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沈黙者 [日本の作家 あ行]


沈黙者 (文春文庫)

沈黙者 (文春文庫)

  • 作者: 折原 一
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2004/11/10
  • メディア: 文庫

<カバー裏あらすじ>
埼玉県久喜市で新年早々、元校長の老夫婦とその長男夫妻の四人が惨殺された。十日後、再び同市内で老夫婦の変死体が発見される。そして一方、池袋で万引きと傷害で逮捕された男が、自分の名前を一切明かさぬままに裁判が進められる、という奇妙な事件が語られていく。この男は何者か? 巧緻を極める折原ミステリーの最高峰。


2023年9月に読んだ2作目の本です。
折原一の「沈黙者」 (文春文庫)
ずいぶん長く積読にしていました。
折原一を読むのは「チェーンレター」 (角川ホラー文庫)(感想ページはこちら。現在は改題されて「棒の手紙」 (光文社文庫))以来ですね。

折原一の作風については、「失踪者」 (文春文庫)感想)にも書いたとおりで、初期の一般的な叙述トリック(変な言い方ですが)から、多重視点、多重文体を用いたものに変遷してきていて、この「沈黙者」も多重視点、多重文体にあてはまります。
昔、この手法はさほど楽しめなかったのですが、「失踪者」に続いて「沈黙者」も楽しめました。

タイトルの沈黙者とは、一貫して名前を告げることを拒否する少年犯(犯した罪は、万引きと強盗致傷で、比較的軽微なもの)のことを指しています。
被告人 氏名不詳
として裁判にもかけられます(200ページ)。
和久峻三の赤かぶ検事シリーズに、「被告人・名無しの権兵衛」 (角川文庫)というのがあったなぁ、と思いだしたりしました。

まず本書は、五十嵐友也という作家(ルポライター?)による序で幕を開けます。
犯人が殺人の犯行の及ぶシーンと、沈黙者に語りかけるシーンによるプロローグが続きます。
そして事件発見から本編です。

久喜市で発生した田沼家一家惨殺事件と、その十日後に発見された吉岡家の殺人事件。
どうやらこの2つの事件は連続して起こっていたらしく、犯人も同一である可能性が高い。
そしてこの沈黙者。
どう絡むのか? と思いながら読み進みます。

構築された事件の構図が興味深かったですね。
解説がわりに収録されている佐野洋の推理日記でも
「『氏名をずっと黙秘している男がいる』というニュースから、『沈黙者』という長編を書き上げた、折原さんの想像力、小説の構成力に対しての驚き」
と書かれています。まったく!

この沈黙者は誰か、という点について作者(折原一)が仕掛けた罠(?) はある程度想像がつくもので、日本のある有名作品のアイデアの相似形のようにも思われましたが、アイデアの出発点は異なるでしょうし、あえて結びつける必要はないのかも。
もちろんここ以外にも仕掛けはいろいろと張り巡らされており、楽しい読書でした。



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