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制裁 [海外の作家 ら行]


制裁 (ハヤカワ・ミステリ文庫)

制裁 (ハヤカワ・ミステリ文庫)

  • 出版社/メーカー: 早川書房
  • 発売日: 2017/02/23
  • メディア: 文庫


<カバー裏あらすじ>
凶悪な少女連続殺人犯が護送中に脱走した。市警のベテラン、グレーンス警部は懸命にその行方を追う。一方テレビでその報道を見た作家フレドリックは凄まじい衝撃を受けていた。見覚えがある。この男は今日、愛娘の通う保育園にいた。彼は祈るように我が子のもとへ急ぐが……。悲劇は繰り返されてしまうのか? 著者デビュー作にして北欧ミステリ最高の「ガラスの鍵」賞を受賞。世界累計500万部を超える人気シリーズ第1作。


北欧ミステリ、流行っていますよね。流行りすぎで、いっぱい翻訳されるようになって、さてどれを手に取っていいのか迷う状況になっています。
この「制裁」 (ハヤカワ・ミステリ文庫)は、以前ランダムハウス講談社から出版されていましたが、2017年にハヤカワ文庫で復活したものです。
この作者(たち?)、評判よさそうですし、復活するくらいだから、優れた作品なのだろうということで、手に取りました。

読み終わった感想は、優れた作品なのだろうな、とは思うものの、ちょっとどぎつすぎて、個人的好みではありません、というものです。
また、「ガラスの鍵」賞というミステリの賞を獲ってはいますが、これミステリかな? と思いました。

少女連続殺人、護送中の脱走、刑務所の実態、更生しない犯罪者......
社会の暗部を抉り出すような内容になっています。
ミステリというよりは、犯罪を扱った社会派小説という手触りです。
ミステリとするのなら、ミステリの枠を相当拡げないといけないと思いますし、ミステリとしても謎解きではなく、犯罪小説のテイストです。途中、法廷シーンもありますが、法廷ミステリのテイストではありません。

あらすじに引用されているのは、物語の前半まで。
そこから、物語も、フレドリックの運命も、おおきくねじれていきます。
本書の読みどころは、実はこの後の後半の展開だと思うのですが、それを明かしてしまうのは、いくら犯罪小説テイストとはいえ憚られてしまいます。
(訳者あとがきによれば、原題は直訳すると「怪物」「野獣」という意味のようです。邦題の「制裁」は、ややネタバレ気味です)

ぼかしたまま書いておきたいのですが、ラストはおそらく大方の読者の想定とは違うところに落ち着きます。
そのラストのおかげで本書は印象深いというか、忘れられないものになっていると思います。
非常に落ち着きの悪いラストなんですよね。

一方でこのラスト、作者は何を意図したのだろう? と悩んでいます。
なんだか、読者をもやもやさせるためだけに設けられたラストのような気がしてしまうんですよね。
このあたりをどう評価すればよいのか......

非常に気になる作者なので、もう何作か読んでみたいと思っています。



原題:ODJURET
作者:Anders Roslund & Borge Hellstrom
刊行:2004年
訳者:ヘレンハルメ美穂




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