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たそがれの侵入者 [日本の作家 赤川次郎]


たそがれの侵入者 (フタバノベルズ)

たそがれの侵入者 (フタバノベルズ)

  • 作者: 赤川 次郎
  • 出版社/メーカー: 双葉社
  • 発売日: 2022/05/19
  • メディア: 新書

<カバー袖あらすじ>
ふたりの「あすか」の奇妙な出会いは人々の運命を少しずつ変えていく
裕福な暮らしをする野々山あすかと、窃盗をくりかえし裏社会で生きる久米明日香。あすかが友人と話している場所に偶然居合わせた久米は、高級老人ホーム「いこいの園」の存在を知る。侵入を企む久米だsったが、昔の仲間の不穏な動きや事件により、事態は思わぬ方向へ──
事件に次ぐ事件の裏で、家族愛や恋愛が絡み合う長編サスペンス。



9月に読んだ最後の本です。
赤川次郎のノンシリーズ長編です。
出る新刊がほぼシリーズものばかりという最近の赤川次郎には珍しいノンシリーズもの。
2020年2月に出た「恋ひとすじに」 (フタバノベルズ)(感想ページはこちら)以来ですね。

主人公格の二人の名前が同じ「あすか」。
富豪と泥棒という取り合わせ。
いかにも赤川次郎、という設定で、出だしからいかにも赤川次郎だなと思いながら読み進んでいったのですが、最近の赤川作品にはない、初期作を思わせる登場人物、展開に少々ぞくりとしました。

以前にも書いたことですが、最近の(といってももう20年近くになります)赤川次郎は、道徳的な主張が全面に出てくるようになっていて、ストーリー展開も似たり寄ったりで予想がつきやすく、喰い足りないものが多くなってきていました。
あまりにも広範に読者を獲得し、しかも若年層が多いということから、自らの作品の持つ影響力を考えて意識的にそういう選択をされているのだ、と思いますが、残念に思っていたところです。

ところがこの作品は、その殻が破られています。
いいではないですか。
初期の赤川次郎はこういうのもあったよな、とうれしくなってしまいました。
作中で描かれるのは、人として到底許されない、まさに唾棄すべき人物であり、行為なのですが、こういう赤川次郎ひさしぶりです。
この路線、支持したいですね。
シリーズものだとこういうのは難しくなってしまっているなら、どんどんノンシリーズを書いて欲しいです。
なにしろこちら、「招かれた女」 (中公文庫)推しの赤川次郎ファンですから。



タグ:赤川次郎
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花嫁、街道を行く [日本の作家 赤川次郎]


花嫁、街道を行く (ジョイ・ノベルス)

花嫁、街道を行く (ジョイ・ノベルス)

  • 作者: 赤川 次郎
  • 出版社/メーカー: 実業之日本社
  • 発売日: 2022/03/17
  • メディア: 新書

<カバー裏あらすじ>
花嫁をつけ狙うのは誰──
亜由美の恋の行方は?
ツアコンの久美子は、高屋医師とのデートのためホテルへ。そこへ怪しい男が現れ、高屋を必要とする患者がいると同行を求められる。大人しく従うが、その後、久美子だけが行方不明に。ひょんなことから探偵事務所を開くことになった亜由美の元へ、久美子の捜索依頼が舞い込んだ。手がかりを探し、たどりついたのは、ある大使館。事件は思わぬ方向へ展開し、舞台はロマンチック街道へ!
表題作のほか「あの夜の花嫁は、今」を収録。シリーズ第35弾。


2022年4月に読んだ最後の本です。
花嫁シリーズ35作目。
表題作と「あの夜の花嫁は、今」の2話収録。

本を手に取って、太いなと思いました。
分厚い本が増えていますので、このくらいの本はざらにあるのですが、赤川次郎にしては珍しい。だいたいこの花嫁シリーズも薄い本が多いですから。

表題作「花嫁、街道を行く」は、ロマンチック街道を舞台にして赤川次郎も筆が乗ったのでしょうか?
いろいろなシリーズに登場させておられますから、お好きなんでしょうね。だから、本も分厚く。
<R共和国>という架空の国が登場し、その13歳の王子が日本にいるという設定になっています。
政情不安定な国で、共和国なのに王子がいるという、いかにもなにか起こりそうな設定になっているところがミソでして、いつも通りのにぎやかなストーリーが展開します。

