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カラマーゾフの妹 [日本の作家 た行]


カラマーゾフの妹

カラマーゾフの妹

  • 作者: 高野 史緒
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2012/08/02
  • メディア: 単行本




<裏帯あらすじ>
不可解な「父殺し」から十三年。有名すぎる未解決事件に特別捜査官が挑む。

トロヤノフスキーは愕然とした。
当時の弁護士は真相まであと少しというところまで迫っておきながら、
最も重要な点を見逃している。
極めて重要な、絶対に見逃してはならない点をだ。

これを読まずに、今年のミステリーは語れない。超刺激的問題作!


本作は、第58回江戸川乱歩賞受賞作。単行本です。
表側の帯には、「あの世界文学の金字塔には、真犯人がいる。」とあります。
実は、というほどのことではありませんが、ミステリ以外はほとんど読まないので、肝心の(?)「カラマーゾフの兄弟」を読んだことがないのです。最近、亀山郁夫さんによる新訳(光文社古典新訳文庫--最後に Amazon.co.jp にリンクをはって書影を出しておきます)が出てずいぶん読みやすくなったと評判ですが、それでもロシア文学ってとっつきにくくて...なかなか手に取る気になりません。
その続編、という体裁の本作。
気後れはするものの、乱歩賞受賞作とあれば読まずにはおれません。
作者は高野史緒さん。「ムジカ・マキーナ」 (ハヤカワ文庫JA)で第6回日本ファンタジーノベル大賞の最終候補作となり、1995年にデビューされたプロの作家です。今更乱歩賞なんか取らんでも...という気もしなくはないですが、それだけ乱歩賞というのは価値があるんでしょうねぇ。高野さんの本を読むのも初めてです。

もちろん、「カラマーゾフの兄弟」を読んでいたほうが楽しめるのでしょうが、読んでいなくてもこの作品は十分に鑑賞できます。
つい、“鑑賞”なんて単語を使ってしまいましたが、プロ作家の貫録なのか、重厚な感じがしましたね。乱歩賞には原稿の枚数制限があるので分量は限られているはずですが、ずっしりとした読み応え。
既存の小説に寄りかかっている点をどう評価するか、というのが選考委員会では議論になったそうですが(今野敏さんは最後まで授賞に反対されたようです)、原典を読んでいなくても面白く読めたので、これはこれでよいと思います。原典を読んでいればミステリの知的遊戯として側面をより一層感じることができるのではないかと思います。もっとも授賞に賛成した選考委員もこのあと応募する人は安易にマネしないようにと牽制されていますが。
さて、肝心のミステリとしてはどうか、というと...
まず多くの登場人物がすっきりと混乱することなく簡潔に紹介されて物語世界にすんなり入っていけました。
盛りだくさんのエピソードを組み合わせた複雑なプロットも乱れることなく伝わってきます。
なにより、謎解きミステリとして、証拠も含め、きちんと筋道を立てて犯人が特定されるのがよいと思いました。扉の開け閉めの問題とか、凶器の問題とか、読んでいてわくわくできます。
多重人格者というきわめて現代的な要素を投げ込んだことも、ミステリとして効果をあげています。
真犯人が非常にわかりやすいと思ってしまいましたが、これはひょっとすると逆に原典を読んでいないからかもしれません。原典そのものがミス・ディレクションになっているのだとしたら、それはそれでとてもすごい作品だと思います。作者の狙いは、ここにあったのでは!?
乱歩賞としては、一度きりの荒業だったのかもしれませんが、凄腕の離れ業だと思います。

ちなみに、選考委員五人(石田衣良、京極夏彦、桐野夏生、今野敏、東野圭吾)のなかで原典を読んでいなかったのは東野圭吾ただ一人だったようです。おお、なんだか東野圭吾に親近感が...(笑)

最後に作者ご本人のホームページから、作品紹介のページのリンクをはっておきます。こちら。
(勝手にリンクをはっています)

カラマーゾフの兄弟1 (光文社古典新訳文庫)

カラマーゾフの兄弟1 (光文社古典新訳文庫)

  • 作者: ドストエフスキー
  • 出版社/メーカー: 光文社
  • 発売日: 2006/09/07
  • メディア: 文庫

カラマーゾフの兄弟2 (光文社古典新訳文庫)

カラマーゾフの兄弟2 (光文社古典新訳文庫)

  • 作者: ドストエフスキー
  • 出版社/メーカー: 光文社
  • 発売日: 2006/11/09
  • メディア: 文庫

カラマーゾフの兄弟3 (光文社古典新訳文庫)

カラマーゾフの兄弟3 (光文社古典新訳文庫)

  • 作者: ドストエフスキー
  • 出版社/メーカー: 光文社
  • 発売日: 2007/02/08
  • メディア: 文庫

カラマーゾフの兄弟 4 (光文社古典新訳文庫)

カラマーゾフの兄弟 4 (光文社古典新訳文庫)

  • 作者: ドストエフスキー
  • 出版社/メーカー: 光文社
  • 発売日: 2007/07/12
  • メディア: 文庫

カラマーゾフの兄弟 5 エピローグ別巻 (5) (光文社古典新訳文庫)

カラマーゾフの兄弟 5 エピローグ別巻 (5) (光文社古典新訳文庫)

  • 作者: ドストエフスキー
  • 出版社/メーカー: 光文社
  • 発売日: 2007/07/12
  • メディア: 文庫


<2014.11.30追記>
今年の8月に文庫化されていますので、書影を。

カラマーゾフの妹 (講談社文庫)

カラマーゾフの妹 (講談社文庫)

  • 作者: 高野 史緒
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2014/08/12
  • メディア: 文庫



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