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霧にたたずむ花嫁 [日本の作家 赤川次郎]


霧にたたずむ花嫁 (ジョイ・ノベルス)

霧にたたずむ花嫁 (ジョイ・ノベルス)

  • 作者: 赤川 次郎
  • 出版社/メーカー: 実業之日本社
  • 発売日: 2021/01/29
  • メディア: 新書

<カバー裏あらすじ>
花嫁をつけ狙うのは誰──
亜由美の恋の行方は?
霧の中、家路を辿っていた仲間朋代は不穏な気配を感じ、逃げようとする。もうダメだと思った瞬間、偶然いあわせた亜由美の恋人、谷山によって助けられる。これをきっかけに朋代と谷山は急接近し、なんと結婚することに。失恋した亜由美は傷を癒そうと旅に出るが、そこでもトラブルに巻き込まれ──。
花嫁シリーズ第34弾。表題作のほか「カリスマ花嫁の誇り」収録。


2021年8月に読んだ最後の本です。
花嫁シリーズ34作目。
「カリスマ花嫁の誇り」と表題作「霧にたたずむ花嫁」の2話収録。

「カリスマ花嫁の誇り」は、島を所有する金持ちの館で起こる事件ですが、いわゆるお屋敷もの風展開にはならず(そんな枚数もありませんし)、当主の誕生パーティにいろいろな面々が集って事件が起こるという、いつもの赤川次郎作品です。
ただ、いつもより、金持ち連中にそそぐ作者のまなざしは柔らかいような。

「霧にたたずむ花嫁」は、亜由美を捨てて谷山先生が結婚してしまうという、シリーズにとっての超一大事発生です。
このところ出てこないなぁと思っていたら、こんな登場の仕方をするとは、谷山~。
もちろん、そんな結婚話は一筋縄ではいかないのですが。
今後どうなっちゃうのでしょうか?


<蛇足1>
「犬の名探偵か? 猫なら聞いたことがあるけどな。」(30ページ)
言わずと知れた、三毛猫ホームズを念頭においていますね。
ドン・ファンが聞きつけて、気を悪くしないといいのですが(笑)。
あと、迷犬ルパン(by 辻真先)もお忘れなく、ですよ。


<蛇足2>
「まだ熱くて、やっと持てるくらいのクロワッサンを一口食べて、生田綾子は声を上げた。」(144ページ)
「焼きたてのクロワッサンのおいしさが分るようなら、もう死ぬ気はなくなったのだろう。」(145ページ)
生きるという実感はこんなところから始まるのかもしれませんね。
しかし、やっと持てるくらい熱いクロワッサンがホテルの朝食で出るとは......

<蛇足3>
「でも、事情が事情ですもの、警察だって分ってくれますよ。」(183ページ)
赤川次郎には珍しく、物わかりのよい警察が引き合いに出されています。


古い記事をベースに書いていたので、元の記事が残っていました。
削除しました。失礼しました。



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焦茶色のナイトガウン:杉原爽香<47歳の冬> [日本の作家 赤川次郎]


焦茶色のナイトガウン 杉原爽香<47歳の冬> (光文社文庫)

焦茶色のナイトガウン 杉原爽香<47歳の冬> (光文社文庫)

  • 作者: 赤川 次郎
  • 出版社/メーカー: 光文社
  • 発売日: 2020/09/09
  • メディア: 文庫

<カバー裏あらすじ>
ある日、爽香の元に高校の同級生・井田の娘から一本の電話が。なんと、妻殺しの容疑で井田が逮捕されたという。娘いわく、容疑を否認しているそうだが……。そして爽香は、仕事帰りに火事の現場に遭遇。のちに現場で殺人事件が発生していたと判明。被害者は国会議員の息子というが、怪しい事実が隠されているようで――!? 登場人物が読者と共に年齢を重ねる大人気シリーズ!


