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善意の代償 [海外の作家 か行]


善意の代償 (論創海外ミステリ 294)

善意の代償 (論創海外ミステリ 294)

  • 出版社/メーカー: 論創社
  • 発売日: 2023/01/20
  • メディア: 単行本

<帯から>
ロンドン警視庁女性捜査部に属する才色兼備のキティー・パルグレーヴ巡査、独身時代の事件簿!
下宿屋〈ストレトフィールド・ロッジ〉を見舞う悲劇。完全犯罪の誤算とは……。越権捜査に踏み切ったキティー巡査は難局を切り抜けられるか?


2024年1月に読んだ8冊目の本です。
ベルトン・コッブの「善意の代償」 (論創海外ミステリ)
単行本で、論創海外ミステリ294です。

コッブの作品を読むのは初めてです。

この作品ではまず、主人公格で視点人物であるキティー巡査の行動にびっくり。
担当でもないのに潜入捜査をやろうというのですから。
恋人(婚約者?)も警官で、本来はその上司のバーマン警部とともに、そちらが担当。
ある男の命が狙われているとの情報をバーマン警部が無視しようとしたため、休暇を取って下宿屋に女中に扮して潜入しようと。もちろん、恋人にもバーマン警部にも内緒。
女性捜査部員、大胆すぎます。

続いてびっくりするのが、その潜入対象である下宿屋。
邦題の善意というのはここから来ていると思われるのですが、サッカーくじで二万ポンド当たった老婦人ミセス・マンローが、身寄りのない困っている男性専用の下宿屋を営む。
篤志家というのかもしれませんが、こういう人、実際にいたのでしょうか?
この家主のキャラクターが強烈です──いや、いい人なんですよ、きっと。とてもとても押しつけがましいだけで。でも、読んでいるだけでげんなりできました。

この作品はこの下宿屋の個性豊から登場人物たちの人間関係を背景に繰り広げられます。
この設定の下宿屋で、そんなにミステリとして都合のよい人物たちが集まるだろうか、という疑問を抱かないではないですが、類は友を呼ぶともいいますし、芋づる式ということもあるでしょうから、そんなに変なことではないかもしれません。
限られた人数で、がんばってどんでん返しを何度か繰り返す趣向が取られていて満足。
奇矯な登場人物も本として読むだけなら、害はないですからね。
最後に、キティー巡査からもうろくしたと思われていたバーマン警部がしっかり締めるところもよかった。

ベルトン・コッブ、いいかも。
ほかに論創海外ミステリから出ている作品も買うことにします。


<蛇足1>
「建物はビクトリア朝の二戸建て住宅だ。」(19ページ)
ここを読んで、そうか、二戸建て住宅と呼べばよかったんだ、とちょっと感動しました。
semi-detached (セミ・デタッチト)と呼んで、少し横長で一棟だけれど2軒分の住まいになっている家(同じ形の家が二軒くっついて建っている。二軒は壁でくっついている)がイギリスには多くあります。確かに、二戸建てだ!

<蛇足2>
「ミスター・ケントが水曜日に来ていたスーツだわ」(209ページ)
着ていた、ですね。

<蛇足3>
「この館のアンテナではイギリス放送協会(BBC)しか入りません。」(217ページ)
この当時ケーブルTVや衛星はなかったでしょうから、いわゆる地上波放送しかない頃、BBCしか入らないアンテナということは、放送局ごとにアンテナを設置しなければならなかったのでしょうか。
かなり不便な仕組みですね。


原題:Murder : Men Only
著者:Belton Cobb
刊行:1962年
訳者:菱山美穂




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