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トリックスターズL [日本の作家 か行]


トリックスターズL (メディアワークス文庫)

トリックスターズL (メディアワークス文庫)

  • 作者: 久住 四季
  • 出版社/メーカー: KADOKAWA
  • 発売日: 2016/01/23
  • メディア: 文庫

<カバー裏あらすじ>
不可思議な読後感にどっぷりとつかる!
名門城翠大学に着任した風変わりな青年教授。佐杏冴奈――彼の担当教科は普通ではない。西洋文化史の異端の系譜「魔学」である。そして、不本意ながら先生の助手に収まったぼく。推理小説を象った魔術師の物語、待望の第2弾が登場。
王道の「嵐の山荘」もこの二人にかかれば、一筋縄ではいかない。摩訶不思議な怪事件は現実と虚構が入り混じり、予想だにしない展開へ!
あっと驚く結末は、もう一度読み直したくなること必至。極上エンターテインメント!


2022年10月に読んだ5冊目の本です。
久住四季の「トリックスターズ」 (メディアワークス文庫)(感想ページはこちら)に続くシリーズ第2作。
今手元にある本で引用したカバー裏あらすじのところ、佐杏冴奈(さきょうしいな)が佐冴奈になってしまっていました。主要人物の名前を間違えるって、なかなか大胆なミスです(笑)。

前作に引き続き魔術師のいる世界が舞台です。
魔術師が出てくる世界というのも深まっていまして、
「魔学という学問は、よく音楽に例えて語られる。『魔学は音楽である』という言葉もあるほどで、実は両者の学問体系は非常に似通っている。」
「そして『魔術』とは、つまり音楽の『曲』に当たる。
『曲』は作曲者が作り、実際に演奏者が演奏して、初めて完成される。
『魔術』も魔学者が作り、魔術師が演術して、初めて完成される」(113ページ)
というところなど、実におもしろい。

プロローグと書いてはありませんが、プロローグにあたる事件を振り返る冒頭で、この
「トリックスターズL 」(メディアワークス文庫)がミステリを非常に意識した作品であることが示されます。
本文中でも
「推理小説とは、すなわち『フーダニット』『ホワイダニット』『ハウダニット』の三要素を醍醐味とし、それに論理的解決を用意した小説、とするのが、まあそこそこ一般的な解釈なのだそうだ」(155ページ)
と解説?されています。
扱う事件は、”嵐の山荘”で起こる密室殺人。
いいではないですか!

主人公であるぼく天乃原周が、被疑者全員を集めて推理を披露するシーンもあります。
「”嵐の山荘”で登場人物全員を集合させる理由は一つ。解決偏を始める場合だけです」(247ページ)
って、カッコいい。

ミステリとして重層的な構造になっているのも素晴らしいのですが、なにより感心したのは、前作をしっかりと踏襲しつつ、前作と対になるミステリ世界を構築していることです。
この内容を言ってしまうとすなわちネタバレになるので感想として書けないのですが、ミステリとしての構造が対になっている点は、この作品の大きな長所として声を大に!
冒頭の
「今回の事件も、やはりどうしようもないほどに魔術師たち(トリックスターズ)の物語だったのだ」(11ページ)
と書かれている通りです。

「……魔術師は魔術を使っても、満足に空も飛べません。けれど、科学が造った鉄の鳥は大勢の人間を乗せてあんなに自由に空を飛ぶことができる。魔術師であることなど、きっとその程度のことなんだとわたしは思います。」(307ページ)
ラストで登場人物の一人がいうこのセリフが、魔術師たち(トリックスターズ)の物語であることを象徴しているのでしょう。

続きも読んでいきます!

<蛇足1>
ミステリを意識した記述の中に、
「ぼくもミステリなどホームズぐらいしかまともに読んだことがない初心者だったので、彼女の解説はなかなかおもしろかったのを覚えている(ホームズはあくまで探偵小説であるとのことだったが、何が違うのかぼくにはよくわからなかった)。」(156ページ)
というのがありました。
探偵小説とミステリをどう区別するのか作中で示されていないので想像するしかないですが、ホームズを取り上げて述べているということは、「探偵」を文字通り探偵と解して「探偵が出てくる」「探偵に焦点を当てた」作品を「探偵小説」と分類しているのでしょうか?
興味深いですね。

<蛇足2>
タイトルの「トリックスターズ」とは魔術師たちのことを指しています――とさらっと前作「トリックスターズ」 (メディアワークス文庫)感想で書いたのですが、文庫本の扉のところに
「詐欺師、手品師、魔術師など『人をだます者』というニュアンスの意味を持つ語。」
ときちんと説明されていました。



トリックスターズL (メディアワークス文庫)


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