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ロンリーハート・4122 [海外の作家 は行]


ロンリーハート・4122 (論創海外ミステリ 262)

ロンリーハート・4122 (論創海外ミステリ 262)

  • 出版社/メーカー: 論創社
  • 発売日: 2021/02/10
  • メディア: 単行本


<amazon の紹介文から>
結婚願望を持つ中年女性のルーシー・ティータイムは、イギリスの田舎町フラックス・バラにある結婚相談所で「ロンリーハート(交際を希望する中年男性)4122号」と知り合い、甘美な未来と薔薇色のロマンスを夢見る。しかし、過去に彼と関わった女性は二人とも行方不明になっていた……。英国推理作家協会賞ゴールド・ダガー賞の最終候補に挙げられた秀作、待望の邦訳!


2024年1月に読んだ7冊目の本です。
コリン・ホワイトの「ロンリーハート・4122」 (論創海外ミステリ)
単行本で、論創海外ミステリ262です。
英国推理作家協会賞ゴールド・ダガー賞の候補作だったのですね。

コリン・ホワイトといえば、
「愚者たちの棺」 (創元推理文庫)(感想ページはこちら
「浴室には誰もいない」 (創元推理文庫)
の2作が創元推理文庫から訳されていましたが、その後翻訳は途絶えていました。
「愚者たちの棺」だけ感想を書いていますが両作ともに読んでいます。いずれも小粒ではありますが、田舎町を舞台とした手堅いミステリで楽しめました。
<2024.2.26訂正 「愚者たちの棺」は読んだつもりでいたのですが、未だ読んでいませんでした。>
論創海外ミステリから翻訳が出ていることを認識しておらず、というか新刊案内とかで見てもスルーしてしまっていて、作者がコリン・ホワイトであることに気づいて慌てて購入。

この「ロンリーハート・4122」は、舞台は同じ町フラックス・バラ(創元推理文庫ではフラックスボロー)で、同じくパーブライト警部が捜査の中心になります。
同時にティータイムという女性(昔ながらの翻訳ミステリ流でいうと、ティータイム嬢と呼びたくなるような風情の女性です)の視点で、キーとなる結婚相談所(?) を利用する様子が描かれます。

この結婚相談所のシステムが良くできていまして(少なくともぼくはそう思いました)、当時イギリスにはこういうのがあちこちにあったのだろうか、なんて考えてしまいました。

パーブライト警部たちの捜査が非常にゆっくりと進んでいく一方で、ティータイムの話がどんどん進んでいくので、妙に居心地の悪いサスペンスが強く感じられます。
いよいよ、という感じのクライマックスが、急転直下というような解決を迎えさせてくれるのですが、さらっと(ぐだぐだと説明せずに)真相を投げ出してくるあたり、好みにも合い、とてもおもしろかったです。


<蛇足1>
「部屋はまるでイギリスの家庭喜劇の舞台装置のようだった。」(52ページ)
家庭喜劇。??と思いましたが、日本でいうところのホームコメディのことですね。確かに家庭喜劇。
ホームコメディは和製英語なので、原語はなんだったのでしょうね?  
Sit Come や Soap Drama (Opera) だとイギリスらしくないし、Domestic Comedy とはあまり言わない気が。

<蛇足2>
「お客さまとしていらしたのではないんですよね」
パーブライトは微笑み返した。「実は違います」
「そうだと思いました。結婚なさっているようには見えないので。それって一番確かなサインなんですよ。あなたには奥さまがいらして、奥さまにとっても満足していらっしゃるという」(53ページ)
パーブライト警部が結婚相談所を初めて訪れるシーンですが、意味が分かりませんでした。
結婚なさっていないよう、ならばわかるのですが。

<蛇足3>
「そこのスキャンピ(大型海老を油かバターとニンニクで炒めた料理)が絶品なんです」(126ページ)
想像で言って恐縮ながら、ここの scampi は料理名ではなく、素材名(手長海老。アカザエビ)のことを指すのではなかろうかと思います。
注として書かれている料理は、一般には、Shrimp Scampi と呼ばれているものと思われ、scampi 単体だと料理名ではないのでは、と思う次第です。

<蛇足4>
「このまま上って、公有地を横切ってくれ」(217ページ)
ここの公有地、おそらく原語は Commons ではないかと思います。
字面から訳せば公有地(あるは共有地)で間違いないのですが、一般的な感覚からして、公園とか空き地とかの方がしっくりくる語だと思います。

<蛇足5>
井伊順彦の解説で、フラックス・バラという表記について触れられています。創元推理文庫ではフラックスボローだったのと比べて、ということですね。
発音的にはフラックス・バラに軍配があがりますね。ただ解説で指摘されているように、「・」のないフラックスバラが一番しっくりくるように思います。



原題:Lonelyheart 4122
著者:Colin Watson
刊行:1967年
訳者:岩崎たまゑ








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