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松谷警部と向島の血 [日本の作家 は行]


松谷警部と向島の血 (創元推理文庫)

松谷警部と向島の血 (創元推理文庫)

  • 作者: 平石 貴樹
  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2016/09/25
  • メディア: 文庫

<カバー裏あらすじ>
必ず解決して、警部のご退職に間に合わせます―とは言ったものの、白石巡査部長は真相解明の糸口を掴めず焦っていた。犠牲者は力士ばかり、現場の共通項から同一犯と思われるが、アリバイと動機を考え合わせても有力な容疑者は浮かんでこない。迫る松谷警部定年の日。現場百遍の教えに従って調べ直す白石が見出した手掛かりとは……。フーダニットの極限に挑むシリーズ第四作。



2021年11月に読んだ最初の本です。
「松谷警部と目黒の雨」 (創元推理文庫)(感想ページはこちら
「松谷警部と三鷹の石」 (創元推理文庫)(感想ページはこちら
「松谷警部と三ノ輪の鏡」 (創元推理文庫)(感想ページはこちら
に続くシリーズ第4作で、松谷警部が定年を迎えるということで、このシリーズも最終作となりました。

今回もいつものように(?)、創元推理文庫の常で、表紙をめくった扉のあらすじを引用します。

これが現職最後の担当事件か――松谷警部が駆けつけた現場は両国国技館から歩いて行ける距離にあった。被害者は五稜郭光夫、渡島部屋の十両力士だという。胸部を刺されており、傍らに「コノ者、相撲道ニ悖ル」と印刷された紙片が。捜査が進むなか先輩格の鴎島、葛灘が相次いで殺害され、同じメッセージが残っていた。狭い社会だけに関係者も限られるが、三件全部にアリバイのない者はおらず、動機やメッセージの真意も定かではない。苦心惨憺の末、白石巡査部長が真相に至ったのは、実に松谷警部の退職二日前だった!


今回取り上げられているスポーツは相撲です。(相撲はスポーツじゃないとお叱りを受けるかもしれませんが)

何より今回特筆すべきなのは、懐かしの更科ニッキの義理の娘マイラが登場し、事件に絡んでくることですね。
相撲に外国人?と思わないでもないですが、すっきり入り込んでいます。

事件の方は、無事、松谷警部の引退直前に解決します。白石巡査部長、さすが。
謎解きは、松谷警部の引退旅行を兼ねて函館の「五島軒」で行われるという設定です。
第五章がほぼまるまるこの謎解きに当てられていて、ニンマリ。
こういう解決シーンが読みどころですよね。特に308ページから展開されるラジオをめぐる推理は読んでいて気持ちよかったですね。
事件の構図を振り返ってみると、よくこんな事件をロジックで解決したな、と感心します。同時に、もはやこれは難癖のレベルになりますが、そこが弱点でもあるなと感じました。

最後の最後に、松谷警部が詠んできた俳句が抄としてまとめられていて、23句載っています。
ひょっとしてなにかの暗号になっていたりしないかな、と考えてみましたがさっぱりわかりません。たぶん邪推でしょうね(笑)。

松谷警部が引退しても、白石巡査部長は現役ですし、警察にいなくても事件にかかわりあいになることだってあるでしょう。
このシリーズはいったん打ち止めにしても、また出会いたいなと思いました。



<蛇足1>
「捜査本部が置かれてから、同一犯による殺人が次々と起こるとは、どういうことなんだ。これじゃまるで火曜サスペンス劇場じゃないか。」(194ページ)
火曜サスペンス劇場、懐かしいですね。
若い方はご存じないのではないでしょうか?

<蛇足2>
「目の前に夫の昶(あきら)がいて、音を立てて明滅している電話機を巡査部長の顔に近づけていた。」(194ページ)
白石巡査部長の夫登場なのですが、昶とは珍しいです。
この漢字、常用漢字でも当用漢字(懐かしい)でも人名漢字(これまた懐かしい語ですね)でもないので、1948年の戸籍法改正以降は名前に使えないのではないかと思います。
昶さんの年齢設定がそれほどの高齢とは思えませんので、少々変ですね(笑)。


<2023.8.3追記>
「2017本格ミステリ・ベスト10」第9位です。

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