奥只見温泉郷殺人事件 [日本の作家 な行]
<裏表紙あらすじ>
新潟県・奥只見温泉郷の大湯ホテルは、スキーと温泉を楽しむ客で賑っていた。そこに、運命の赤い糸にみちびかれたような邂逅があった。出版社に勤める牛久保夫婦と千明多美子、画家の沼田秀堂と彼の愛人の夫・佐倉恒之助、鯰江彦夫と柏原一江という人たちの出会いであった。そして、事件が起きた。スキーバスが川に転落し、5人の死者が出たが、多美子は絞殺されていたのだ。長篇本格推理。
古い本です。
奥付を見ると、1991年6月15日! 28年前の本です。amazonにもリンクする画像がないようで、↑のところも画像なし、ですね。
「奥只見温泉郷殺人事件」 (徳間文庫)は、中町信の長編8作目にあたるものです。
ずっと積読にしてあって、実家でほこりをかぶっていたのですが、年末年始の休みに日本に帰った際見つけて、(中町信を)懐かしく感じて読んでみました。
中町信の作品としては「三幕の殺意」 (創元推理文庫)(ブログの感想ページへのリンクはこちら)以来ですね。
中町信というと、叙述トリックの名手で、創元推理文庫から何作か改題復刊されていますね。
「模倣の殺意」 (創元推理文庫)←新人賞殺人事件(新人文学賞殺人事件)
「天啓の殺意」 (創元推理文庫)←散歩する死者
「空白の殺意」 (創元推理文庫)←高校野球殺人事件
「追憶の殺意」 (創元推理文庫)←自動車教習所殺人事件
さぞや古めかしいことだろうと思ったのですが、そして読んでみて確かに古めかしくないと言ったらうそになりますが、思ったよりも古さを感じませんでした。
プロローグが、ある人物の述懐で、かつ別の人物の日記をひもとくかたちになっており、おお、中町信だったらここになにか仕掛けてあるはずだぞ、注意して読んでいくわけですが、今回のは簡単というか、初心者向け?
ミステリ的に気になったのは、絵をキーとしたアリバイトリックでしょうか。
時間を推定する材料として、絵の進捗具合というのはどの程度頼りになるのだろう、と気になります。
また絵にはもう一つミステリ的な仕掛けが盛り込まれているのですが、こちらもなんだか苦しい気がしました。
とけなしてしまいましたが、叙述トリック、アリバイトリック以外にもさまざまな工夫が凝らしてあって、意外な犯人演出に腐心した作者の苦労(?) がしのばれます。
人物配置も巧緻に仕組まれていて、叙述トリックを通して浮かび上がる犯人像は印象的でした。
この作品も、改題して創元推理文庫に収録されて、広く手に入るようになればよいのに、と思いました。
タグ:中町信