SSブログ

火刑法廷 [海外の作家 ジョン・ディクスン・カー]


火刑法廷[新訳版] (ハヤカワ・ミステリ文庫)

火刑法廷[新訳版] (ハヤカワ・ミステリ文庫)

  • 作者: ジョン・ディクスン・カー
  • 出版社/メーカー: 早川書房
  • 発売日: 2011/08/25
  • メディア: 文庫


<裏表紙あらすじ>
広大な敷地を所有するデスパード家の当主が急死。その夜、当主の寝室で目撃されたのは古風な衣装をまとった婦人の姿だった。その婦人は壁を通り抜けて消えてしまう……伯父の死に毒殺の疑いを持ったマークは、友人の手を借りて埋葬された遺体の発掘を試みる。だが、密閉された地下の霊廟から遺体は跡形もなく消え失せていたのだ! 消える人影、死体消失、毒殺魔の伝説。無気味な雰囲気を孕んで展開するミステリの一級品。

昨日感想を書いた「芝浜謎噺 (神田紅梅亭寄席物帳)」 (創元推理文庫)には、結構厳しいことを書いてしまいましたが、今日の「火刑法廷」にはその心配(?)はありません。なんといっても、ミステリの巨匠ディクスン・カーの傑作中の傑作ですから。
2011年の8月に出た新訳版です。当然(?)旧訳版で読んでいて、今回新訳版での再読になります。
裏表紙側の帯には、
「アガサ・クリスティーの『そして誰もいなくなった』『オリエント急行の殺人』、エラリイ・クイーンの『Yの悲劇』、F・W・クロフツの『』……第1次大戦と第2次大戦の間の時代、長篇ミステリは黄金期を迎え、多くの傑作が生み出されました。そうした巨匠たちの一角を占めたジョン・ディクスン・カーの代表作が本書です。他の追随を許さぬ不気味なムード、巧妙な伏線と大胆な仕掛けは世界中の読者を唸らせ続け、驚嘆させてきました。ほぼ35年ぶりに翻訳を新たにし、従来は割愛されていた原著者による注釈も復活させた「完全版」の登場です。 」
と書かれています。
錚々たる顔ぶれに並べられていますが、いや本当に、これらの傑作群に負けない、きらびやかな傑作です。もし、未読の方がいらっしゃったら、すぐに本屋さんへGO! です。

引用したあらすじは、ストーリー展開を追っていませんので、視点人物エドワードに立って書き変えると...

編集者エドワード・スティーヴンズは、作家ゴーダン・クロスの新作原稿を読んで驚愕した。1861年に殺人罪でギロチンに処された毒殺犯マリー・ドブレーの写真が、彼の妻マリーのものだったから。そしてその夜、友人マーク・デスパードが、先日死んだマイルズ伯父は実は毒殺されたと疑っており(17世紀の毒殺魔ブランヴィリエ侯爵夫人の扮装をした犯人が、密室から煙のように消え失せたというおまけの謎つき)、墓を暴いて死体を調べるのに協力してほしいという。だが、密室状況の霊廟に入ってみるとマイルズ伯父の棺は空っぽだった。

というあたりでしょうか。おまけで付け加えておくと、このブランヴィリエ公爵夫人の扮装をした犯人というのも妻のマリーではないかという疑惑があります。
不死者だとか、生まれ変わり、とか、かなりの超自然現象と思われる事態に加えて、壁をすり抜ける犯人消失に、死体消失なんてものまで加わって、不可能興味てんこ盛り!
これらがすべて合理的に解決されたらすごいと思いませんか?
大丈夫です。さすがは名匠ディクスン・カー! きちんと理詰めで解決してくれます。
それだけでも十二分にすごいのに、最終章の「Ⅴ 評決」で、カーはもう一太刀振います。この最後の一撃の、めくるめくような衝撃力こそが、この作品の真髄です。せっかくつけた合理的な解決の鮮やかさが色あせてしまうほどの衝撃力、切れ味です。
もう、なんなんでしょうか、このカーの奥深さは。
ぜひ、ぜひ、手にとってお確かめください。
ちなみに、本作品は先日発表された「週刊文春臨時増刊 東西ミステリー ベスト100」の海外編第10位です。

nice!(3)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:

nice! 3

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 0