「あの夜の花嫁は、今」も通常より少し長い気がしましたね。
轢き逃げをしたと思しき新婚夫婦。運転していた夫は大手スーパーチェーンのオーナーの御曹司。
その車の傷に気づいたホテルのベルボーイ佑太(とその恋人)が騒動に巻き込まれる。
この御曹司とその父親の醜悪なことといったら赤川次郎の定番中の定番で、その通りに展開します。ここまでだとかえってリアリティがない気もしますが......
大変な目に遭うというのに、佑太が最後に陥る状況はちょっと赤川次郎もいじわるですね。
ところでこの作品、亜由美たちの影が薄い気がしております。登場シーンも少ない。
これだとシリーズ外の作品にした方がよかったのでは?


<蛇足1>
「だって今、そうおっしゃたじゃありませんか」
と、ウエイトレスがふくれっつらになって、
「一旦入力すると訂正するの面倒なんですよ」
「じゃ、いいわ、<ちらし寿司>で」(34ページ)
こんな会話デパートの食堂でありますか? まあアルバイトなんでしょうけれど。
続けて
「平日なので、あまり人はいなかったが、セール中ということで、大荷物を抱えている女性は何人か目についた。」
とあります。平日でも「あまり人はいな」いなどということはないのではないでしょうか? ましてやセール期間中に。

<蛇足2>
「だけど……私、探偵の免許なんてもってないのよ」(60ページ)
日本では探偵に免許は必要ありませんね。この部分は亜由美の知識不足でよいのですが、
「資格もないのに、<調査費>なんかもらったら、問題だろう」
と地の文が続くのは困りますね。日本では資格必要ありません。

<蛇足3>
「今まで色々な事件に係って来た経験から、亜由美は、
『常に最悪の状況を想定しておくべき』
という学びを得ていたのである。」(115ページ)
赤川次郎はきちんとした文章を書く小説家だと認識していたのですが、その赤川次郎をもってして「学びを得」たですか......


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泥棒は幻を見ない [日本の作家 赤川次郎]


泥棒は幻を見ない (トクマノベルズ)

泥棒は幻を見ない (トクマノベルズ)

  • 作者: 赤川次郎
  • 出版社/メーカー: 徳間書店
  • 発売日: 2021/11/27
  • メディア: 単行本

<カバー袖あらすじ>
子供を虐待し死なせた疑いでニュースを賑わせていた鎌田が路上で殺された。凶器は日本刀。太刀筋も只者ではない。一体、誰が鎌田を殺したのか。刑事の真弓と泥棒の淳一夫婦は、偶然〈夜のニュースワイド〉の敏腕プロデューサー・めぐみとファミレスで知り合い、辻斬り事件の真相を追い始める。事件を追ううちに、二十年の刑期を終え出所した男と繋がっていく――。殺人の罪で有罪になりながらも、動機を一切口にしなかった男の秘密とは。人気シリーズ「夫は泥棒、妻は刑事」第二十三弾!


2022年3月に読んだ11作目(12冊目)で、最後の本です。
「夫は泥棒、妻は刑事」シリーズ最新刊で、第23弾。
前作「泥棒は世界を救う」 (トクマノベルズ)(感想ページはこちら)のようにげんなりすることもなく、いつもの赤川次郎節をたっぷり楽しんだ......のは楽しんだのですが、この「泥棒は幻を見ない」 (トクマノベルズ)に出てくる登場人物もエピソードも、ことごとくが前に読んだものを彷彿とさせるものばかりで、びっくりしてしまいました。
ここまで既視感ばかりというのは珍しい。
著書が640冊近くにもなると似たような話、エピソードや登場人物はどうしても出てきてしまうものだとは思いますが......

とはいえ、新しい要素も盛り込まれていて、そこは注目ですね。
プロローグにも出てくる刀の扱いは、ちょっとおもしろいなと思いました。
一方で同じ刀について気になる点もありまして、少々ネタバレに近くなるのでぼかして書きますが、この刀の扱いが、この「夫は泥棒、妻は刑事」シリーズにふさわしいものだったのかどうか。
赤川次郎だったらもっと別のシリーズの方がふさわしいような気配が漂っているのが難点かと思います。



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狐色のマフラー:杉原爽香<48歳の秋> [日本の作家 赤川次郎]


狐色のマフラー (光文社文庫)

狐色のマフラー (光文社文庫)

  • 作者: 赤川次郎
  • 出版社/メーカー: 光文社
  • 発売日: 2021/09/14
  • メディア: 文庫

<カバー裏あらすじ>
爽香は、勤務する〈G興産〉に密かに吸収合併話が進行していることを知る。それには社長・田端将夫の秘書で愛人と噂される朝倉有希が関わっており、何かと目障りな爽香を陥れようとしているらしい。一方、爽香の裸体画を目玉展示とする〈リン・山崎展〉が計画されている〈NK美術館〉は、幽霊騒動に揺れていた……。登場人物が読者と共に年齢を重ねる大人気シリーズ!


