SSブログ

オーパーツ 死を招く至宝 [日本の作家 あ行]


オーパーツ 死を招く至宝 (宝島社文庫 『このミス』大賞シリーズ)

オーパーツ 死を招く至宝 (宝島社文庫 『このミス』大賞シリーズ)

  • 作者: 蒼井 碧
  • 出版社/メーカー: 宝島社
  • 発売日: 2019/01/10
  • メディア: 文庫

<カバー裏あらすじ>
貧乏大学生・鳳水月(おおとりすいげつ)の前に現れた、自分に瓜二つの男・古城深夜(こじょうしんや)。鳳の同級生である彼は、オーパーツ―当時の技術や知識では制作不可能なはずの古代の工芸品―の、世界を股にかける鑑定士だと自称した。水晶髑髏に囲まれた考古学者の遺体に、密室から消えた黄金シャトルなど、謎だらけの遺産をめぐる難攻不落の大胆なトリックに、変人鑑定士・古城と鳳の “分身コンビ” の運命は?


2022年8月に読んだ12作目(13冊目)で最後の本です。

田村和大「筋読み」 (宝島社文庫)(感想ページはこちら
くろきすがや「感染領域」 (宝島社文庫)(感想ページはこちら
が優秀賞を受賞した第16回 『このミステリーがすごい!』大賞の大賞受賞作です。

「筋読み」「感染領域」が割と気になる(いい意味です、念のため)作品だったので、それを上回るはずの大賞受賞作この蒼井碧 「オーパーツ 死を招く至宝」 (宝島社文庫)には期待するところ大。
オーパーツというのも題材として面白そうですしね。

第一章「十三髑髏」は、タイトル通りずばり十三個のクリスタル・スカルを扱っています。
十三個の髑髏が並ぶ密室の殺人現場。
トリックそのものは既存のものに一ひねりしたものなのですが、道具立てのおかげでとても楽しいものに仕上がっています。

第二章「浮遊」は黄金シャトル。プレ・インカ期に作成された、スペースシャトル型(!)の黄金細工。
こちらも密室状況ですが、登場人物の心理状況が納得できなかったのが残念。

第三章「恐竜に狙われた男」は恐竜土偶。
このトリックは既存のもの使っているのですが、ちょっと雑な印象。書かれている方法で実行できるか疑問があります。

第四章「ストーンヘンジの双子」はそのままストーンヘンジ。巨石遺構を模して作り上げた巨石庭園が舞台で、使われているトリックが爆笑もののバカバカしさ(誉め言葉です)。

とここまでだと普通の連作なのですが、おそらくこの作品の評価はエピローグにかかってくるのだと思います。
いかにもオーパーツらしいことがこのエピローグには書かれているのですが、上手くつながったというよりは、単に投げ出してしまった印象。
それらしく匂わしてはいるものの、匂わせは所詮匂わせにすぎないのではないかと思います。

と、こうしてみると、蒼井碧のこの「オーパーツ 死を招く至宝」 (宝島社文庫)が大賞で、「筋読み」「感染領域」が優秀賞というのが一番の謎かもしれません。
そして大森望による解説で、受賞から出版に至る経緯が書かれているのですが、これが一番の驚き。『このミステリーがすごい!』大賞がそういう賞なのだ、ということは理解しておかなければならないのでしょうが、あまりフェアな賞とは思えないですね。
応募段階での原稿が少々気になります。



<蛇足1>
「居た堪れない話だな」(143ページ)
いたたまれない、を漢字で書いているのをはじめてみた気がします。こう書くのですね。

<蛇足2>
「いくら琥珀の中で保存されようと、遺伝子は時間の経過とともに劣化する。フィクションの世界では保存された恐竜の遺伝子からクローンを生み出す描写が往々にして見られるが、理論上は限りなく不可能に近い。」(216ページ)
なるほど、そうなんですね。



nice!(14)  コメント(0) 
共通テーマ:

nice! 14

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。