アルカディアの魔女 北斗学園七不思議3 [日本の作家 篠田真由美]
<裏表紙あらすじ>
中等部三年生になるアキ、ハル、タモツは、寮の引っ越しに大忙し。そんな中、森で妖精の宴を目撃したという生徒が現われ、その一方で奇妙な暗号文が発見される。これらは果たして学園の七不思議と関係があるのか。しかし調査にかかる前に、突然タモツが学校を辞めると言いだして……。森に隠された学園創立期に遡る意外な秘密とは。そして三人を襲う最大のピンチ。謎が加速する大人気学園ミステリー第三弾。
「王国は星空の下 北斗学園七不思議1」 (PHP文芸文庫)(感想ページへのリンクはこちら)
「闇の聖杯、光の剣 北斗学園七不思議2」 (PHP文芸文庫)感想ページへのリンクはこちら。
い続く北斗学園七不思議シリーズの第3弾です。
理論社のミステリーYA!という叢書でこの「アルカディアの魔女」まで出ていたシリーズで、理論社が倒産して途絶していたのを、PHP文芸文庫で再刊なって再出発ということだったはずですが、2014年5月に「アルカディアの魔女」を復刊したあと再度途絶えています。
売り上げが優れなかったのでしょうか...
悪い点から言っておくと、毎回言っていますが、アキの語り口には違和感が拭えません。中学生の文章とは思えないジジ臭さ。そういう古臭い言葉を使うキャラクター設定にもなっていませんし、謎です。
「えーと。のっけからドタバタやかましくって失礼をば。」(22ページ)
「変に邪推するのだけは勘弁な」(191ページ)
「タイトルは刺激的だけど、中身はすごく真面目でいい本だから、そこんとこよろしくな」(191ページ)
「えいコンチクショウ、タモツの馬鹿」(225ページ)
「そのままおっ死んだ(おっちんだ)とは、誰も思わないだろ」(364ページ)
このあたりも、売れ行きに影響したのではないでしょうか? なんて考えてしまいます。
冒頭、昔のエピソードでスタートするのは、第1作、第2作と同じで、かっこいいですね。
タイトルのアルカディアは、「古代ギリシャのペロポネソス半島にあった国」で「古代ローマの詩人ウェルギリウスが、『牧歌』っていう詩集を書いて、その中でアルカディアを理想化したんだ。遥か昔の黄金時代の田園として。だからアルカディアということばには、過去への郷愁や失われたものを嘆く感傷の匂いがまとわりついている」(290ページ)と説明されていまして、温室の名前として使われています。
前作「闇の聖杯、光の剣 北斗学園七不思議2」では人狼が出てきましたが、今回は魔女。
前作同様、古き良き冒険小説を、学園ものの衣を着せて差し出してもらっているようです
温室で魔女で集会ときますから、雰囲気は抜群ですね。猫が活躍するのもポイント高いかも。
ということでシリーズは快調と思われるのに(語り口を除いて)、続巻が出ていないのが残念です。
あとがきで「セイレーンの棲む家」とタイトルまで予告されているというのに...
なんとか続きを出してもらえないものでしょうか?
<蛇足>
「けどさ、それって穴--なんとかいうやつだろ?」
「アナグラム。穴は関係ない。」(120ページ)
これ、会話では成立しないやりとりですよね。文章化されている小説だからこそ、ですね。