シリーズも第34弾で、爽香は48歳。
2021年9月に刊行されましたので、シリーズにようやく読むのが追いつきました。

毎度のことですが、今回も爽香には次から次へと事件が持ち込まれ、それぞれにぎやかに様々なシリーズ登場人物を巻き込みながら、収斂させていきます。
そのうえ、自社の合併話まで。
なんですが、この合併話がいただけません。リアリティがかけらも感じられない。
だいたい社長の田端って、ここまでダメダメな人物設定でしたでしょうか?
赤川次郎って、もともと取材をされるタイプではない、と本人も以前おっしゃっていましたし、経済的な話は苦手なのではないでしょうか。
このあたりはほかのエピソードにも明らかでして、たとえば爽香が勤める<G興産>の創業五十周年の記念事業として爽香が企画したという、若手の海外研修。
「爽香が考えたのが、二十代の若手社員をが海外研修に送り出すことだった。
 もちろん、ひと月やふた月では意味がない。少なくとも一年、それもアメリカやドイツなどのビジネス先進国ではなく、中東やアフリカ、東南アジアなどの国で、どんなビジネスが可能か、そしてそれらの国々が本当に必要としているものは何か。
 <G興産>が今、世界に対して貢献できることは何なのか。肌で感じて来てほしいと思ったのだ。」(51ページ)
気宇壮大で結構ですが、<G興産>の企業体力、費用対効果、そしてリスク対策、いずれの面からも非現実的すぎて苦笑するしかありません。

この点は目をつぶるとして、その他の面はいつもながらの大騒動を楽しめます。
なにより爽香には、裏社会も味方についているわけですから、怖いものなし。ずんずんトラブルを解決していけます。

金田夏子という歌い手が登場し活躍し、シリーズの今後を賑わしてくれるのでは、と期待したのですが、どうやら今作限りのようですね。ちょっと残念。
「楽譜って、こんなことにも役に立つんですね」(257ページ)
というセリフのシーンは、思わず笑ってしまうくらいだったのに。

それにしても、前作「焦茶色のナイトガウン」 (光文社文庫)(感想ページはこちら)の最後で不穏だったある登場人物、どうなったのでしょうか?
気になっています。



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天使に賭けた命 天使と悪魔 10 [日本の作家 赤川次郎]


天使に賭けた命 天使と悪魔 10

天使に賭けた命 天使と悪魔 10

  • 作者: 赤川 次郎
  • 出版社/メーカー: KADOKAWA
  • 発売日: 2021/08/30
  • メディア: 単行本



「ヴィーナスは天使にあらず」 (角川文庫)(感想ページはこちら)に続くシリーズ第10弾。
前作同様単行本で出版されました。
短編集で、裏側の帯に各話の簡単なあらすじがついています。

マリが働き始めた旅館で金塊をめぐる怪しい動きが 「湖の底の金塊」
「小箱」を届けるだけの楽なお仕事のはずが怪しい男に追いかけられて。 「危険を運ぶ道」
父親を捜す少女を手伝うことになったマリとポチ。調査中に死体を発見 「絆はどこに行った」
病院の検査結果を待つマリとポチ。誘拐事件に、拳銃発砲…行く先々で事件に遭遇 「5時から7時までのマリとポチ」
一組の男女の身分差の恋に巻き込まれてしまい―― 「華やかな死神」
マリがなりゆきで参加したオーディションで、殺人未遂事件が発生 「天使に賭けた命」

このシリーズ、なんだかんだ言っても、窮地に陥ったヒロインが、ちゃんと人の善意に支えられて助かる、という枠組みが多いのですが、この「天使に賭けた命 天使と悪魔 10」では、天使だと言ってしまうマリに悪者が呆れてしまって助かっちゃう、というパターンが多かった気がします。
人の善意が薄れてしまったのでしょうか?
いつもながらの、「ゆるさ」「ぬるさ」をもっと味わいたいのですが。

