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Ave Maria アヴェ マリア [日本の作家 篠田真由美]


Ave Maria アヴェ マリア (講談社文庫)

Ave Maria アヴェ マリア (講談社文庫)

  • 作者: 篠田 真由美
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2010/08/12
  • メディア: 文庫


<裏表紙あらすじ>
酸鼻を極めた薬師寺事件から、はや十四年。時効を目前にした七月、蒼(あお)こと薬師寺香澄のもとに、謎の封筒が届いた。送り主は「響」、封筒の中身はただひとこと「REMEMBER」――。蒼は京介たちの手を借りずに、過去と向き合い記憶を辿り始める。『原罪の庭』の真相に迫る、「建築探偵シリーズ」最高傑作。

「センティメンタル・ブルー 蒼の四つの冒険」 (講談社文庫)
「angels 天使たちの長い夜」 (講談社文庫)
に続く、蒼の物語と銘打たれた、建築探偵シリーズの番外編(?)の最後の作品です。
冒頭に作者の断り書きがあるように、蒼(薬師寺香澄)に重大なつながりのある薬師寺事件を扱った「原罪の庭」 (講談社文庫)を取り込むようなかたちで物語が展開します。
この作品は、蒼の一人称、「ぼく」で語られます。
これが、個人的にはきつかったですね。大学生という設定の割に幼い、という指摘はよく受けますし、作中でもそういうことが述べられていますが、どうも蒼の思考回路についていけない自分がいました。蒼自身の口から語られる蒼の人物像に違和感があった、といってもよいと思います。
「蒼の物語」と書かれていて、ということはとりもなおさず、蒼の成長物語、ということでもあるわけで、この「Ave Maria アヴェ マリア」 の着地点に思いを馳せると、当初の人物像にもストーリー展開としての必然性があることは理解できるのですが、なんか、気持ち悪い、というか、すっきりしない、というか。(ついでにいうと、この着地点にも少々気持ち悪いところが含まれているのですが、それはまた別の話。)
なのですが、この部分を除くと、素晴らしい作品です。
特に、ミステリとしてとらえた場合には、「原罪の庭」 で扱った事件を再度取り上げ、改めて検討を加える、という設定であることを考えると、「原罪の庭」 の解決を否定するか、否定とまではいかなくても別の解決を提示するか、あるいは新しい解釈やバックグラウンド、サイドストーリーを付加するか、というかたちになるのが普通で、であればもとの「原罪の庭」 の価値を損ねてしまう危険性をはらむものなのですが、「Ave Maria アヴェ マリア」 の着地は、「原罪の庭」 ともども更なる高みに至るものと個人的には読みました。
また、このミステリとしての趣向が、「蒼の物語」としての側面と響きあって、調和しているので、見事だなぁ、と感心しました。
これは作者のシリーズ構想力が図抜けていることを示していると思いますので、ますます建築探偵シリーズの残りの作品を読むのが楽しみになってきました。

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