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追想五断章 [日本の作家 や行]

追想五断章 (集英社文庫)

追想五断章 (集英社文庫)

  • 作者: 米澤 穂信
  • 出版社/メーカー: 集英社
  • 発売日: 2012/04/20
  • メディア: 文庫

<カバー裏あらすじ>
大学を休学し、伯父の古書店に居候する菅生(すごう)芳光は、ある女性から、死んだ父親が書いた五つの「結末のない物語」を探して欲しい、という依頼を受ける。調査を進めるうちに、故人が20年以上前の未解決事件「アントワープの銃声」の容疑者だったことがわかり――。五つの物語に秘められた真実とは? 青春去りし後の人間の光と陰を描き出す、米澤穂信の新境地。精緻きわまる大人の本格ミステリ。


「このミステリーがすごい! 2010年版」 第4位
「本格ミステリ・ベスト10 2010」 第4位
2009年週刊文春ミステリーベスト10 第5位

上で引用したあらすじにも使われている表現ですが、本当に”精緻”に組み上げられた作品です。
読み終わったとき、ふーっ、とため息がでるほど。

父が書いた5つのリドルストーリーを探す。手元には結末となる最後の行だけがわかっている。
故人が20年以上前の未解決事件「アントワープの銃声」の容疑者だった。
ミステリとしては
1) 5つのリドルストーリーに込められた仕掛け・想い
2) 「アントワープの銃声」の真相
という二つのポイントがあると思います。

実はこの2つとも、途中で見当がついてしまいました。
1) の方は細かなところまではさすがに突き詰めて考えてはいませんが、方向性は予想通り。
2) の方は、予想はついたものの、慧眼だろう、と自慢できるようなことではなくて、ある程度ミステリを読み慣れた方なら、ひょっとしたらあらすじを読んだだけでも予想がつくことかもしれません。

でも、真相が見抜けたからといってこの作品がつまらなくなるわけではありません。
非常に精密な絵が仕上がっていくのをリアルタイムに見ていっている感じとでも言いましょうか。また、「追想五断章」 (集英社文庫)を通して描かれる絵の精巧さに、息をつめて見惚れてしまう、という感じです。
面白かったですね。

「儚い羊たちの祝宴」 (新潮文庫)感想に続いて、同じ言葉で締めたいと思います。
米澤穂信、やはりおもしろい。
買いだめ(?) してありますので、読み進めるのがとても楽しみです。


<蛇足>
「いかにも無教養なむさ苦しい男の口から李白や欧陽修の詩がすらすらと出てくるのに面食らった。なんでもこの街に所縁(ゆかり)があるというが、それにしても意外に思い憮然としていると」(115ページ)
ここに出てくる「憮然」に立ち止まりました。
「憮然」という語は、よく「腹を立てている様子」だと誤用されることで知られています。文化庁の調査でも裏付けられていますね。
本来の意味は、「失望してぼんやりするさま。失望や不満でむなしくやりきれない思いでいるさま。」と思っていましたが、そうすると引用した部分にそぐいません。
調べてみると、「意外なことにおどろくさま。」という意味もあるんですね!
勉強になりました。
ちなみに、欧陽修は欧陽脩とも書くようですね。

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