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ミレイの囚人 [日本の作家 た行]


ミレイの囚人 (光文社文庫)

ミレイの囚人 (光文社文庫)

  • 作者: 土屋 隆夫
  • 出版社/メーカー: 光文社
  • 発売日: 2000/12
  • メディア: 文庫


<裏表紙あらすじ>
推理作家・江葉章二は、大学時代に家庭教師をしていた、白河ミレイに、監禁されてしまった。江葉の足には、重りの付いた鎖が……。彼が監禁されているとき一人の新人作家が殺された。現場に残る謎。殺人者はだれだ? 江葉はどうなる?
事件の結末は、恐ろしく、そして悲しい過去に遡る。そこには非道な犯罪に対する底知れぬ怒りがたぎっていた……。


引っ越し効果とでも言うのでしょうか。引っ越し前は、本棚の奥の方にひっそり追いやられていた本が、引っ越したらどこになにがあるかわからないので逆に表の方へ出てきます。
この「ミレイの囚人」 (光文社文庫)もそんな一冊。
土屋隆夫を読むのは、いつ以来でしょうか?? 手元の記録をみると2009年に「華やかな喪服」 (光文社文庫)を読んでいますね。意外と最近。
7年ぶりの土屋隆夫となるわけですが、この「ミレイの囚人」 は単行本が出たのが1999年。文庫が出たのが2000年ですから、ずいぶん古い本ですね。
端正な本格推理で昔は好きで読んでいたのですが、やはり古めかしいですね。

この作品を書かれたとき、作者は82歳だった、ということで、すげーって感じはしますが、古めかしいのは古めかしい。
冒頭、かなりおっさんくさい作家の視点で物語が始まるのですが、その江葉の年齢が32歳(14ページ)。こんなに老けた32歳、いますか?

作家が閉じ込められる、というのは「ミザリー」 (文春文庫)ですが、あちらはホラーで、こちらは本格ミステリ。ずいぶん手触りが違いますね。
本格ミステリに転じてからの謎解きは、ちょっとアンフェアというか、バカミスというか...楽しみましたけど。
なにより、途中まで読んだところで、「犯人は××なんじゃないの?」と思ったら、その通りだった、という個人的には脱力感あり、だったのですが、この作品のポイントはそっちよりもむしろ叙述にあると思います。
叙述トリック、というほどの仕掛けではないのですが、土屋隆夫にしては珍しい(?) 流れに注目です。
文中に、神の視点ともいえる作者の視点があちこちに顔を出すのに違和感を感じていたのですが、これも土屋隆夫による「仕掛けがあるよ~」というメッセージだったのでしょうね。

一時期(この作品が発表された頃なのかもしれませんね)ミステリで流行った◯◯法の問題を扱っているところも、作者の年齢を考えるとすごいことですね。ありきたりの主張であっても、貪欲に自らの作品に取り込んでいく心意気がいいですね。
でも、考えてみれば、「盲目の鴉」 (光文社文庫)の犯人像の裏返しともいえるメッセージですから、流行りを取り入れた、というよりは、もともと土屋隆夫がもっていた問題意識を作品に盛り込んだ、ということなのかもしれません。

土屋隆夫は、このあと、
「聖悪女」 (光文社文庫)
「物狂い」 (光文社文庫)
「人形が死んだ夜」 (光文社文庫)
と発表しているのですが、いずれも買えていません。
絶版になっているようなので、買っておけばよかったかなぁ。

タグ:土屋隆夫
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