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窓から見える最初のもの [日本の作家 ま行]


窓から見える最初のもの

窓から見える最初のもの

  • 作者: 村木 美涼
  • 出版社/メーカー: 早川書房
  • 発売日: 2017/11/21
  • メディア: 単行本


<表紙袖あらすじ>
心療内科に通う短大生の相沢ふたばは、治療所で大学生の湯本守に出逢う。守をもっと知りたいと思うふたば。が、彼は姿を消した。看護師に守の行方を訊くが、「そんな名前の患者は知らない」との答えが――
壁紙販売会社の社長・藤倉一博は、数年来探し求めていた幻の油絵、“六本の腕のある女”をようやく見つけ出す。だが、まもなくそれが贋作ではとの可能性が浮上し――
不動産業の連城美和子は、喫茶店を始める長谷部悠のため、最良の物件を紹介した。だが、かつて喫茶店の店主をしていた悠の父が、三十年も隠していた哀しい出来事を知り――
免許の更新に行った御通川進は、警察から「御通川進に行方不明人捜索願が出されている」と知らされる。誰が、何のために自分の名を騙って家出をしたというのか?――
ひとつの街で、四つの物語が静かにひそやかに重なり合ってゆき――その先に見えるものとは……
鮮やかな色彩の新・日常系ミステリ。
第7回アガサ・クリスティー賞大賞受賞作。


単行本です。
残念ながら、あまり高打率とは言えないアガサ・クリスティー賞の第7回大賞受賞作。
感想を結論から先に言うと、おもしろくは読んだけど、ミステリとしてはどうかなぁ、というところ。

あらすじにもありますが、4つの物語がつづられます。
ミステリでは通常、こういう構成をとる場合、4つの物語は当然相互に結びつきます。そしてその結びつき方がミステリとしての驚きをもたらしてくれます。
こここそが作者の腕の見せどころ、というわけで、さまざまな工夫を凝らしていくわけですが、この「窓から見える最初のもの」にはなんのサプライズもありません。
あまりにもなだらかに物語が進んでいくので、ここがポイントなのだという手ごたえがありません。

では、つまらなかったのか、と聞かれると、これがとても面白かったんですよね......ただ、その面白さがミステリのものではなかった、ということです。
帯に「新・日常系ミステリ」とあるのですが、これはさきほど申し上げた点から賛成できません。
注目すべきは、「優しく紡がれる四者四様の物語」というところです。
なにより、優しい、のです。作者の登場人物に対する視線は、冷静な感じで甘やかすようなタイプの優しさではありませんが、作品から受ける印象は優しさです。涼やかな優しさとでも言いましょうか...
そして四者四様の物語ですが、巻末にある選評でも
「ていねいな造りと、主人公四人の書き分けに感心しました」(鴻巣友季子)
「見知らぬ四人の人生が織りなすミステリは、細部の描写にも目配りがきいていて、ぐいぐい読ませる力がある」(藤田宜永)
と書かれている通り、この四人の物語がとてもおもしろく、印象に強く残っています。
このあとのそれぞれの物語が気になってしまうほど。

アガサ・クリスティー賞にとっては、そしてミステリにとっては残念なことですが、おそらくこの作者はミステリを離れて活躍されていくのではないでしょうか...






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