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ロートケプシェン、こっちにおいで [日本の作家 あ行]


ロートケプシェン、こっちにおいで (創元推理文庫)

ロートケプシェン、こっちにおいで (創元推理文庫)

  • 作者: 相沢 沙呼
  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2015/01/29
  • メディア: 文庫

<カバー裏あらすじ>
せっかくの冬休みなのに、酉乃初と会えずに悶々と過ごす僕を、クラスメイトの織田さんはカラオケへと誘う。当日、急に泣きながら立ち去ってしまった彼女にいったい何があったの? 学内では「赤ずきんは、狼に食べられた」と書き残して不登校となった少女を巡る謎が……。僕は酉乃に力を借りるべく『サンドリヨン』へと向かう。女子高生マジシャン・酉乃初の鮮やかな推理、第二集。


読了本落穂ひろい。なのですが、手元の記録から漏れていまして、いつ読んだのかわかりません......
相沢沙呼「ロートケプシェン、こっちにおいで」 (創元推理文庫)
鮎川哲也賞受賞作である「午前零時のサンドリヨン」 (創元推理文庫)に続くシリーズ第2作です。
タイトルのロートケプシェンというのは赤ずきんちゃんのこと(ちなみに前作のサンドリヨンはシンデレラ)。
文庫カバーのイラストにも赤ずきんが描かれています。
早い段階で出てくる単語なのですが、最初のうちは説明されず、「スペルバウンドに気をつけて」249ページで、ケーキの名前をきっかけとして説明されます。

プロローグ
アウトオブサイトじゃ伝わらない
ひとりよがりのデリュージョン
恋のおまじないのチンク・ア・チンク
スペルバウンドに気をつけて
ひびくリンキング・リング
帰り道のエピローグ

という構成になっていまして、連作短篇集に近い長編ですね。

冒頭に
一、奇術を演じる前に、現象を説明してはならない。
二、同じ奇術を二度繰り返してはならない。
三、トリックを説明してはならない。
というサーストンの三原則が掲げられています。
カッコいい。
なんですが、別に作中で使われるわけではないんですね......
前作にも掲げられていたでしょうか? 確認しなきゃ。

メインは酉乃初と僕の物語で、その部分は Blue Back と銘打たれています。
もう一つ、Red Back と銘打たれたパートが各話の冒頭に掲げられており、あたしの一人称で、トモという女子の視点で語られます。

各話はいわゆる日常の謎的な謎解きものになっています。
いずれも、謎解きの場面では酉乃初などがマジックを関係者に披露してみせることがアクセントになっています。

Blue Back と Red Back に直接的なつながりがないことから、全体を通して、トモの物語が浮かび上がる、という趣向であることが予測できます。
文芸部が発行している「十字路」という冊子が繰り返し出てくることも、そのことを裏付けてくれているようです(トモは文芸部に所属している模様)。
となると、まずなんらかの仕掛けが忍ばされているだろう、という推測が容易に立つわけで、この点の受け手にとっての成否で作品の印象は大きく変わるでしょう。
個人的には不発、というか、少々小手先のテクニックでかわそうとしている、というような印象を受けてしまいました。

すこしずつ僕が、そして酉乃初も成長していく、というのがミステリ部分を除いたメインとなっているシリーズですが、この二人の関係がどうも読んでいて落ち着かない。
青春時代特有の過剰な自意識がうまく描かれているからこそ、だとは思いますが、少々僕の感覚や行動になじめない点があることもその要因ですね。
このあたりは、読む人によって感じ方が変わってくるのでしょう。

ところで、各話のタイトルにカタカナが目につきますが、いずれもマジックの名称のようです。
作中で説明されているものもありますが、説明されていないものもあります。
チンク・ア・チンクやリンキング・リングは聞いたことがあったのですが、その他のものは知りませんでした。
アウトオブサイトやデリュージョンは普通の英語の語句として一般的に使われるので、マジックの名前と気づきませんでした。
スペルバウンドという語を知らなかったので、調べてみたら、”魔法のような力で(人)の心をとりこにする”というような意味の単語で、312ページあたりから、この単語を念頭においたかのようなくだりがあることに符合します。
でも、それだと全体としてちぐはぐだなと思って、もう少し調べてみたら、すべてマジックの名前と判明。
不親切といえば不親切なのでしょうが、こういう趣向は楽しいですよね。



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