SSブログ

女は帯も謎もとく [日本の作家 か行]

女は帯も謎もとく (光文社文庫)

女は帯も謎もとく (光文社文庫)

  • 作者: 小泉 喜美子
  • 出版社/メーカー: 光文社
  • 発売日: 2018/04/12
  • メディア: 文庫

<カバー裏あらすじ>
粋で艶やかな新橋芸者の“まり勇”は、ハードボイルドなどの海外ミステリーが大好き。少女時代はメイヴィス・セドリッツやハニー・ウエストのような女探偵を夢見ていた。忙しいお座敷の合間に起きるミステリアスな事件に胸を躍らせ、恋しい刑事と謎を推理。聖ルカ病院、魚市場、歌舞伎座に本願寺――なんでも一級品の揃う築地を舞台にした都会派連作ミステリー!


1982年2月にトクマ・ノベルズから出た作品の文庫化です。
このところ小泉喜美子の作品が復権している一環でしょう。
「さらば、愛しきゲイシャよ」
「小さな白い三角の謎」
「握りしめたオレンジの謎」
「藤棚のある料理店の謎」
「流刑人の島の謎」
の5編を収録した短編集です。

しかし、このタイトル「女は帯も謎もとく」 、よくないですね。
主人公が芸者で、このタイトルだと、どうしても、そういう話、あるいはそういうシーンがあると連想させてしまいますよね。
でもそういうシーンはありません。

「殺さずにはいられない - 小泉喜美子傑作短篇集」 (中公文庫)の感想(リンクはこちら)にも書きましたが、やはり時代色を楽しんで読む必要がありますね。
「あたしはまだジーン・パンツのふだん着姿」(67ページ)----ジーンズのことですよね?
「U・S海兵隊員、鬼をもひしぐJ・G・オズボーン軍曹」(38ページ)----ひしぐ、を辞書で調べてしまいました。
そしてまた「一所懸命」(250ページ)ときちんと書かれています。これも時代なのでしょうねぇ......
語り手で探偵役でもあるまり勇が、新橋芸者であるので、そのあたりの職業話が繰り広げられる点、そして日本の古典芸能の話が出てくる点、今読んでもおもしろいと思います。

あらすじに出てくるメイヴィス・セドリッツやハニー・ウエスト、(当然)本文「小さな白い三角の謎」でも出て来ます。
「その頃のあたしの夢は、非常に魅力的な、非常に腕のいい(非常に頭のいい、とは言わないわ)女探偵になることだったのよ。たとえば、いささかおつむの弱い、でもかわいいメイヴィス・セドリッツ、少し色っぽすぎるきらいのあるハニー・ウエスト、鉄火と呼ぶには恐ろしいイモジェーヌ、小粋なモデスティ・ブレーズ」(73ページ) 
いずれの登場する作品も読んだことがない気がします。どれもこれも、今は手に入らないですね。
メイヴス・セドリックの出てくる、
カーター・ブラウンの「乾杯、女探偵!」 (ハヤカワ・ミステリ文庫) や
シャルル・エクスブライヤの「イモジェーヌに不可能なし」 (Hayakawa pocket mystery books)
あたりは読んでみたい気がしますが......

「さらば、愛しきゲイシャよ」は、ユーモア・ミステリーと銘打たれていますが、ミステリではないですね。
こちらの品性が下劣なので、クライマックスのシーンで、地下の病室から見えたものについてかなりおかしな想像をしてしまいましたが、まさかね......

それ以降の作品は、全般的に軽い謎解きになっていまして、読み心地は悪くないですね。
捻りが抑え気味なのがちょっと残念ではありますが。
こちらが妄想した「さらば、愛しきゲイシャよ」を除くと(この妄想のおかげで強く印象に残っています)、探偵役である(?)まり勇が、ひとりで妄想を膨らませてしまう「藤棚のある料理店の謎」をおもしろく感じましたね。


<蛇足1>
「おまえのその石の顔と体温計を拝ませられら」(34ページ)
というセリフがあり、石の顔には「ストーンフエース」とルビが振ってあります。
無表情くらいの意味ですが、この本が出版された当時、石の顔、あるいはストーンフェースといってピンと来たのでしょうか? 不思議です。

<蛇足2>
藤の花の柄の着物に対して、風流を解さない(?)人が、蛸の足かと思ったというシーンがあって(202ページ)、笑ってしまいました。蛸の足柄の着物、見てみたい気もします。

<蛇足3>
アラン・ドロンと並びたつ(?)俳優として、ディドロ・ジェレミーというのが「流刑人の島の謎」に出てくるのですが、これは架空の俳優のようですね。




タグ:小泉喜美子
nice!(13)  コメント(0) 
共通テーマ:

nice! 13

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。