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ナイルに死す [海外の作家 アガサ・クリスティー]


ナイルに死す〔新訳版〕 (ハヤカワ文庫 クリスティー文庫 15)

ナイルに死す〔新訳版〕 (ハヤカワ文庫 クリスティー文庫 15)

  • 出版社/メーカー: 早川書房
  • 発売日: 2020/09/11
  • メディア: 文庫

<カバー裏あらすじ>
美貌の資産家リネットと新婚の夫のエジプト旅行には暗雲が垂れ込めていた。夫の元婚約者が銃を手につけ回してくるのだ。不穏な空気のなか、ナイル川をさかのぼる豪華客船上でついに悲劇が起きる。しかし、死体となって発見されたのは意外な人物だった……ポアロが暴く衝撃の真相とは? 著者の代表作が新訳で登場。


去年はアガサ・クリスティー デビュー100周年、生誕130周年。それを記念した早川書房のクリスティー文庫の6ヶ月連続新訳刊行、
「予告殺人〔新訳版〕」 (クリスティー文庫)(感想ページはこちら
「雲をつかむ死〔新訳版〕」 (クリスティー文庫)(感想ページはこちら
「メソポタミヤの殺人〔新訳版〕」 (クリスティー文庫)(感想ページはこちら
「ポケットにライ麦を〔新訳版〕」(クリスティー文庫)(感想ページはこちら
に続く第5弾です。

この作品は旧訳版ではなくたしか新潮文庫版で昔読んでいます。
「ナイル殺人事件」として映画化もされた超有名作で、ケネス・ブラナーによって昨年(2020年)再映画化もされていますね。
ナイル河畔というエキゾチックな舞台、クルーズ船という豪華な舞台と、映画化にはうってつけ。
ミステリとしても、いかにもトリックらしいトリックは仕掛けられていないにもかかわらず、圧倒的に印象的な犯人像がすばらしい(この犯人像こそがトリックだということかもしれませんが)。

初読時は、小学生だったと思うのですが、あまりの衝撃にまわりの人に必死で「ナイルに死す」(クリスティー文庫)のすごさを喧伝しようとしたのですが、このすごさは、かいつまんでは伝わりません。登場人物をいきいきと描くクリスティーの筆があってこそ。
むしろネタバレになって、周りの迷惑だったと思います(苦笑)。

なかなか事件が起きません。250ページを過ぎたところで最初の事件が起きます。(全体は539ページなので、半ば近くになって起きるということになります)
でも、決して退屈することはないでしょう。
見たところ、事件の構図も単純そうです。
でも、クリスティーの術中にはまって、真相を見抜くことは容易ではないでしょう。

派手なトリックな用意されていませんが、とびきりのサプライズが仕掛けられた名作だと思います。



<蛇足1>
「わたしはミセス・ドイルの、あの派手で安っぽい感じのメイドが『おやすみなさいませ(ボンヌ・ニュイ)、マダム』と言う声で目がさめました。」(318ページ)
おやすみなさいのフランス語が、ボンヌ・ニュイ、となっていて、あれっと思いましたが、ぼくの勘違いで、これが正しいですね。
Bonne nuit は、実際に耳にすると、「ボン・ニュイ」とヌの音が聞こえないように思ったのですが、これはぼくの耳が悪いだけでした(笑)、


<蛇足2>
「なんという毒々しい女だ! ふう! 誰が殺人者か知らないが、殺すならあの女を殺せばよかったのに!」
「まだ諦めるのは早いですよ」とポアロは慰めた。(332~333ページ)
英国情報部員であるレイス大佐とポワロの会話なんですが、いやあ、別の女を殺せばよかったというのもすごいですが、それに対してポワロの回答が「諦めるのは早い」ということは、その可能性が残っているということですよね! すごいなぁ。



原題:Death on the Nile
著者:Agatha Christie
刊行:1937年
訳者:黒原敏行






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