水族館の殺人 [日本の作家 青崎有吾]
<裏表紙あらすじ>
夏休みも中盤に突入し、風ヶ丘高校新聞部の面々は、「風ヶ丘タイムズ」の取材で市内の穴場水族館に繰り出した。館内を館長の案内で取材していると、サメの巨大水槽の前で、驚愕のシーンを目撃。な、なんとサメが飼育員に喰いついている!
駆けつけた神奈川県警の仙堂と袴田が関係者に事情聴取していくと、すべての容疑者に強固なアリバイが……。仙堂と袴田は、仕方なく柚乃へと連絡を取った。あのアニメオタクの駄目人間・裏染天馬を呼び出してもらうために。
平成のエラリー・クイーンが贈る、長編本格推理。好評<裏染シリーズ>最新作。
「体育館の殺人」(東京創元社)で鮎川哲也賞を受賞しデビューした青崎有吾の第2作です。
これまた、単行本で買いました。期待してますから。
期待にたがわずおもしろかったです。
「2014本格ミステリ・ベスト10」第2位です。
サメに喰われる、なんていうかなりショッキングなシーンから事件が始まるのですが、ちゃんと今回もロジック炸裂です。犯人限定の論理、を展開していってくれています。
エラリー・クイーンを引き合いに出しても怒ったりはしませんよ。素敵です。
「体育館の殺人」では傘がポイントになりましたが、今回はモップとバケツ。
分単位のアリバイも、そんな細かく分単位で行動覚えているわけないだろ! というツッコミも想定されるところですが、ミステリの登場人物だったらそれでいいのですよ。それに行動のつながりや、人間と人間の行き来等それぞれの人物がきちんと時計で時間を確認していなくても、後から時間が割り出せるように作者は配慮しているので、いうほど不自然ではありません。水族館ですからそれなりに大きな建物といっても、それでもやはり一つの建物の中の話。分刻みでもなけりゃ、つまらないですよ。
この作品には、犯人を追いつめる論理の楽しみのほかに、探偵の奇矯な行動の意味合いが、謎解きの段階で氷解するという謎解きミステリならではの楽しみも味わえます。
裏染天馬の家族のエピソードも出てきて、シリーズ化への布石もちゃくちゃくと進んでいるようです。
早くも次回作に期待が募ります!
<おまけ1>
エピローグのラストの裏染天馬のセリフ
「人間は、嘘をつきますからね」
が印象的で意味深なわけですが、そうするとその数行前に引用されているある人物のせりふも嘘、ということになって、すると〇〇も嘘をつく、ってことになるのでしょうか?
なんかそれらしいこと、どこかに書いてありましたっけ?
<おまけ2>
ところで、章題や節のタイトルはいずれも何かのもじりなのでしょうか?
最初のは乙一の「夏と花火と私の死体」 (集英社文庫)だとすぐにわかりますし、ほかにも大沢在昌の「「屍蘭 新宿鮫〈3〉」 (光文社文庫)」とか、萩尾望都の「11人いる!」 (小学館文庫)とかすぐわかるのもあるのですが、全部そうなのかな?
第一章 夏と丸美と私と死体
1 風ヶ丘タイムズ・タイム
2 丸美の愉快な仲間たち
3 横浜鮫・屍動乱
第二章 兄の捜査と妹の試合
1 仙道警部と袴田刑事リターンズ
2 真っ赤な血海(ちかい)
3 容疑者が11人いる!
第三章 探偵の到着とアリバイの解明
1 僕は妹に乞いをする
2 時速九〇キロの推理
3 みなさんこんにちは裏染天馬です
4 トイレット博士による有意義な証言
第四章 日曜のデートと水際の実験
1 モップは何でも知っている
2 クールボイス
3 病弱イルカ娘
4 おどける大捜査線
5 第二の妹
第五章 多すぎる容疑者と少なすぎる手がかり
1 狂乱家族実記
2 経験上でも濃い死体
3 ショータイム前のショータイム
第六章 黄色いモップと青いバケツ
1 ここから解決編
2 血と水ともう一つの何か
3 十一分の四
4 黄色いモップの論理
5 それは言わないお約束
<おまけ3>
体育館、水族館ときたら、次はなんでしょうね?
図書館、美術館、博物館、あたりが順当?
武道館、国技館、講道館あたりも楽しいかも。
電力館なんてありましたねぇ。
まさかの秘宝館?
いっそ、函館とか角館ってのもいいかも。
<2016.09追記>
2016年7月に文庫化されました。
Kindle版はこちらです。
水族館の殺人 (創元推理文庫)
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