SSブログ

キョウカンカク 美しき夜に [日本の作家 あ行]


キョウカンカク 美しき夜に (講談社文庫)

キョウカンカク 美しき夜に (講談社文庫)

  • 作者: 天祢 涼
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2013/07/12
  • メディア: 文庫

<カバー裏あらすじ>
死体を燃やす殺人鬼・フレイムに妹を殺された天弥山紫郎(あまやさんしろう)は、音が見える探偵・音宮美夜(おとみやみや)と捜査に乗り出す。美夜は殺意の声を見てフレイムを特定するも、動機がわからない。一方、山紫郎は別の人物を疑い……。ホワイダニット(動機のミステリ)の新たな金字塔が登場! 第43回メフィスト賞受賞作を全面改稿。


読了本落穂ひろい。
天祢涼のデビュー作「キョウカンカク 美しき夜に」 (講談社文庫)
メフィスト賞受賞作です。

タイトルのキョウカンカクは、共感覚。
「文字に色が見えたり、音に匂いを感じたりする、特殊な知覚現象のこと。普通の人が刺激を受けると反応する感覚に付随して、別の感覚も反応するの。」(22ページ)
と音宮美夜が天弥山紫郎に説明しています。
共感覚と言われた山紫郎が、
「『きょウカンかク?』
初めて聞く単語に戸惑い、異国語のようにしか発音できない。」
というシーンはとても優れた表現方法だと思いました。

さておき、共感覚で人の感情を色で知覚できる音宮美夜が殺人鬼・フレイムを突き止めていくのですが、物語中盤(159ページ)で
「フレイムは、たった今、見つけました。」
と相手に言い放ってしまう展開にはびっくり。
ということは、証拠固めというか、犯人をどう追いつめていくかという興味に移るんだろうな、と思って読むと、そこから展開は捩れていきます。おもしろい。

引用したあらすじではホワイダニット(動機のミステリ)に焦点が当てられており、そこは確かに本書の大きな特色です。「キョウカンカク」ならではのものですから。
そして、ネタバレを覚悟で書くと、「キョウカンカク」が共感覚ではなくカタカナで書かれている所以が明らかになるシーン(366ページ)から始まる、音宮美夜と主人公山紫郎の対峙は、なかなかに感動的なシーンだと思いました。

ところで主人公天弥山紫郎は ”あまやさんしろう” で、同じ漢字ながら作者天弥涼は ”あまねりょう” なんですね。


<蛇足1>
「ここで拒否しては、一部のマスコミがパパラッチと化し、執拗につき纏ってくるかもしれない。」(14ページ)
パパラッチというのはセレブを追いかけまわすカメラマンを指しますので、この場合にはふさわしくないかな、と思ったのですが、悪名高い連続(無差別)殺人事件の被害者遺族というのはある意味有名人であり、無神経なマスコミを指すのにぴったりの表現かもしれませんね。

<蛇足2>
「X県の慣習では、通夜、告別式が終わってから、死者を荼毘に付す。しかし花恋の遺体はあまりに悲惨な状態だったので、数日にわたる警察の検査、解剖の末、既に荼毘に付されていた。」「遺骨が入った骨壺を見つめていると」(15ページ)
日常的に使う語ではないのですが、ここを読んで「荼毘に付す」というのは一般的に火葬することを指す語ですが、どこまでを言うのだろう、と思いました。具体的には埋葬まで言うのかどうかを考えてしまいました。

<蛇足3>
「わたしが一番好きなミステリはアガサ・クリスティーの『邪悪の家』だから。」
音宮美夜のセリフです。
音宮美夜、わかってんじゃん。いいやつだな(笑)。



nice!(13)  コメント(0) 
共通テーマ:

nice! 13

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。