今回面白いな、と思ったのは、第三話「絆はどこに行った」で、マリとポチがしっかりした仕事と住むところを確保していること!
さらっと説明されているのですが、銀座の画廊を経営する画商久保田良子を助けたことから、仕事と済むところを世話してもらった、というのです。
どうしてそのエピソードを物語にしなかったのでしょうね?
そして、次の第四話「5時から7時までのマリとポチ」のエンディングでは、
「潮どきだね。私たち、甘えすぎてたよ」
「あんなに居心地のいい所で、何不自由なく暮してたら、研修にならない」
といって、仕事も住まいも手放してしまいます。
うーん、なんだったんだろ? 



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夜ごとの才女 怪異名所巡り 11 [日本の作家 赤川次郎]


夜ごとの才女 怪異名所巡り 11

夜ごとの才女 怪異名所巡り 11

  • 作者: 赤川 次郎
  • 出版社/メーカー: 集英社
  • 発売日: 2021/08/05
  • メディア: 新書

<帯紹介文>
夢の中で毎晩、人を殺している!?
人間だけじゃない。幽霊にだって深い事情があるのです。
霊感バスガイド・町田藍が、怪奇現象の裏に隠された真実を明らかにする!

共演中の有名女優とベテラン俳優がともに「誰か」を殺す夢を見ている。撮影終盤に差し掛かり、その夢が誘う先は――表題作「夜ごとの才女」ほか、全6話。〈幽霊と話せる〉名物バスガイドが、悩める人々と幽霊たちの心の霧を晴らす!


2021年12月に読んだ10冊目の本で、2021年最後の本です。

シリーズ第11巻の本書には
「あの夜は帰ってこない」
「劇場の幽霊」
「簡潔な人生」
「悪魔は二度微笑む」
「夜ごとの才女」
「命ある限り」
の6編を収録。

シリーズもどんどん巻を重ねて来て、すずめバスの霊感バスガイド・町田藍もずいぶん有名になってきたようで、”会う”ために藍を担ぎ出す、というパターンの話が増えてきています。
その現場へバスツアーを仕立てて行くというのですから、物好きな客がいるものですね(笑)。

「劇場の幽霊」に
<すずめバス>の<劇場の幽霊ツアー>には、いつもの常連を中心に、十八人が参加していた。(78ページ)
という記述がありますが、18名程度の参加でバスツアーって黒字になるんでしょうか? 心配になります。

シリーズ的には、最後の「命ある限り」が、藍のニセモノが表れて藍の命が危険にさらされる大事件ですが、堂々とした安定のシリーズですね。

個人的には「劇場の幽霊」が気になっています。
幽霊話、怪異話自体は普通なのですが、この話、額縁形式を採用しているのです。
物語の外枠に、<劇場の幽霊>って確かにいる、と語り合う男女が描かれています。
この男女が誰かわからないし(予想はしているのですが確信できていません)、この外枠の効果、狙いがわからないのです。不思議です。



<蛇足>
「命ある限り」の中で、最後の望みをかけた銀行の幹部を接待し、冷たくあしらわれてしまう保険会社の社長が出てくるのですが、その接待の場の最後の銀行幹部のセリフが「じゃ、ごくろうさん」なのです。(241ページ)
そういう品のない銀行だった、ということかもしれませんが、接待の場で相手に「ごくろうさん」という人物というのは理解を超えていますね......





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合唱組曲・吸血鬼のうた [日本の作家 赤川次郎]


合唱組曲・吸血鬼のうた (集英社オレンジ文庫)

合唱組曲・吸血鬼のうた (集英社オレンジ文庫)

  • 出版社/メーカー: 集英社
  • 発売日: 2021/07/15
  • メディア: 文庫

<カバー裏あらすじ>
合唱コンサートの帰り、見知らぬ女性に『リュドミラ様』と呼び掛けられたエリカたち。エリカの友人・関谷しおりと、『リュドミラ』が瓜ふたつだというのだが……? しおりとリュドミラ、日本とトランシルヴァニアを繋げる、幻の秘宝〈マキシミリアン大公の十字架〉の謎を追って、クロロック父娘は東欧に飛ぶ! 大人気ロングランシリーズ、待望の最新作!


