SSブログ

厚かましいアリバイ [海外の作家 か行]


厚かましいアリバイ (論創海外ミステリ)

厚かましいアリバイ (論創海外ミステリ)

  • 出版社/メーカー: 論創社
  • 発売日: 2020/12/21
  • メディア: 単行本



論創海外ミステリ169。単行本です。
C・デイリー・キングのABC三部作のうち、「いい加減な遺骸」 (論創海外ミステリ)(感想ページはこちら)に続く第2作です。
このあと「間に合わせの埋葬」 (論創海外ミステリ)が第3作です。

前作「いい加減な遺骸」は、ちょっと見過ごせないほどの大きな欠点があるものの、なぜか嫌いにはなれないという、ある意味愛すべき作品だったように思ったのですが、さて、今度の「厚かましいアリバイ」 (論創海外ミステリ)はどうでしょうか?

あらすじがどこにもないのですが、帯に
「洪水で孤立した村
 館で起きる密室殺人
 容疑者全員には完璧なアリバイがあった」
と書かれています。

解説では、森英俊が
「密室にアリバイ崩し、ダイイング・メッセージ」に奇妙な凶器、邸の見取り図に関係者のアリバイ一覧表、複数の仮説に誤った推理という、パズラー・ファンにはたまらない御馳走がいくつも盛り込まれており、読むものを最後まで飽きさせない」
と書いているように、盛沢山です。
(ところで、解説で「タラントとその相棒であるポンズ博士」と書いてあるのですが、ロードとポンズ博士の間違いではなかろうかと思います)

ただ、今回もトリックはちょっと問題あり、でしたね。
当時のアメリカの事情が(こちらには)わからないから、というのも理由のひとつかとは思うのですが、294ページからの解決シーンでもちょっとピンとこない。伏線として書かれたとおぼしき部分(231ページ~)を読んでもよくわからない......これに関しては大胆な示唆となるダイイングメッセージが残されているので感心するところだと思うのですが、正直感心できなくて困ってしまいました。もったいない。リアルタイムでアメリカに住んでいたら、感心できたのだろうな、と思えます。

ほかのトリックも、まず平凡というか、さほど思い切ったものはないのですが、全体を通してみると、引用した森英俊の解説にもあるように、ミステリファンをくすぐる趣向盛沢山で、かつ、細かいけれども細かい点でいろいろと考えられていることがわかるようになっていまして、満足できました。

最後に、前作「いい加減な遺骸」の日本語がとてもぎこちなくて、読みにくかったことを指摘しましたが、訳者は変わっているものの本書「厚かましいアリバイ」も読みにくかったです。
「証拠は既知の情報から論理的な消去を重ねて出てくる。」(220ページ)
どういうことでしょう? なんとなくわかる気がするのですが、この部分、ロードとポンズ博士が意見を交わすとても興味深いところで、間違いなく明確、論理的に解釈できるはずなのに、消化不良に陥ってしまいました。

シリーズ最終作「間に合わせの埋葬」も楽しみです。




原題:Arrogant Alibi
作者:C Daly King
刊行:1938年
訳者:福森典子




nice!(26)  コメント(0) 
共通テーマ: