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七丁目まで空が象色 [日本の作家 似鳥鶏]


七丁目まで空が象色 (文春文庫)

七丁目まで空が象色 (文春文庫)

  • 作者: 鶏, 似鳥
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2020/01/04
  • メディア: 文庫

<カバー裏あらすじ>
マレーバク舎を新設する事となり、飼育方法などを学ぶ為に、山西市動物園へ「研修」に来た桃本ら楓ヶ丘動物園のメンバーたち。そこでは、桃本の従弟である誠一郎が働いていて、邂逅を喜ぶ二人だったが、園内ではある異変が――。なんと飼育している象が脱走してしまったのだ。象はどうして逃げたのか? 待望のシリーズ第5弾!!


似鳥鶏の
「午後からはワニ日和」 (文春文庫)(ブログの感想ページへのリンクはこちら
「ダチョウは軽車両に該当します」 (文春文庫)(ブログの感想ページへのリンクはこちら
「迷いアルパカ拾いました」 (文春文庫)(ブログの感想ページへのリンクはこちら
「モモンガの件はおまかせを」 (文春文庫)(ブログの感想ページへのリンクはこちら
に続く楓ケ丘動物園シリーズ第5弾です。長編です。

今回は、楓ケ丘動物園を飛び出し、見学先の山西市動物園へ。
そこで、中国から借りてきているアジア象藍天(ランテイエン。「藍」は文庫本では簡体字が使われています)が動物園を飛び出す。

今回、僕桃本の従弟桃本誠一郎が冒頭から語り手をつとめます。誠一郎は僕のことを「兄貴」と呼ぶんですね。
そのあと、僕が語り手。交互に綴られることとなります。
ここが一つ目のポイントですね。新しい趣向です。今後もシリーズに出てくるのかな? 誠一郎は。
誠一郎は、語り手をつとめるだけではなく、大活躍します。

語り手が分かれたから、というわけではないと思いますが、今回は謎を解く、という方面に加えて、逃げ出した象をどうするか、というサスペンス? ドタバタ? が大きな要素になります。
(というか、逆で、象逃走のドタバタのために、誠一郎が語り手に採用されたような気がします)

街中を象が歩くとどうなるのか、興味深いですよね。
この「七丁目まで空が象色」(文春文庫)を読んで、絶対に現実にはなってほしくないな、と思いました。
これ、ひょっとして戦力外捜査官シリーズで扱ってもいい大騒動かも。

謎の方も、藍天(ランテイエン)をめぐるもの、なのですが、うーん、こっちは不発というか、これは解けないですよね、読者には。
事象としてはおもしろいんですけれど、謎解きされても、ああそうなんだ、って感じでおしまいです。
ただ、非常に拡がりのある謎だな、と感心。
この薄い本の中に、混乱なく盛り込む作者の手腕はさすがです。

あとがきによれば、今後もシリーズは続いていくとのこと。
楽しみです!


<蛇足1>
「その小鳥はなぜか、俺をめがけて~一所懸命に歩いてくる」(127ページ)
前作「モモンガの件はおまかせを」 (文春文庫)でもそうでしたが、ちゃんと一懸命だ! 似鳥鶏、素晴らしい。
一方で、「~たり、~たり」は、守られていませんね。128ページや241ページ。ちょっと残念。

<蛇足2>
なにしろコアラの睡眠時間は動物界最長で一日二十二時間。(210ページ)
コアラの主食であるユーカリは毒がある上に繊維質ばかりで栄養価もなく、そのためコアラは消化にすさまじいエネルギーを費やさなくてはならない。一日二十二時間も寝ているのはそのためで、なんだか本末転倒という気がしなくもないが、「他の動物が絶対に手を出さないゲテモノを主食とすることで生き延びる」というニッチな生存戦略であり、彼らは日々「消化」という仕事に精を出しているのだ、と思えばこの寝姿も興味深い。(211ページ)
ひやーっ、本当ですか。すごいですね、コアラ。

<蛇足3>
「モモンガの件はおまかせを」 に続いて、「週刊文椿(ぶんちゅん)」が出てきます。相変わらず、ちょっとかわいい感じがしますね。





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