シリーズも第33弾です。
手違いから読めずにいた「灰色のパラダイス: 杉原爽香〈45歳の冬〉」(感想ページはこちら)を読むことができたので、これで普通のペースで読むことができます。

この「焦茶色のナイトガウン」 (光文社文庫)は、帯に
「瞳が危険な初恋--」
とありまして、あらすじには書いてありませんが、爽香の姪:瞳が活躍? します。

爽香は相変わらず次々と事件に巻き込まれていき(飛び込んでいき?)、快調にいつもながらの安定した仕上がりとなっているのですが、やはり興味の焦点は瞳ですよね。
ちょっと無理に作ったようなお話のようにも感じてしまいましたが、きちんと決着をつけるところはさすがです。
興味深いのは、瞳の状況というのは爽香が同じくらいの年ごろでも十分あり得たことでありながら、こうやって作品に取り上げられることは少なかっただろうな、と思えたことです。
33年も経てば、時代も少しずつ変わっていくということなのでしょう。
(変わったのは、時代ではなく、こちらの意識なのかもしれませんが)

気になったのはある登場人物の行く末。
シリーズを通して要所要所(?)で出てきていた人物で、非常に赤川次郎らしい設定の人物です。
ある意味、爽香の守護天使。
物騒な守護天使ですが、今回もここぞというところで登場します。
なんですが、今回は爽香たちを救うために無理をしてしまったので、ちょっと心配です。
本人にも(危険な橋を渡ったという)自覚はあるようなのですが。

次作「狐色のマフラー:杉原爽香 四十八歳の秋」 (光文社文庫)では、どうなっているでしょうか??

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幽霊終着駅 [日本の作家 赤川次郎]


幽霊終着駅

幽霊終着駅

  • 作者: 次郎, 赤川
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2020/08/28
  • メディア: 新書

<カバー袖あらすじ>
「ここへ来れば、父に会えるかと思って……」
と、人気のなくなったホームを、綾子は見渡した。
「──幽霊でもいいわ。出てきてくれれば」

郊外の駅で、深夜に首だけの死体が発見された。連絡を受けた宇野と夕子が駆けつけると、持ち主を名乗る男が現れる。そこには、ある親子の悲しい過去が隠されていたのだ。そんな中、生首が忽然と消えてしまい──。大好評〈幽霊〉シリーズ第28弾。



この「幽霊終着駅」には
「袋小路を照らせ」
「雪女の従妹」
「正方形の裏切り」
「叔母捨て山」
「真面目人間、ここにあり」
「ゆく年くる年」
「幽霊終着駅」
の7話が収録されています。

赤川次郎の最近の作品にミステリとしての結構を求めるのは間違っているというのは重々理解していますが、それでもさすがに幽霊シリーズはもうすこし配慮してくれてもいいんじゃないか、と思ってしまいますね。
「雪女の従妹」の謎解きは相当無茶苦茶ですし、「真面目人間、ここにあり」の動機は想像を超えています。
それを納得させるだけのものがあるかというと、それもない......

前回、「幽霊解放区」(感想ページはこちら)に書いたことの繰り返しになりますが、幽霊シリーズは、デビュー作でもありますし、今一度、デビューのころの志に立ち返って、大切に書いていってほしいなぁ、と思いました。



<蛇足1>
「あの子は区立の中学に通っています」
と、貫井は、むしろ誇らしげに、「常に学年トップでいるのがたのしいようで」
「私には想像もつかないですね」
と、私は言った。
「あの子は東大へ行くことにしているんです」
と、咲子は言った。「ですから、公立校に通っている方が」(35ページ)
この部分、意味がわかりません。区立、公立校と、東大へ行くこととのつながりが理解できませんでした。
私立にいくと東大に行きにくい、と、そういうことなのでしょうか? 不思議です。

<蛇足2>
「真剣にものを考えられない子が増えているよね。いつもジョークにして笑ってたら、世の中をうまく渡っていけると思ってる子が……」
 真面目になることを「ダサい」と嫌って、何でも笑ってごまかそうとする。(171ページ)
ここで言われているような風潮は、嘆かわしいことだとは思いますが、最近の若い人はむしろ違うのではないでしょうか? ここで言われているのは、たとえばバブルの頃の若者像ではないかと思います。







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吸血鬼と呪いの森 [日本の作家 赤川次郎]


吸血鬼と呪いの森 (集英社オレンジ文庫)

吸血鬼と呪いの森 (集英社オレンジ文庫)

  • 出版社/メーカー: 集英社
  • 発売日: 2020/07/17
  • メディア: 文庫

<カバー裏あらすじ>
両親とともに森の中に建つ新居に引っ越してきた、中学生のめぐみ。喜びもつかの間、新居にある違和感を覚えるようになっていた。昔、家庭教師をしてくれていたエリカに不安な心中を告白するめぐみ……。幸せの象徴だったはずの新居に隠された秘密とは――? 正義の吸血鬼父娘が、どんな相手にも立ち向かう! 吸血鬼はお年ごろシリーズ、最新作!


