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悪女イヴ [海外の作家 た行]


悪女イヴ【新版】 (創元推理文庫)

悪女イヴ【新版】 (創元推理文庫)

  • 作者: ジェイムズ・ハドリー・チェイス
  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2018/06/21
  • メディア: 文庫


<裏表紙あらすじ>
親しくしていた孤独な作家から死に際に戯曲原稿を託されたクライヴは、それを自作として発表し、一躍有名作家となった。知的で美しい恋人も得て順風満帆だった彼だが、しだいに名声と実力のギャップに苦しむようになる。そんなときに現われた娼婦イヴ。魔性の女の虜となった男が迎える悪夢のような末路をノワール小説界の雄、チェイスが鬼気迫る筆致で描いた傑作。


年末・年始の休みから戻って最初に読んだ本です。
非常に高名な作品ですが、初読です。
この作品、大昔1962年にジャンヌ・モロー主演?で「エヴァの匂い」として映画化されており、そのリメイクが2018年に「エヴァ」として公開されたのにあわせて新版が出たようですね。

長らく絶版となっていました。旧版の画像はこちら↓。
表記が「イブ」から「イヴ」に変わったんですね。

悪女イブ (創元推理文庫 133-3)

悪女イブ (創元推理文庫)

  • 作者: ハドリー・チェイス
  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 1963/01/10
  • メディア: 文庫


読んでみると、非常にクラシカルな感じがし、登場人物のふるまいや言葉遣いにも時代を感じさせるものがありますが(なにしろ原書刊行は1945年で、文庫の初版は1963年です)、あまり古びた感じはしませんでした。
日本へ行った影響の時差ボケのせいで読み進めるに時間がかかりましたが、後半は眠気も忘れて読むことができたのは、作者の力だと思います。
引用したあらすじには「鬼気迫る筆致」とありますが、主人公である作家クライヴの一人称でつづられており、非常にスムーズに読めるように書かれていると思います。
特に、後半の自分には才能がないと苦悩を述べる場面は、いいなぁと思いました。

個人的に読んでよくわからなかったのは、実は、キーとなるイヴの魅力です。
うーん、こういう女性、魅力的なんでしょうか...
もともといる恋人のキャロルの方が、よほどいいように思ったのですが...こういう女性の魅力がわからないのは、こちらの感性がお子ちゃまということなのかも。
もっとも一般人では惹かれないような女性に堕ちないと、物語にはならないのかもしれませんね。
だからこその「悪女イヴ」なのかもしれません。

しかし、この「悪女イヴ」というタイトル、どうなんでしょうね?
このイヴ、娼婦であって、数多くの男性を虜にし、確かに主人公を手玉に取るのですが、むしろクライヴが一人で勝手にのめり込み、勝手に自滅しているように思えて、「悪女」と呼ばれるような感じもしません。
原題は Eve。「悪女」はついていませんしね。

一番驚いたのはラスト。カタストロフが訪れたあとのエピローグといってもいい部分なのですが、こういう落ち着き方をするとは正直びっくり。

世界的な作家にこんなことを言うと阿呆かと思われるでしょうが、ハドリー・チェイスという作家、おもしろそうです。ほかの作品も復刊されないかな?? いつもの読書傾向とは少しずれるんですが...そんなことを考えました。


原題:Eve
作者:James Hadley Chase
刊行:1945年
訳者:小西宏





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