愚者たちの棺 [海外の作家 わ行]
<裏表紙あらすじ>
港町フラックスボローの顔役だったキャロブリート氏のつましい葬儀から七ヶ月後。今度は参列者のひとり、新聞社社主のグウィルが感電死する。真冬に送電鉄塔の下で発見された遺体には不可解な点がいくつもあり、現場近くでは“幽霊”の目撃証言まで飛び出す始末。相次ぐ町の名士の死には関連があるのか。奇妙な謎と伏線の妙…英国本格ミステリの粋が凝縮された巧手の第一長編。
この「愚者たちの棺」 (創元推理文庫)が今年
帯に
「奇妙な謎、伏線の妙と意表をつく結末」
と、まるで本格ミステリに期待する三要素、みたいなことが書いてあって、原書の発表年が1958年ですから、名作発掘という感じ?
奇妙な謎、というのは死体の様子ですね。
創元推理文庫名物(?)、表紙扉のあらすじだと「真冬に送電用鉄塔の下で発見された遺体はスリッパ履きで、マシュマロを口に入れたままという不可解な状態だった」とされています。
うん、いい感じですね。
ミステリとしては、伏線の妙、というほどのこともないかな、と感じましたが、要所要所にちりばめてあって、いい感じ。また、意表をつく結末、はそれなりの効果を挙げているのではなかろうかと。定番といえば、定番のトリックなのですが、うまく使っているな、と思えます。
と、田舎町を舞台とした手堅いミステリに仕上がっていますが、全体として、探偵役のパーブライト警部が地味ながら、よさげな感じで、ユーモアもそこはかとなく漂うのがポイントかな、と思いました。
同時に、作者の意地悪な視点が味わえるのも特色かと思います。(蛇足、ですが、原題「Coffin Scarcely Used」も皮肉が効いていると思います)
この意地悪さが、シリーズを通してどう展開していくのか、注目していきたいです。
原題:Coffin Scarcely Used
著者:Colin Watson
刊行:1958年
訳者:直良和美
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