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私の男 [日本の作家 桜庭一樹]


私の男 (文春文庫)

私の男 (文春文庫)

  • 作者: 桜庭 一樹
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2010/04/09
  • メディア: 文庫


<裏表紙あらすじ>
落ちぶれた貴族のように、惨めでどこか優雅な男・淳悟は、腐野花の養父。孤児となった10歳の花を、若い淳悟が引き取り、親子となった。そして、物語は、アルバムを逆から捲るように、花の結婚から2人の過去へと遡る。内なる空虚を抱え、愛に飢えた親子が超えた禁忌を圧倒的な筆力で描く第138回直木賞受賞作。


直木賞受賞作で、桜庭一樹の代表作と言ってもよい作品だと思います。
読みやすい文章で、情景がきわめて鮮やかに伝わってきます。
北海道南西沖地震で奥尻島を襲った津波で家族を失くすシーンなど、そんなに書き込んではいないのに、なんだか迫りくるものを感じてしまいます。
ただ、正直、ぼくにはこの作品の全体としての良さがわかりませんでした。
主人公花と父淳悟の禁忌がわからず、受け入れられなかったということではありません。この二人の関係は理解を越えていますし、これを “愛” と呼んでよいものかどうか納得できたわけでもありませんが、これらが理解できなかったから良さがわからない、というのではありません。理解できない関係性を描いた小説や映画は数多くありますし、理解できなくても強い印象を受けることはあり、すごいなと感じ入ることはよくあります。本書も鮮やかに二人の関係はこちらに迫ってきます。その意味では、良い作品なのだといえると思います。
良さがわからなかったというのは...この「私の男」 は、花が結婚する2008年から始まって、2005年、2000年、1996年、1993年とさかのぼってつづられていくのですが、この叙述形式の意味合いがわからないのです。
確かに、二人の関係性の出発点へ向けて過去へと逆にたどっていく、というのは「あり」だと思うのですが、その結果明かされる内容が、特段ずっと伏せておくことで耀きを増すようなものには思えなかったのです。
だから、ぼくはこの作品のよさを理解できていません。
解説で、北上次郎さんが「本書は構成も群を抜いている」と書かれていますが、そこはあまり説明がなく、構成についても解説してほしかったなぁ、なんて思っています。


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