕された少年が冤罪である可能性に気づく。スクープを予感し取材する彼を「農場(ファーム)」から監視するのは案山子(スケアクロウ)。コナリー史上もっとも不気味な殺人犯登場!<上巻>
有能な犯罪心理分析者レイチェルが導き出した案山子(スケアクロウ)の人物像は、女性の下肢装具に性的興奮を覚える倒錯者(アベイショフィリア)。マカヴォイは、情報強者の案山子が張り巡らした幾重もの危険な罠をどうやってかいくぐるのか? 大スクープのゆくえは? 巧妙なストーリー展開で、読む者を一瞬も飽きさせない究極の犯罪小説!<下巻>


マイクル・コナリーの作品は、以前感想を書いた「死角 オーバールック」 (講談社文庫)(感想ページへのリンクはこちら)のあと、リンカーン弁護士シリーズの「真鍮の評決 リンカーン弁護士」(上) (下) (講談社文庫)を読んでいますが、感想を書けないままです。

この「スケアクロウ」(上) (下) (講談社文庫)は、ボッシュ・シリーズでも、リンカーン弁護士シリーズでもなく、新聞記者であるジャック・マカヴォイを主人公にした作品です。
ジャック・マカヴォイは「ザ・ポエット」〈上〉 〈下〉 (扶桑社ミステリー)以来の登場です。
「ザ・ポエット」が出版されたのが1996年、「スケアクロウ」は2009年ですから、13年ぶりの登場、ということになります。
「ザ・ポエット」の内容はちっとも覚えていないのですが、そんなことは心配無用、「スケアクロウ」の世界にすっと入り込むことができました。
しかし、いきなり解雇宣告を受けるというのですから、マカヴォイもたいへんですね。
しかもネット事情にも詳しい後任の若い女性記者アンジェラの教育係までやらされる。と思っていたら、このアンジェラがなかなか食えないやつで、抜け目なくマカヴォイを出し抜き、のしていこうとするような...

ストーリーは、マカヴォイの視点と、犯人であるスケアクロウの視点で交互につづられます。
ネットを自由に動き回り種々システムを自在にあやつるスケアクロウに対して、かなりのアナログぶりを発揮するマカヴォイとの対決、というわけですが、こんなの勝負にならないよというレベルのスケアクロウの攻め込みぶりに嘆いていると、マカヴォイのところにはFBIのレイチェルが現れて対決ものの構図がしっかり整う、という流れです。

それでも、まだまだスケアクロウの方が優勢に思える、というのがこの種のお話では定番で、この作品も同じで、そこからどうやってマカヴォイたちが巻き返していくのかがポイントになります。
巻き返すきっかけというのが、スケアクロウ・サイドのミス、というのがちょっと惜しいところだと読んでいる途中は思っていたのですが、読後振り返って考えてみると、確かに安直なミスもあるものの、もともとスケアクロウの戦術がカウンターアタック型であることに鑑みると、当然の結果とも言え、むしろマカヴォイの方が幸運に恵まれているのが気になってきました...
スケアクロウの視点部分が効果的に挿入されますので、この連続殺人犯の不気味さが強調されていますので、これくらいマカヴォイ・サイドにハンデが必要だったのかもしれません。

どのシリーズでも、マイクル・コナリーの作品はジェットコースター・サスペンスで、充実の読書を保証してくれるのですが、この「スケアクロウ」も夢中で読みました。

1. 「ナイトホークス」〈上〉 〈下〉 (扶桑社ミステリー)
2. 「ブラック・アイス」 (扶桑社ミステリー)
3. 「ブラック・ハート」〈上〉 〈下〉 (扶桑社ミステリー)
4. 「ラスト・コヨーテ」〈上〉 〈下〉 (扶桑社ミステリー)
5. 「ザ・ポエット」〈上〉 〈下〉 (扶桑社ミステリー)
6. 「トランク・ミュージック」〈上〉 〈下〉 (扶桑社ミステリー)
7. 「わが心臓の痛み」〈上〉 〈下〉 (扶桑社ミステリー)
8. 「エンジェルズ・フライト」〈上〉 〈下〉 (扶桑社ミステリー)
9. 「バッドラック・ムーン」〈上〉 〈下〉 (講談社文庫)
10. 「夜より暗き闇」(上) (下) (講談社文庫)
11. 「シティ・オブ・ボーンズ」 (ハヤカワ・ミステリ文庫)
12. 「チェイシング・リリー」 (ハヤカワ・ミステリ文庫)
13. 「暗く聖なる夜」(上) (下) (講談社文庫)
14. 「天使と罪の街」(上) (下) (講談社文庫)
15. 「終決者たち」(上) (下) (講談社文庫)
16. 「リンカーン弁護士」(上) (下) (講談社文庫)
17. 「エコー・パーク」(上) (下) (講談社文庫)
18. 「死角 オーバールック」 (講談社文庫)
19. 「真鍮の評決 リンカーン弁護士」 (上) (下) (講談社文庫)
20. 「スケアクロウ」(上) (下) (講談社文庫)

ここまでの20作品、個人的にはハズレなし、でした。今のところ翻訳されている残りの以下の作品も、きっとハズレなしでしょう。

21. 「ナイン・ドラゴンズ」(上) (下) (講談社文庫)
22. 「判決破棄 リンカーン弁護士」(上) (下) (講談社文庫)
23. 「証言拒否 リンカーン弁護士」(上) (下)(講談社文庫)
24. 「転落の街」(上) (下)(講談社文庫)
25. 「ブラックボックス」(上) (下) (講談社文庫)
26. 「罪責の神々 リンカーン弁護士」(上) (下)(講談社文庫)
27. 「燃える部屋」(上) (下) (講談社文庫)



<蛇足1>
「状況を鑑みて自分で答えを見つけだせるくらいの頭はレスターにある、と踏んだ」(68ページ)
ここにも、「~を鑑みて」が。あ~、がっかり。

<蛇足2>
「一年まえ、リンカーン・タウンカーの後部座席を事務所代わりにして働いている弁護士を取り上げた記事を連載したことがある」(44ページ)
とさらっとリンカーン弁護士が取り上げられていて、にやりとしました。


原題:The Scarecrow
作者:Michael Connelly
刊行:2009年
訳者:古沢嘉通



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