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怪物の木こり [日本の作家 か行]



<カバー裏あらすじ>
良心の呵責を覚えることなく、自分にとって邪魔な者たちを日常的に何人も殺してきたサイコパスの辣腕弁護士・二宮彰。ある日、彼が仕事を終えてマンションへ帰ってくると、突如「怪物マスク」を被った男に襲撃され、斧で頭を割られかけた。九死に一生を得た二宮は、男を捜し出して復讐することを誓う。一方そのころ、頭部を開いて脳味噌を持ち去る連続猟奇殺人が世間を賑わしていた──。第17回『このミステリーがすごい!』大賞大賞受賞作。


2022年12月に読んだ2冊目の本です。
第17回『このミステリーがすごい!』大賞受賞作。

うーーん、これはちょっと厳しい感想しか浮かびませんね。
冒頭2000年の事件として十五人の子供を殺害し庭に埋め、四人を監禁していた静岡児童連続誘拐殺人事件が描かれ、その後、「怪物マスク」を被った人物に襲われるサイコパスで連続殺人鬼の二宮の視点のストーリーと、脳を持ち去る連続猟奇殺人捜査をしている警察戸城嵐子の視点のストーリーがつづられていくのですが、いくらなんでも読者のレベルを低く見積もりすぎだと思います。

二宮視点のパートから連続猟奇殺人は二宮の仕業でないことがわかり、「怪物マスク」が連続猟奇殺人犯だろうな、というのは極めて簡単な推測。
二宮が治療を受ける際に、脳にチップが埋め込まれていたことが判明。
となると、連続猟奇殺人犯の狙いは、脳チップ。すなわち脳チップを埋め込まれた人物を殺して回っている。
しかし、脳チップを埋め込まれた人物が、そこらに多数いるはずはない。
で、想起されるのは冒頭に描かれる子供を対象とした過去の事件。とすると連続猟奇殺人の被害者は、過去監禁されていた子供たちなのだろうな、と。

とこれだけで、プロットの大半が尽くされてしまいます。
これは双方のパートを見ているからこそ、であって、たとえば二宮は連続猟奇殺人のことを詳しくは知りませんし、逆に連続猟奇殺人を捜査する警察に脳チップのことが判明するのはかなり先ですから、両者を結び付けて考えられるのは、読者の特権です。
しかし、物語は両者をなかなか結び付けないまま進んでいくので、非常にまどろっこしい。
事件が矢継ぎ早と起こっているというのに、ちっともスピーディには感じない。

ちょっと空想科学の領域に突っ込んでいったようなアイデア自体は悪くないのに(決して良いとも言えませんが)、もったいない気がしました。
読者のレベルを高く見積もってしまうと臆病になって大胆な伏線がはりにくい、一方でこの作品のように読者のレベルを低く見積もってしまうと読者が退屈を感じてしまう。
ミステリって、難しいですね。


<蛇足>
傷口をステープラーという医療用のホッチキスで留めただけで、手術もせずに済んでいる。(31ページ)
ホッチキスは、英語では Stapler (ステープラー)です。
医療用のホッチキスに、一般名詞を固有名詞化し商品化しているものがあるのでしょうか?





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