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起爆都市 県警外事課クルス機関 [日本の作家 か行]


起爆都市 県警外事課クルス機関 (宝島社文庫)

起爆都市 県警外事課クルス機関 (宝島社文庫)

  • 作者: 柏木 伸介
  • 出版社/メーカー: 宝島社
  • 発売日: 2018/06/06
  • メディア: 文庫

<カバー裏あらすじ>
違法捜査の数々で交番勤務に配置換えされていた公安警察の来栖惟臣は、警備部長の厚川から呼び出しを受ける。対立が激化している米中両国の動向を探ってほしいという。調査を始めた来栖は、一連の事件の背後に、違法ドラッグで荒稼ぎをしている横浜の半グレ組織の存在があることに気付く。一方、《マトリの疫病》と呼ばれる女性麻薬取締官もまた、組織を摘発するため内情を探っていた──。


2023年3月に読んだ3冊目の本です。

第15回 『このミステリーがすごい!』大賞の優秀賞を受賞した「県警外事課 クルス機関」 (宝島社文庫)(感想ページはこちら)に続くシリーズ第2作。
作風的に好きだったので、こちらも手を取ることに。

前作「県警外事課 クルス機関」を読んだ際にも感じたことなのですが、やはり、クルス機関=来栖惟臣個人という設定には違和感を禁じ得ません。

この「起爆都市 県警外事課クルス機関」 (宝島社文庫)にはもうひとりはみ出し者が出てきます。
麻薬取締官の鬼塚瑛里華。《マトリの疫病》と呼ばれている、と。
こちらのキャラクターも作りすぎで、かつ、ありきたり。
これ、苦笑する読者もいらっしゃると思うんですよね。

いろいろな利害関係人が交錯する複雑なプロット(なにしろ、麻薬だ暴力団だ半グレだというのに加えて、米中の諜報機関が出てきます。さらには警察内部の確執まで)なのに、来栖の勘がよすぎて少々興ざめなところはありますが、こういう傾向の作品は大好きで、楽しく読んでしまいました。
欠点は多い作品だと思うのですが、個人的には十分あり、です。
なによりスピード感あふれるサスペンスが持ち味ですよね。

個人的に気に入ったのは、矢代(やしろ)祐輝。
IT企業に勤めたもののパワハラ上司を殴って首になり、誘われた半グレ集団《ヨコハマ・カルテル》主催のパーティで居心地悪く感じていたところを鬼塚にスカウトされてマトリのS(情報提供者)となり《ヨコハマ・カルテル》に潜入している。
矢代くんが幸せになるといいな、と思って読み終わりました。
彼の今後が気になります。

ところで、冒頭
「《ひっかけ橋》──ナンパ/スカウト/キャッチの聖地」(8ページ)
というところではなんとも思わなかったのですが、その後
「鬼塚の視線は、橋上を交差する人々に向けられたままだ──無数のサラリーマン/学生風/チンピラ紛い」(8ページ)
「何らかの取引をしていないか/売人(プッシャー)はいないか、マトリ──麻薬取締官の習い性だ。」(9ページ)
「いつもと変わらぬアーミールック。緑色のフィールドジャケットM・六五/コンバットパンツ/編み上げのブーツ」(9ページ)
「後ろに、二人の男を従えていた。よく似ていたが、一人は少し瘦せ型/一人は少し肥満。」(13ページ)
と矢継ぎ早に繰り出してくる「/」の使い方が気になりました。このあとにも数えきれないほど出てきます。これ、小説の文章としてどうなのでしょうか?
前作「県警外事課 クルス機関」で同様の使い方がされていたのか未確認なのですが......


<蛇足>
「大哥大(タイコータイ)!」
 大哥大──大兄貴。劉永福(リイウ・ヨンフー)が、そう呼ぶ人物は一人だけだ。(19ページ)
劉の字のルビはリイウなのですが、この手元の文庫本のルビはイウが横倒しになっています。



タグ:柏木伸介
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