SSブログ

双孔堂の殺人 Double Torus [日本の作家 周木律]


双孔堂の殺人 ~Double Torus~ (講談社文庫)

双孔堂の殺人 ~Double Torus~ (講談社文庫)

  • 作者: 周木 律
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2016/12/15
  • メディア: 文庫

<カバー裏あらすじ>
二重鍵状の館、"Double Torus(ダブル トーラス)"。警察庁キャリア、宮司司(ぐうじつかさ)は放浪の数学者、十和田只人(とわだただひと)に会うため、そこへ向かう。だが彼を待っていたのは二つの密室殺人と容疑者となった十和田の姿だった。建築物の謎、数学者たちの秘された物語。シリーズとして再構築された世界にミステリの面白さが溢れる。"堂" シリーズ第二弾。


読了本落穂拾いで、堂シリーズの第二作です。
このシリーズ
「眼球堂の殺人 ~The Book~」 (講談社文庫)(感想ページはこちら
「双孔堂の殺人 ~Double Torus~」 (講談社文庫)
「五覚堂の殺人 ~Burning Ship~」 (講談社文庫)(感想ページはこちら
「伽藍堂の殺人 ~Banach-Tarski Paradox~」 (講談社文庫)(感想ページはこちら
「教会堂の殺人 ~Game Theory~」 (講談社文庫)(感想ページはこちら
「鏡面堂の殺人 ~Theory of Relativity~」 (講談社文庫)
「大聖堂の殺人 ~The Books~」 (講談社文庫)
以上七冊で完結しているようで、第五作「教会堂の殺人 ~Game Theory~」まで読んでいます。

「教会堂の殺人 ~Game Theory~」で路線転換してしまっていてシリーズの今後に不安を抱きましたが、この「双孔堂の殺人 ~Double Torus~」 は未だ第二作だけあって、普通に(?) 館ミステリしています。
シリーズを通しての仕掛け? というか、人物配置もされてます。

早速15ページにいかにもな建物の図が掲げられていますし、そのあとも102ページ、103ページ、さらには138ページでも怪しげな図面で読者のご機嫌を伺います。
位相幾何学だ、ポアンカレだなんだと、御大層な数学の衒学趣味満載の作品でくらくらしますが、謎解きは由緒正しい、いかにもな館もので、しっかり脱力できます。素晴らしい。

おもしろいなと思ったのは、数学が苦手な人、数学が分からない人の方が思いつきやすそうトリックが一つ紛れ込んでいること。
読者へのボーナス問題でしょうか?
こういう茶目っ気、いいですね。


<蛇足1>
「俺は無意識に左手で愛用のネクタイを緩めた。」(20ページ)
一人称で語られていることを考えると、なかなか味わい深い文章ですね。

<蛇足2>
「ドイツの数学者、エルンスト・クンマーは、九かける七の答えが思い出せなくなったことがあった。だが彼は、最終的にはその解が六十三であることを導き出す。」(65ページ)
このエピソード、「数学という抽象化の学問においては、九九などという些末な知識などなくとも、何ら支障がないことを示す証拠」として出てくるんですが、そしてその趣旨には異を唱えるものではないですが、ドイツに九九ってあるんですね。
結構ご大層な方法でクンマーは解を導き出すのですが、九かける七だったら、奇を衒った出し方をしなくても九を七回(あるいは七を九回)足せば済む話だと思うのですが。





nice!(13)  コメント(2) 
共通テーマ: