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愚者のスプーンは曲がる [日本の作家 か行]


愚者のスプーンは曲がる (宝島社文庫 『このミス』大賞シリーズ)

愚者のスプーンは曲がる (宝島社文庫 『このミス』大賞シリーズ)

  • 作者: 桐山 徹也
  • 出版社/メーカー: 宝島社
  • 発売日: 2017/04/06
  • メディア: 文庫


<カバー裏あらすじ>
ある日突然、銃を所持した超能力者(らしい)二人組に拉致された町田瞬。彼らは組織の命令で、危険な能力を持つ(らしい)瞬を殺しに来たのだという。その能力とは、超能力の「無効化」。つまり、瞬の前では超能力者による超常現象は発生しない(らしい)――。なんとか命拾いした瞬は、代わりに超能力者による組織『超現象調査機構』で働くことになり、やがて奇怪な事件に巻き込まれていく……。


2021年10月に読んだ4冊目の本です。
2017「このミス大賞」隠し玉。
第15回 『このミステリーがすごい!』大賞に応募された作品を改稿したものです。
このときは隠し玉として同時に
志駕晃「スマホを落としただけなのに」 (宝島社文庫)(感想ページはこちら
が出て、さらに後から
綾見 洋介「小さいそれがいるところ 根室本線・狩勝の事件録」 (宝島社文庫)
が出ました。
このときの大賞は
岩木一麻「がん消滅の罠 完全寛解の謎」 (宝島社文庫)(感想ページはこちら)。
ちなみにこのとき優秀賞も2作出ていまして、
三好昌子「縁見屋の娘」 (宝島社文庫)
柏木伸介「県警外事課 クルス機関」 (宝島社文庫)
応募された作品のうち実に6作も出版されているのですね。

『このミステリーがすごい!』大賞の隠し玉は、玉石混交で当たり外れが激しいのですが、この「愚者のスプーンは曲がる」 (宝島社文庫)は当たり、個人的には大当たりです。

超能力がある世界を舞台にしていまして、主人公もその一人。
ただその能力が、他の人の超能力を無効化するというもの。
この発想がまずいいですね。

超能力というのは飛び抜けた能力ですから
「力のあるものが、その力に見合う正当な権利を主張するのは、決して傲慢なことではない」(271ページ)
「下劣で何の力もないやつらが、なぜのうのうと生きているのかと。なぜ俺たちがそれに迎合しなければならないのかと」(272ページ)
といった感想を持つ人たちも出てきます。
一方で、超能力については「持つ者の哀しみ」描いた作品群がありますが、本書はその哀しみを正面から扱うのではなく、他の人の超能力を無効化する主人公を抛り込むことによってドタバタ喜劇に転化しています。

そして独特のキャラクター陣が繰り広げるを支えるのが、軽妙な文体。
主人公ぼくの語り口が非常に心地よくて、楽しい。物語の早いテンポとマッチしています。
物語の着地も、きちんと決まっています。

こういう作者の作品はほかの作品も楽しめるはず。
さっそく「ループ・ループ・ループ」 (宝島社文庫)を買いに行きました。
楽しみです。


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