ビギナーズ・ラボ [日本の作家 喜多喜久]
<カバー裏あらすじ>
旭日製薬で働く恵輔は、祖父がいる老人ホームで千夏に出会い、恋に落ちる。しかし、彼女は治療薬が存在しない致死性の難病“ラルフ病”に冒されていた。恵輔は彼女を救いたい一心から、文系の創薬素人でありながら自ら治療薬を開発するという、あまりにも無謀な挑戦を始めるが――!(『ビギナーズ・ドラッグ』改題)
2021年10月に読んだ2冊目の本です。
ミステリーではありません。
製薬会社を舞台に創薬の現場を描くというもので、創薬のプロジェクトチームのリーダーに文系の素人を据えたのがミソです。
喜多作品としてはいつものことですが、非常に軽やかに書かれていまして、いろいろと困難はあるものの、創薬がリズミカルに行われる感じを受けます。
また今までの喜多作品と違い、ミステリという枠を外したことでストレートに創薬に焦点が当たっています。
実際にはこの作品のようにはいかず、無駄に終わるあるいは失敗に終わるプロジェクトが無数にあって創薬というのはできてるのだとは思いますが、エンターテイメントンのかたちで提示してもらえて、素人には親切です。
その意味では、創薬の素人が難題に挑む、そして成功してしまう、というのはファンタジーなのでしょうが、実際に製薬会社で研究員を務めていたという喜多喜久の祈りでもあるのだろうな、と感じました。
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