「吸血鬼はお年ごろ」シリーズ 第38弾。オレンジ文庫第6弾です。あいかわらずうすーい本です。
と、このシリーズへの感想について恒例の出だしとなります。毎年同じことを書けます(笑)。

「吸血鬼の渡る島」
「吸血鬼と呪いの森」
「吸血鬼と失われた記憶」
の3編収録です。

最近の赤川次郎はトリックらしいトリックを使わないのですが、「吸血鬼の渡る島」には、珍妙なトリックが出てきます。びっくり。
もうバカミスの境地ですね。

「吸血鬼と呪いの森」は着地がかなりでたらめなのでびっくり。
いや、これ、事態の解決になってますか?
かといって、ほかにいい着地は思いつかないんですけどね。

「吸血鬼と失われた記憶」は、例によって、警察のひどさが不自然に強調されていて、ちょっとげんなり。
いくらなんでも、邪魔な証拠の薬莢を、机の下の屑カゴには捨てないでしょう......マンガじゃあるまいし(というと、マンガに失礼ですね)
扱われている事件も、相当空想の度合いが強いですし。いくら超常現象を扱う、吸血鬼はお年ごろシリーズとはいえ......




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三世代探偵団 生命の旗がはためくとき [日本の作家 赤川次郎]


三世代探偵団 生命の旗がはためくとき

三世代探偵団 生命の旗がはためくとき

  • 作者: 赤川 次郎
  • 出版社/メーカー: KADOKAWA
  • 発売日: 2020/07/29
  • メディア: 単行本

<帯あらすじ>
「また殺人?」
「仕方ないよ。うちはそういう家なんだもの」
天才画家の祖母、マイペースな主婦の母と暮らす女子高生・天本有里。有里の同級生が殺人事件に遭遇したことをきっかけに、三世代は裏社会の抗争に巻き込まれていく。二つの裏組織が対立するなか、ボスの子供同士が恋に落ちて武力闘争の危機が訪れる。闘争阻止のカギを握るのは三世代!?コーヒー香る天本家の居間で、作戦会議が開かれる―。


単行本です。
「三世代探偵団 次の扉に棲む死神」(感想ページはこちら
「三世代探偵団 枯れた花のワルツ」(感想ページはこちら
に続くシリーズ第3弾です。
「三世代探偵団 枯れた花のワルツ」が出たのが2020年1月で、この「三世代探偵団 生命の旗がはためくとき」が2020年7月ですから、かなりハイペースで書かれていることになります。
このシリーズを書くの、楽しいのでしょうね、きっと。
もう、このシリーズならではの意義とか特長とかは考えずに、物語を楽しむことにします(笑)。

「好きで係わってるわけじゃないよ。事件の方から寄って来るんだもん」
「ミステリー小説の探偵みたいなこと言わないで」(45ページ)
と母娘で会話を交わしていますが、まあ、見事に飛び込んでいくこと(笑)。赤川次郎らしいですね。
今回は、裏社会の抗争に巻き込まれるという......

