ゴースト≠ノイズ(リダクション) [日本の作家 た行]
<カバー裏あらすじ>
高校入学七ヶ月目のある日。些細な失敗のためクラスメイトから疎外され、“幽霊”と呼ばれているぼくは、席替えで初めて存在を意識した同級生にいきなり話しかけられた。「まだ、お礼を言ってもらってない気がする」──やがてぼくらは誰もいない図書室で、言葉を交わすようになる。一方、校舎の周辺では小動物の死骸が続けて発見され……。心を深く揺さぶる青春ミステリの傑作。
2024年1月に読んだ11冊目の本です。
十市社の「ゴースト≠ノイズ(リダクション)」 (創元推理文庫)
意図したわけではありませんが、似鳥鶏「名探偵誕生」(実業之日本社文庫)に続いて、思春期(?) の若者を扱った作品を読むことになりました。
作者も作品の狙いも違うので当たり前ですが、テイストがまったく違います。
こちらのはかなり屈折した若者です。
クラスから疎外されているぼく一居士架(いちこじかける)。
クラスでの孤立ぶりが、淡々とつづられています。いわゆる ”いじめ” のの被害にあっている、という状況ですが、基本的には徹底的に無視されるという方向の ”いじめ”。
家では、両親の夫婦仲がよくなく、かつ自分もよく思われていない状況。
居場所がなさそうで、読んでいて少々いたたまれない。
そんなぼくの日常に忍び込んできたクラスメイトの玖波高町(くばたかまち)。
ボーイズミーツガールの典型のような展開ですが、次第に高町の抱える事情が明らかになっていくのが大きなポイント。
ぼくの語り口が、屈折しているというか屈託ありまくりで、癖のあるもの──とはいえ、決して読みにくくはありません。個人的にはすいすい読めました。
その意味ではかなり読者を選ぶ小説のような気もしますが、選ばれました。よかった。
こういう小説好きです。
謎解きミステリというかたちにはなっていませんし、特に意外性を求める書き方がされているわけではありませんが、物語の構図が非常に印象的に仕上がっています。
ミステリとしてみたとしたらアンフェアぎりぎり、というところもありますが(個人的にはぎりぎりセーフだと思います)危ういバランスで成り立っているのも、この構図の魅力だと思います。
架と高町、それぞれが抱えた事情とどう折り合っていくのか、あるいは折り合わずに決裂させていくのか、ハラハラしながらラストを迎えました。
かなり寡作な作家のようですが、もっと読んでみたくなりますね。
タグ:十市社
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