密室殺人ゲーム王手飛車取り [日本の作家 あ行]
<裏表紙あらすじ>
〈頭狂人〉〈044APD〉〈aXe〉〈ザンギャ君〉〈伴道全教授〉。奇妙なニックネームの5人が、ネット上で殺人推理ゲームの出題をしあう。ただし、ここで語られる殺人はすべて、出題者の手で実行ずみの現実に起きた殺人なのである……。リアル殺人ゲームの行き着く先は!? 歌野本格の粋を心して堪能せよ!
「2008本格ミステリ・ベスト10」(原書房)第6位。「このミステリーがすごい! 2008年版」 第12位。
実際の犯行を伴う殺人ゲームという驚きの枠組みです。良識派-誰だそれ?-からは激怒されそうな設定。
ある意味、潔い設定ですね。トリックのためのトリックに淫することのできる状況を作り出したのですから。人物が描けていない、というお定まりの批判なんか完全に無効化できますね。だって、ゲームですから。第1のミッシリング・リンク探しも、そんな動機で殺されてはたまらないな、という回答なのは、遊戯性を強調するためでもあるのでしょう。
ネット上変なハンドルネームを持つ5人がチャットしているという舞台装置で、交代に実際に殺人をして、謎解き問題を出す、というかたち。犯人はわかっていますし、動機もトリックのため、とわかっているので、フーダニットや普通の意味でのホワイダニットは犠牲になっている前提で話が進みます。
個々のトリックは玉石混交、中にはご愛嬌というかなんというか推理クイズ並みのしょぼいトリックが混じったりもしていますが、物語の緩急をつけるクッションになっていますし、一種のめくらましにもなっています。このゲームだからこそのトリックも仕込まれていたりするのも見どころのひとつでしょう。
でも、それだけで終わっては歌野らしくない。この仕組みそのものを越えるというか、ぶち壊すというか、次のステージを展望したラストになっていて、「密室殺人ゲーム2.0」 (講談社ノベルス)に大きく期待を持たせてくれました。
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