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天久鷹央の推理カルテ [日本の作家 た行]


天久鷹央の推理カルテ (新潮文庫nex)

天久鷹央の推理カルテ (新潮文庫nex)

  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2014/09/27
  • メディア: 文庫


<カバー裏あらすじ>
お前の病気(ナゾ)、私が診断してやろう。
統括診断部。天医会総合病院に設立されたこの特別部門には、各科で「診断困難」と判断された患者が集められる。河童に会った、と語る少年。人魂を見た、と怯える看護師。突然赤ちゃんを身籠った、と叫ぶ女子高生。だが、そんな摩訶不思議な“事件”には思いもよらぬ“病”が隠されていた……? 頭脳明晰、博覧強記の天才女医・天久鷹央が解き明かす新感覚メディカル・ミステリー。


2021年10月に読んだ11作目の本です。
知念実希人のシリーズ第一作。
知念実希人は、
「仮面病棟」 (実業之日本社文庫)(感想ページはこちら
「時限病棟」 (実業之日本社文庫)(感想ページはこちら
の2作を読んだことがあり、なかなか面白かったので他の作品も読んでみようとは思っていたのですが、作品数が多くてどれにしようか悩んでいるうちに時が過ぎ、というパターンでした。
ある日紀伊国屋さんで、おそらくシリーズ新刊に合わせてだと思うのですが、サイン本が売られていたので、いいきっかけだと購入しました。
たいへん人気あるシリーズのようで、どんどん巻を重ねていますし、本屋さんでは平積展開されていることも多いですね。

まず、探偵役でシリーズタイトルにもなっている天久鷹央は、あめくたかお、と読みます。
博覧強記の天才女医と上に引用したあらすじにある通りの設定です。

Karte.01 泡
Karte.02 人魂の原料
Karte.03 不可視の胎児
Karte.04 オーダーメイドの毒薬
という4つの物語を収めた連作短編集です。

個人的には名探偵である天久鷹央のキャラクターが好きになれませんでしたが、こちらはシリーズを重ねるにつれて相棒である小鳥遊優との関係性が進展するにつれてこなれていくことでしょう。

一読、扱われている謎のあまりの初歩的な内容にびっくりしました。
何一つ意外ではなく、ミステリを読み慣れた人であれば、容易に真相(とまではいかなくても概要)にたどり着いてしまうことでしょう。
天才、と評される天久鷹央が出てくる必要はありません。
推理クイズを小説に仕立てたみたい、です。

そこでふと思ったのですが、この作品のレーベルは新潮文庫NeX。
表紙も高名なラノベイラスト画家であるいとうのいぢを起用しています。
としますと、ターゲットとなる読者は若い方、それも極めて若い方。
であれば、この作品はそもそもミステリの入門書たることを目指して書かれたのではないか、と思いました。

確かこのレーベルには乱歩の少年探偵団シリーズも収録されていたはず。
現代の青少年に向けて、現代の少年探偵団ともいうべきシリーズを立ち上げたのだとすると、その心意気やよし、ということではないでしょうか。
買った文庫の帯に「累計40万部突破」と書かれていて(購入したのは2016年9月です)、人気を博し、シリーズも順調のようです。
このシリーズを入り口に、豊穣たるミステリの世界に足を踏み入れる若い人が増えるのは嬉しいことですし、ちょっと応援したくなりましたね。



<蛇足>
消毒用の酒精綿、というセリフが出てきます。(103ページ)
病院らしい小道具ですが、あれ、酒精綿って言うんですね。知りませんでした。



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