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ダイヤモンドブラザーズ〈ケース1〉危険なチョコボール [海外の作家 アンソニー・ホロヴィッツ]

ダイヤモンドブラザーズ〈ケース1〉危険なチョコボール

ダイヤモンドブラザーズ〈ケース1〉危険なチョコボール

  • 作者: アンソニー ホロヴィッツ
  • 出版社/メーカー: 文溪堂
  • 発売日: 2008/12/01
  • メディア: 単行本

<表紙袖あらすじ>
ロンドンの下町で、私立探偵の兄、ティムとともに暮らす13歳の少年ニック。ある日、兄のもとに奇妙な仕事が舞いこむ。「包みをひとつ、あずけたい」 わたされたのは、ごくふつうのチョコボールの箱。肝心の任務は、それをあずかることだけ……。そしてニックは、その箱の秘密につき動かされてゆく!


この「ダイヤモンドブラザーズ〈ケース1〉危険なチョコボール」(文溪堂)は、子供向けではありますが、作者はアンソニー・ホロヴィッツ。amazon で検索していて見つけました。

13歳の少年が探偵役というところで大人の読者としては期待値が下がるわけですが、いやいや、それなりにおもしろかったですね。
同じ作者の「ストームブレイカー」 (集英社文庫)(ブログの感想ページへのリンクはこちら)が、子供を主人公にしていても大人顔負けというか大人の活躍を見せるのに対し、この「ダイヤモンドブラザーズ〈ケース1〉危険なチョコボール」は子供らしいところがポイントですね。
それに対して、兄である私立探偵のティムが情けなさすぎる点がちょっと... お笑い要素なんでしょうけど、もうちょっとしっかりしてほしい...

事件の方は、世界一の犯罪王「タカ」が隠した350万ポンド相当のダイヤの行方を探るカギとなるチョコボール(!) をめぐるもので、まあ次から次へとワルが登場しますので、ちょっと13歳が手がけるには危険すぎますが、そこはそれ、フィクションですから。(とはいえ、かなり危ない目にもあいます)
兄がもと警察官で、当時の上司が事件にきちんと絡んできて、おりおりポイントを押さえて締めていくという点、絵空事ではあっても一定のリアリティ確保が考えられていますしね。

原題が、THE FALCON’S MALTESER。
そうです、「マルタの鷹」 (ハヤカワ・ミステリ文庫)(原題:
The Maltese Falcon)(ブログの感想ページへのリンクはこちら)を意識したものです。
Falcon は、「タカ」と訳されている犯罪王のことですね。Malteser はチョコボールと訳されていますが、Mars社の商品名ですね。
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イギリス版の amazon から画像を拝借しました。どこでも買えますよ。

ダイヤの行方を探るカギがチョコボールってどういうこと? と思い興味深いものになっているのですが、真相はギリギリアウトのような気がします。
これじゃあ、ダイヤを隠す手段としてあまりにも守りが脆弱ですから。
ただ、ストーリーのところどころに、おやっと思わせる推理だったり、手がかりだったり、伏線だったりが忍ばせてあって、ミステリファンでもしっかり楽しめると思います。

ストーリーのクライマックスシーンが、タイプは違うのですが「マルタの鷹」 を思わせてくれてすこしニヤリ。
エピローグにあたるところで、またニヤリ。
いいではないですか、こういうの。

ウェルメイドな作品だと思いました!

<蛇足>
「ここイギリスのイートン校で大学教育を受けている」(83ページ)
とあります。イートン校には、「英国の全寮制パブリックスクール。英国一の名門校。」と注が付けられていますが、イートン校は、Eton College でcollege とつきますが、大学ではありませんね。注のとおり、パブリックスクールですから。


マークス&スペンサーに(イギリスの有名デパート)という説明がついているのですが(14ページ)、マークス&スペンサーは、デパートというよりは大型スーパーというほうがふさわしいですけどねぇ。



原題:THE FALCON’S MALTESER
作者:Anthony Horowitz
刊行:1995年
訳者:金原瑞人



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