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氷姫 [海外の作家 か行]

氷姫―エリカ&パトリック事件簿 (集英社文庫)

氷姫―エリカ&パトリック事件簿 (集英社文庫)

  • 作者: カミラ レックバリ
  • 出版社/メーカー: 集英社
  • 発売日: 2009/08/01
  • メディア: 文庫

<裏表紙あらすじ>
海辺の古い邸で凍った美しい女の全裸死体が見つかり、小さな町を震撼させた。被害者が少女時代の親友でもあった作家エリカは、幼馴染の刑事パトリックと共に捜査に関わることに。20年以上疎遠だった親友の半生を辿ると、恐るべき素顔が覗く。画家、漁師、富豪…町の複雑な人間模様と風土に封印された衝撃の過去が次々明らかになり、更に驚愕の……。戦慄と哀歓。北欧ミステリの新星、登場!


5月に読んだ9冊目の本です。
このところ日本で話題の北欧ミステリです。作者のカミラ・レックバリはスウェーデンの作家です。
実はこの作品、以前一度読もうとして読み始めたものの、なぜか挫折してしまった過去が...
今回読んでみて、あのときどうして挫折したのかなぁ、と不思議に思うくらい充実した作品でした。

文庫本にして570ページを超える大部な作品ですが、被害者はいったいどういう人物だったのか...、まずはそういう枠組みで始まります。引用したあらすじにも書いてありますね。
それを調べるのが、長い間音信不通だった知り合い(幼馴染、親友)というのが特徴でしょうか。
同時に、探る側の幼馴染エリカや家族、友人の日常も描かれていきます。
シリーズ第1作なので、事件関係者の日常・人間関係と、探偵役であるエリカの日常・人間関係が混然一体となっているところがミソなのかもしれません。

人間関係がポイントの作品です。
まず目を引くのはエリカのキャラクター設定。自然体、のように思えます。
副題「エリカ&パトリック事件簿」があっさり明かしてしまっていますが、この「氷姫―エリカパトリック事件簿」 中で、エリカはパトリックと恋人関係になります。
エリカの昔のボーイフレンドであるダーンとエリカの現在の関係が、なかなかよろしい。大人の男女に友人関係はありうるか? というのは割とあちこちで聞く議論ですが、成立させています。
一方で、周りが必ずしもそう見てくれるとは限らない。ここも人間関係上のポイントですね。ダーンの妻パニッラが爆発するシーンが出てきますが、シリーズ中でいろいろと出てくるんでしょうね。
被害者アレクサンドラやダーン、そしてエリカの妹アンナの夫婦関係が様々で、そこにいろいろな登場人物の夫婦関係、家族関係が重要なテーマとして出てきます。

これら人間関係の中に、ミステリとしての構図が埋め込まれています。
結局トラウマかいっ、と言いたくなるところもなくはないですが、因習というのか、スウェーデンを舞台にした横溝正史っていう感じの枠組みにトラウマはぴったりなのかもしれません。

さすがにちょっと長すぎる気がしましたが、主要人物たちともお近づきになれたし、続く作品も読んでみるかもしれません。


<蛇足>
「ちょうど大きな雪ひらがゆっくり地面に降り始めていた」(379ページ)
という記述があります。
「雪ひら」という語にひっかかりました。こんな語ありますか?
PCの変換でも出てきませんし、辞書にも載っていません。
でも、花びらからの連想で、すぐに意味が想像できますし、なかなか趣のある語ですねぇ。
使ってみようかな。






原題:Isprinsessan
作者:Camilla Lachberg
刊行:2003年
翻訳:原邦史朗








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