カード・ウォッチャー [日本の作家 石持浅海]
<カバー裏あらすじ>
ある日、遅くまでサービス残業をしていた株式会社塚原ゴムの研究員・下村が、椅子の背もたれに体重をかけ過ぎて後方に倒れてしまった。そのとき、とっさに身を守ろうとして手首を怪我してしまう。その小さな事故が呼び水となり、塚原ゴムに臨検が入ることになった。突然決まった立ち入り検査に、研究総務の小野は大慌て。早急に対応準備を進めるが、そんな中、倉庫で研究所職員の変死体を発見。小野は過労死を疑われることを恐れ、ひたすら隠ぺいに努めるのだが……。新感覚の会社ミステリー、待望の文庫化。
いやあ、石持浅海、また変なこと考えましたねぇ。
会社に労働基準監督署の立ち入り検査が来るタイミングで見つかった変死体。過労死か?
立ち入り検査では、労災、サービス残業が調べられる見込み。
「臨検の前に発見されるのと、後に発見されるのを比べて、会社に与える影響が少ない方を選ぶ」(66ページ)として、立ち入り検査の間中隠し通そうとする......
こんなことあり得ますかねぇ?
さすがに死体を発見したら警察にすぐに連絡すると思いますけどねー。せめて救急車?
まあ、轢き逃げをする人と同じ心理なのだ、ということなのかもしれませんが......
この大きな疑問を無視してしまえば、あとは、どうやって立ち入り検査官(監督官?)から隠し通すか、妙に勘が鋭い検査官で....といった話の流れを楽しむことができます。
妙に鋭い検査官・北川のキャラクターがまた狂ってまして(失礼)、こんな人と対峙するのいやだなぁ。
この物語の設定、労働実態が非常に悪くて、ただでさえ労働基準監督署の人たちと応対するの嫌だろうに、ましてや死体があることまで隠さないといけないだなんて......
主人公の小野くん、かわいそう。(為念ですが、小野くんは通報しようとしていたところ、上司に止められています。もっとも上司に言われてからといって通報しないようではいけないのですが)
最後に明かされる死の真相が、どうかなぁ、と思う感じだったのが残念でしたが、検査官との攻防は面白かったですね。
<蛇足>
小野のような素人が考えても、ここは即行で通報しなければならない。(195ページ)
「即行」のところで立ち止まりました。見慣れない気がしたからです。
でも、こちらの感覚が間違っていて、この漢字で正しそうですね......
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