ブルックリンの少女 [海外の作家 ま行]
<カバー裏あらすじ>
人気小説家のラファエルは、婚約者のアンナと南フランスで休暇を楽しんでいた。なぜか過去をひた隠しにするアンナに彼が詰め寄ると、観念した彼女が差し出したのは衝撃的な光景の写真。そして直後にアンナは失踪。友人の元警部、マルクと共にラファエルが調査を進めると、かつて起きた不審な事件や事故が浮上する。彼女の秘められた半生とはいったい……。フランスの大ベストセラーミステリー。
ぼくが買った文庫本の帯に
「最後の最後までまったく予期していなかった
どんでん返しに読者は意表を突かれる。--フィガロ紙」
と書いてありまして、さらには「売れ行き絶好調の話題作!」とあります。
正直、読んでみた感想は、そんなに大したどんでん返しでもないなぁ、というものでした。
少なくともこう謳ってあるのを知って読むのに耐えられるほどの強烈などんでん返しではありません。
むしろスピーディーに展開する筋立ての巧みさに焦点を当てた方がいい気がします。
そう。どんでん返しの効果が薄くても、十分おもしろく、楽しめる作品です。
冒頭が衝撃的で、婚約者アンナの秘められた過去を探りつつ、行方を捜す、という話ですが、こういうパターンの話、最近読んでいないな、と思いました。
過去にあった連続少女拉致監禁事件と婚約者のつながりは?
訳者あとがきに「読み終えたとき、実際は三日間しか経過していないことに気づき、呆気にとられる」と書かれているのですが、まったくその通り。わずか三日の出来事とは到底思えません。
それは、婚約者アンナだけではなく、何人かの登場人物の過去が、連続少女拉致監禁事件(とその周辺)を通して鮮やかに浮かび上がってくるからだと思います。
それがスピーディーな筋立てに支えられて、すっと読者に差し出される。訳者が「濃密」と評するのもよくわかります。
言われているどんでん返しも、読者を驚かせるのが主目的というよりは(その点は、すでに申し上げた通り、どんでん返しがあることを前提に読んでしまうと容易に見当がついてしまうのであまり驚かせる効果は見込めません)、登場人物の過去が鮮やかに浮かび上がってくるという特徴の一つとしてとらえるべきではないかな、と感じました。
原題:La fille de Brooklyn
作者:Guillaume Musso
刊行:2016年
訳者:吉田恒雄
タグ:ギヨーム・ミュッソ
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