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ミステリと言う勿れ (8) [コミック 田村由美]


ミステリと言う勿れ (8) (フラワーコミックスアルファ)

ミステリと言う勿れ (8) (フラワーコミックスアルファ)

  • 作者: 田村 由美
  • 出版社/メーカー: 小学館
  • 発売日: 2021/03/10
  • メディア: コミック

<カバー裏あらすじ>
大学教官の天達にバイトにと誘われて山荘に行った久能整。そこで謎解き会をするはずが、思わぬ事件に巻き込まれていく…… ”解読解決青年” 整が今度は山荘ミステリ 注目展開の第7巻。


シリーズ8冊目です。
「ミステリと言う勿れ (8)」 (フラワーコミックスアルファ)

episode11 星降る舌八丁
episode12 耳寄りな話
episode13 ネガティブなポジティブ
を収録しています。

episode11は、舞台となる大鬼蓮美術館で怪しげな集団に襲われます。
襲われる整たち客も、襲う側の怪しげな集団も、みんな訳が分かっていない、というのがおもしろい。
近くの大隣美術館はルーブル展をするほどなのに対し、こちらは人が少ないのがポイントですね──おそらく、大鬼蓮美術館という名前はエンディングで整が指摘するところから作者によって名づけられたのでしょうね。
「ドラマとかでよくあるんですよこういうの
 家族やパートナーを人質に取って殺されたくなかったら何かを吐けとか 何かをしろとか
 僕それとても不思議に思うんです
 犯人たちは家族愛とか ”絆” とかそういうの ものすごく信じてるんだな…て」
という整のセリフには虚を突かれましたが、確かに!
このセリフだけではありませんが、次第次第に整の言葉にペースを乱され、整に巻き込まれていくところが見事。
事件の構図は、作中でも言われていますが実際の世に前例のあるものを踏襲しているのですが、微妙なラインをついていて面白かったですし、襲撃犯たちの身の上とマッチしているのもよかったです。

episode12 はライカさんの正体(?) を知り整がいろいろ考えるのが背景にあります。
千両屋フルーツパーラー(笑)で並んでまでしてフルーツサンドを食べる整が、周りの席の人の話をいろいろ聞く(そして口をはさむ)という流れです。
中で、わざと痴漢冤罪を起こした女が突き落とされる事件というのが語られます。
そこで整は
「冤罪事件が起きたとき最も迷惑を被って最も傷つけられるのは
 日常で痴漢にあってる女性たちだと思うからです」
というのですが、これには到底賛成できません。
「最近”痴漢”というと”冤罪”という声がまず出るようになりました
 男性の方が声が大きいてこともありますけど 冤罪の可能性ばかりが論じられてる
 まるで痴漢事件の一番の問題は 冤罪が起きることかのようです
 でもそうじゃない 一番の問題は 痴漢の被害者がいるってことです」
と続けられているのですが、これでも納得はできないですね。
痴漢の問題は日本の恥ですし、決して軽んじてはいけない問題ですが、こと冤罪であれば冤罪を負わされた人こそが最大の被害者であることは論を俟たないし、ひどい論点のすり替えのように思います。
まあ、この物語の場合は整のセリフが周りの人物たちの行動に影響をあたえるという枠組みですし、この整の人物設定からして、こういう議論を呼ぶ意見を述べることは想定内なので、だから駄目だということにはならないのですが、自分にすっと入ってくるような意見であっても、この作品は気をつけて読まなければならないなと思いました。

episode13では、狩集汐路が再登場し、整にお仕事を持ち込みます。
しょっちゅう入れ替わっている双子を見分けてほしい、と。周りも見分けがつかない、と。
このお話、「ミステリと言う勿れ (10)」 (フラワーコミックスアルファ)に続くので感想は持ち越します。

<蛇足1>
episode12 で、ドイツでは皿を洗う時に洗った後水で流さずにそのまま泡ついたまま拭く、という話が出てきます。もっぱら節水の視点で語られているのですが、これはドイツに限らずフランスもそうですね。
ただ節水のため、というよりはむしろ水の性質によるものだと聞いたことがあります。
あちらは硬水で、洗剤の成分によりそれを中和させている、と。だからせっかく中和したあと硬水で流してしまうとまた硬水の成分が付着してしまい、ある意味かえって汚れるので、あえてそのまま拭いているのだ、と。
軟水の日本とはいろいろと違うのですね。
滞在したことのあるイギリスも水は硬水で、食洗機(ディッシュウォッシャー)には水を中和するために ”塩” を入れるようになっています。塩を入れておかないと、乾燥したときにお皿に白い固形分がついてしまいます。水に石灰成分が含まれるからです。湯沸かしポットなども中の金属に白い石灰がどうしても付着していってしまうので、定期的に Scale Away といった専用の粉をつかって石灰除去をします──これがウォシュレットがイギリスで普及しない一因でもあります。

<蛇足2>
episode13で、しりとりのシーンがあり、ライオンと言ってしまったあとに、整が「ンジンガ女王」(ポルトガルと戦ったアンゴラの女王)とか「ンゴロンゴロ自然保護区」(@タンザニア)と答えるところがあるのですが、しりとりで固有名詞はいんちきではないでしょうか?


タグ:田村由美
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