2021年11月に読んだ最後の本です。
「吸血鬼はお年ごろ」シリーズ 第39弾。

「吸血鬼と悪魔の休日」
「吸血鬼の道行日記」
「合唱組曲・吸血鬼のうた」
の3編収録です。

「吸血鬼と悪魔の休日」は20年後に再会を約した高校生たちの、その20年後を描いています。
舞台となるのは東京にあるMデパートなのですが、
「明日日曜日の午後二時にMデパート一階のライオン像の前で待ち合わせることに決まった。」(23ページ)
という記述があり、あからさまに三越ですよね。
「Mデパート? ――まあ、二十年たっても、なくなりゃしないだろうな」(13ページ)
などというセリフもあり、三越だとすると以前それこそ潰れそうになりましたので、実名を出すのが憚られたのでしょうか(笑)。
この作品でもやはり警察の活動がでたらめで興ざめです。
(最近の)赤川次郎の作品では、一般的な犯罪者側がよい人で、捜査する警察が腐っていることが多すぎですね......

「吸血鬼の道行日記」を「ミステリのあるテーマに挑んだ意欲作」というのはいくらなんでも買いかぶりすぎでしょうね。
ただ、勢いに任せて書き飛ばしたような(失礼)作品であっても、こういうポイントが忍ばせてあると印象はずいぶんよくなりますね。

「合唱組曲・吸血鬼のうた」の主役は、トランシルヴァニア地方の血を引くピアニストです。
赤川次郎ではずいぶんこの種の話を読んだ気がしますが......まあ、楽しく読めたからいいでしょう。
しかし、クロロック商会、簡単に海外出張が組めて、さらにエリカの分まで経費負担できるとは、なんと自由で儲かっている会社なのですね。
クロロックが社長だとブラック企業ということはなさそうですし、いい会社みたい。


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三毛猫ホームズの懸賞金 [日本の作家 赤川次郎]


三毛猫ホームズの懸賞金 (カッパ・ノベルス)

三毛猫ホームズの懸賞金 (カッパ・ノベルス)

  • 作者: 赤川 次郎
  • 出版社/メーカー: 光文社
  • 発売日: 2021/06/22
  • メディア: 新書

<カバー裏あらすじ>
卑劣な無差別殺人事件に潜む現代社会の闇!?
新たな難事件に片山兄妹&ホームズが挑む!
会社員の男が通勤途中のバスの中で殺された。男は死の直前、「俺は狙われてる」と言い残していた。一方、売れない歌手・百瀬太朗が出演するパーティーで、人気歌手の辻村涼が毒殺される。パーティーの直前、百瀬のマネージャーの元に「百瀬が歌に手を抜いたら殺害する」という脅迫メールが届いていたという。片山刑事と妹・晴美、そしてホームズたちは事件を追うことに。一見関わりがないように思える事件を繋ぐものとは……? 謎が謎を呼ぶ怒濤のサスペンス・ミステリー! 大人気シリーズ第54弾!


三毛猫ホームズシリーズも54冊目ですか...すごいですねぇ。
とこのシリーズ恒例の書き出しで始めました。
2021年10月に読んだ13冊目の本です。

前作「三毛猫ホームズの裁きの日」 (光文社文庫)(感想ページはこちら)の感想で書いた、片山刑事の設定の件は特段注意が払われている気配もなく、普通にもとに戻っています。

帯に
「ゲーム感覚の無差別殺傷事件と芸能人を狙った犯罪をつなぐ謎とは」
と書かれているのですが、ちょっと筋書きに無理があるかな、と。

「でも、普通のサラリーマンが、いくら50万円もらえるとしても、人を殺したりしないでしょ」
「それはそうだ。しかし、ゲーム感覚でうまくやれるか試してみようって奴ならいるかもしれない」
「そうね。──ネットでフェイクニュースを信じて人を殺しちゃったりする世の中だもんね」(100ページ)
という箇所がありますが、ちょっとこの感覚はわからないですね。
こういう点をさらっと「現代社会のひずみから生まれた悪意の連鎖」と言われましても......
これをプロットの中心に据えるのであれば、このあたりを説得力をもって描き出してもらわないといけないと思うのですが、特に深入りすることもなく、これを前提に物語が展開されていきます。
提示される犯人像がこの趣旨に沿って設定されているので、説明がないことのサポートになっているのだということなのかもしれませんが、肝心なところをごまかしてしまった印象が拭えません。

赤川次郎も執筆のペースはずいぶん落ち着いてきましたし、いちどじっくり腰を据えた作品を待ちたいところです。


<蛇足1>
「矢崎さんのケータイは?」
「返したはずだ。しかし、内容はチェックしていなかっただろうな」(37ページ)
殺人事件の被害者の携帯電話があったのに、警察が内容をチェックしないなんて、ありますか?

