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海馬が耳から駆けてゆく 3 [その他 菅野彰]

海馬が耳から駆けてゆく〈3〉 (ウィングス文庫)

海馬が耳から駆けてゆく〈3〉 (ウィングス文庫)

  • 作者: 菅野 彰
  • 出版社/メーカー: 新書館
  • 発売日: 2004/07/10
  • メディア: 文庫

<カバー裏あらすじ>
「交際許可届け」を知っていますか?
菅野 彰のペンネームの由来は……?

「あなたが胸だと思っているこれ……、これは」
------------「本当は天使なの」。

菅野 彰の秘密がいっぱい……?
そしてやってきた1999年、運命の年……。
でも、恐怖の大王はやって来ませんでした……。

笑いと笑いに満ち溢れる菅野 彰の愛すべき日常!!


「海馬が耳から駆けてゆく」 (2) (ウィングス文庫)の感想(リンクはこちら)で、この3巻をロンドンに持ってきそびれたような趣旨のことを書いたのですが、ありました! 荷物の中にありました!
見つけてどれだけ喜んだか、書き表せないくらいうれしかったですね。

ご家族も友人も相変わらず絶好調です。
菅野さんの周りってどうしてこんなに面白い人ばかりなんでしょうか......
目次を見ても、その通り「家族を売る話」とダイレクトな回もあり、期待が高まりますよね。

今始めないと時間が(締め切りまでに)足りなくなるよ、と教えてくれる小人がいたら......と妄想しつつも、もしそんな小人がいたら
『「……うるさいなあ、わかってるって今やるよ!」
  クシャッ、と。
  掌で潰してしまうだろう。』(49ページ)
と言ってしまう菅野さんも、相当イケてます。

お母さんも調子をキープされていて重畳です。
「そういえばうちの母は、家にいる文筆業の人がどういう生き物なのかよく知っている。あるとき、私の同業者の友人が母のつてで見合いをするかもしれんということになった。
『好物件だよ。二十六歳、某有名私大卒、いいお嬢さんで、かわいいし』
 母も知っている彼女の経歴を、私は言えと言われたので挙げ連ねた。
『そうね、いい物件ね』
 大学の先生の妻を探してくれと言われている母は、目を輝かせて言った。
『でもその……漫画家っていうところだけ、伏せておくわけにはいかないかしら?』
 いやお母さんそこが一番肝心なポイント」(106ページ)
あっ、これはお母さんの問題じゃないか......

弟さんも素晴らしいままです。
『弟は子どものころ、
「おじさんになると、どうしてみんなオヤジギャグを言うようになってしまうのだろうか……」
などと馬鹿なことを真剣に悩んでいたl
「だって今はこんなに言いたくないのに、きっとあの人たちだって子どものころは言いたくなかったハズだ。でもいつからか言うようになるなんて何かの呪いのようだ……」』(257ページ)
うん、これは正しい悩みですね。
考えたことなかったけど、おっしゃる通り、謎です。

スペイン旅行の話もいいですね。
すごく共感したのは
「ヨーロッパの男はレディー・ファーストの呪いにかかっている」(172ページ)
という部分。
日本では、レディー・ファーストが徹底されているヨーロッパなどのことに触れて、女性が大事にされている、とか、ヨーロッパの男性の意識が高い、とか言われることが多いですが、実際にこちらで接してみると、レディー・ファーストと女性を大切に思うこととは違うのではと思ってしまいます。
あれは単にそういう「しつけ」を小さい頃から受けている結果の習慣の賜物というだけな気がします。言ってみれば、犬に「お手」というと前足を挙げるようなもの......

そうそう菅野さんたちがフランス語が母国の青年と英語がなかなか通じなかった際、イギリス人のおじいに
「言語が一つしかないのか日本には!?」(173ページ)
と言われた、というエピソードが紹介されていますが、このイギリス人のおじいは特殊なイギリス人なのではないかと思います。
おしなべてイギリス人は外国語を話せません。
まあ、英語がしゃべれれば十分で、その特権的な地位に胡坐をかいています。というか、そういう認識もなく、ただただ英語だけを話します。
そして同時にこの地球上に英語を話せないという人類が存在するということを認識していない気がします。まあ、これは言い過ぎでしょうが、それでも人類たるもの基本的には英語を話せると心の底で思っている疑いがあります。英語を話せなければ人にあらず......

スペインでは「コロニア・グエル教会」にも行かれていますね。
残念ながら中には入れなかったようですが。
この教会、個人的には二度訪れていまして、一度目は菅野さんのように外側だけから眺めました。
連載されていたタイミングからして、一度目は菅野さんがいかれたときとそれほど時期的には違わないように思います。
二度目に行ったのは今年の4月で、その時はしっかり中まで入りました。
20年ほど経ってからの再訪だったので、町の様子もかなり変わっていました。
バルセロナ周辺のガウディの設計した建築物の中ではとびぬけて辺鄙なところにあるので、比較的(比較的、です。あくまで)すいています。おもしろい形をした教会なので(外も中も)、ぜひ。
本書でも、現地の人たちがガウディを、いかれてる、とかどうかしていると評していると紹介されています(196~197ページ)が、それくらいぶっとんだ建物ですので、ぜひ。

文庫版後書きまでしっかり笑えます!
今回最後に大笑いしたのが、その後書きにある、菅野さんたちの友人・ユカリさんの旦那さんのエピソード。
ユカリさんというのが酒乱で、周りに大迷惑をかけている。それでもこの旦那さん、とってもよい人のようで、菅野さんいわく
「酒も飲まず、飲み会にもあまり顔を出さず、しかしユカリの膨大なもはや訳のわからない友人たちとも愛想よく付き合い、最後にはユカリを回収に来る。彼が怒ったところを見た人はいない……」(271ページ)
その旦那さんに対するコメントが
「多分前世でユカリを惨殺したのであろう」(271ページ)
この発想がステキです!

そうそう、あらすじに書いてある菅野さんのペンネームの由来。
(高校の)「化学室に置いてあった化学の新書の棚を見て、隣り合っている本の作家の名字と名前をくっつけた」(52ページ)
そうです。
ひょっとして、今年ノーベル賞を受賞された吉野彰さんだったりしませんかね!?

安心の爆笑印のエッセイ、「海馬が耳から駆けてゆく〈4〉」 (新書館ウィングス文庫)は日本に置いて来てしまっているので、次は「海馬が耳から駆けてゆく (5) 」(ウィングス文庫)です!
ああ、楽しみ!!


<蛇足1>
「昔鎌倉の鶴岡八幡宮で鳩をかまっていたら友人に頭から鳩のえさをかけられてた。後はもう筆舌に尽くしがたい大惨事であった。それ以来鳩は怖い」(153ページ)
これ、怖いですね。
傍から見るだけでも、笑うというよりは恐怖なのではと......

<蛇足2>
「私も従妹も付け下げを新調させられた(留袖を着る権利がないからさ……)」(249ページ)
とあって、「付け下げ」を知らなかったので、ネットで調べてしまいました。お恥ずかしい。
でも調べると奥深いというか、訪問着と付け下げ、とか、いろいろ出てきて、時間をいっぱい使ってしまいました。


タグ:菅野彰
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