<蛇足2>
「あそこのモーニングのワッフル、おいしいよ”」
「そういうことは、高校生ぐらいが詳しいわね」
 と、小夜が笑って言った。
 ともかく、その店に入って、片山はモーニングのトーストを食べた。(91ページ)
ここの「ともかく」は、なんでしょう? 雑な文章を書かれたものです。





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キネマの天使 メロドラマの日 [日本の作家 赤川次郎]


キネマの天使 メロドラマの日

キネマの天使 メロドラマの日

  • 作者: 赤川 次郎
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2021/05/20
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)

<カバー裏帯あらすじ>
映画を愛する若手スクリプター・東風亜矢子(こちあやこ)。スクリプターとは、撮影現場で役者の動きや衣装など、映像に写るすべてを記録・管理する仕事だ。しかし、彼女の仕事はそれだけではない! 監督のあらゆる我が儘に翻弄されながら、スタントマンやヒロインの代役をこなし、さらに、殺人事件の謎解きまで――!? それでも亜矢子が頑張るのは、やっぱり映画が大好きだから! 舞い込む事件を解決し、クランクアップのその日を迎えられるのか!?


単行本で、2021年10月に読んだ最初の本です。
「キネマの天使 レンズの奥の殺人者」 (講談社文庫)(感想ページはこちら)に続くシリーズ第2弾。

赤川次郎お得意の映画の世界・芸能界を舞台に多くの人物が入り乱れるストーリーを手際よくまとめていく作品で、楽しく読めた、のですが、1作目感想で書いたことが現実となり、新シリーズとして打ち出す必然性があまり感じられません。

まあ、そんなことは考えず、赤川次郎の自在な筆さばきを楽しめばよいのですが......




<蛇足1>
「暴行未遂ってことがあるのでね」
と言ったのは、倉田刑事だった。(244ページ)
素人のセリフとしてならこれで構わないと思うのですが、刑事が発言者だとすると困りますね。
暴行未遂......

<蛇足2>
「要するに、相沢は空腹のあまりに目を回したのだった……」(282ページ)
小説の地の文で「要するに」が出てくるのは珍しいですね。





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鼠、十手を預かる [日本の作家 赤川次郎]


鼠、十手を預かる

鼠、十手を預かる

  • 出版社/メーカー: KADOKAWA
  • 発売日: 2021/01/29
  • メディア: 単行本

<帯カバー裏側あらすじ>
弱きを助け強きから「盗む」
大泥棒の今宵の獲物は
壱、凍えるような雨の朝、古びた橋の上にたたずむ娘。彼女の待ち人とは。「鼠、無名橋の朝に待つ」
弐、捕物に遭遇した治朗吉。成り行きで負傷した目明しの代りを務めることに「鼠、十手を預かる」
参、小袖が浪人から助けた女。「いずれ斬られて死ぬ身」と語るその理由は。「鼠、女にかげを見る」
肆、千草が殺しの疑いでお縄に。隠居武士の妾宅で起きた事件を解き明かす。「鼠、隠居を願う」
伍、江戸中を恐怖に陥れた、人をかみ殺す赤い眼の狼。狼を操る女の目的は。「鼠、獣の眼を見る」
陸、奉公先で漆の箱に入った書状を託された女。運び出すのは命がけで――「鼠、恋心を運ぶ」

シリーズ第12弾で、単行本です。

これまでいい人度がどんどんアップしてきた鼠がついに目明しに! というキャッチ―な話です。
火傷でしばらくで歩けなくなった定吉のかわりに十手をしばらく預かる、という設定ですが、十手を持ったところで次郎吉は次郎吉、いつもと変わりません。
この変わらないところを描きたかったのかもしれませんね。
最後には
「十手のために働くのも悪くない?」
と聞かれて「こんな物、重たくってしょうがねえ。千両箱の方がよほど軽いぜ!」
と小袖にこぼす始末です。
次の「鼠、女にかげを見る」ではいつもの、十手を持たない次郎吉に戻っています。
せっかくだから、一巻まるまま、この趣向で通してもらったらおもしろかったのに。
古来、盗賊がピュアに探偵役を務めるのもミステリでは王道なのですから。






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