赤川次郎の作品は、ユーモアミステリとしてくくられることが多いですが、意外と後味の悪い作品も多いんですよね。
この「三世代探偵団 生命の旗がはためくとき」も、その例の一つといえるのではないでしょうか?
その後味の悪さを救いというか、緩和するのが、シリーズキャラクターたち、ということになるのでしょう。

ところで、「三世代探偵団 枯れた花のワルツ」に出てきた加賀和人はどうしたんだ!?
有里の恋人役じゃなかったのですか? 彼の活躍に期待していたのですが。


<蛇足>
「女ばかりの三世代家族。互いの自由は尊重しながら、隠しごとはしない、という方針である。
 人生経験豊富な祖母、幸代が、やはり適確な判断を下す場合が多いというのも事実なのだ。」(45ページ)
小中学校の国語の授業みたいな指摘で恐縮ですが、やはり的確と書いてもらいたいです。
特に赤川次郎は小中学生の読者も多いと想定されますから。





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泥棒は世界を救う [日本の作家 赤川次郎]


泥棒は世界を救う (トクマノベルズ)

泥棒は世界を救う (トクマノベルズ)

  • 作者: 赤川次郎
  • 出版社/メーカー: 徳間書店
  • 発売日: 2020/05/15
  • メディア: 新書

<カバー袖あらすじ>
「孫を助けてくれ!」泥棒の下見をしていた今野淳一のもとに、突然老人が現れた。その老人とは、かつての同業者・草野広吉だった。高校生の孫娘が来日中のN国大統領を狙撃した犯人として捕まってしまったのだという。妻であり刑事の真弓に確かめてもらうと、祖父が元泥棒で前科持ちということで、警察は充分な捜査をせず孫娘を逮捕したらしい。調べ始めた淳一と真弓は、裏社会に渦巻く黒い思惑に気付いて――!? 人気シリーズ「夫は泥棒、妻は刑事」最新刊は、政治・マスコミの悪を炙り出す!


突然私事ですが、今般日本へ帰れ、ということで、日本に帰ってきております。
ロンドンはほぼ3年、でした。
現在、コロナ対策ということで、政府指定の宿泊施設で絶賛隔離中です。
順調にいけば3日間で出られるので、そうなったらこの関連の記事も書いてみようと思います。
では、いつも通り。

「夫は泥棒、妻は刑事」シリーズ最新刊で、第22弾。
引用したあらすじにもあるのですが、「充分な捜査をせず孫娘を逮捕」にすっかり興ざめです。
赤川次郎に警察捜査の正確さを求める人はいないと思いますが、この小説の警察捜査のひどさは桁外れで、いくらなんでもなー、と思ってしまいます。
銃を使った事件で、硝煙反応も調べていないなんて、ありうると思いますか? しかもこの場合の容疑者は女子高生で、外国の大統領を撃つ動機などかけらもなさそうなのに。

正義のため仕方ない、ということかも、というのもあり得ますが、真弓もホテルの監視カメラの映像を、自分のパソコンに送ってしまいます。
この後の展開も、まあ、次から次へと......

「政治・マスコミの悪を炙り出す」ことに夢中になるあまり?、常識的な物事があまりにもおろそかになっているように思います。
N国のマドラス大統領という人物がおもしろい設定になっているのが、物語の救いですが......

それにしても淳一は泥棒でしょうに、泥棒業界?のみならず、”裏社会” にすごく顔がきくんですね。




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恋ひとすじに [日本の作家 赤川次郎]


恋ひとすじに (フタバノベルズ)

恋ひとすじに (フタバノベルズ)

  • 作者: 赤川 次郎
  • 出版社/メーカー: 双葉社
  • 発売日: 2020/02/19
  • メディア: 新書

<カバー袖あらすじ>
文具メーカー〈ABカルチャー〉に勤める奈々子は、責任感はあるが惚れっぽい性格が玉に瑕。商社の取締役を名乗る青年・湯川と出会った日から、平凡な日常が変わり始める。突然妹が上京してきたかと思えば、同僚が殺されてしまい、奈々子自身も危険にさらされる。真相に近付こうとするたび、ちらつくのはある男の影だった……。


1月に読んだ最後の本です。
赤川次郎のノンシリーズ長編です。
そういえば、最近赤川次郎はシリーズものばかりかな、と思ってチェックしてみたら、2017年7月に出た「7番街の殺人」 (新潮文庫)(感想は書けていません)以来なのですね。
間に、「キネマの天使 レンズの奥の殺人者」 (講談社文庫)(感想ページはこちら)が2017年12月に出ていますが、これはシリーズになるという触れ込みでしたので、続刊は出ていませんが、外して考えています。
赤川次郎は出版点数が近年大きく減っているので、シリーズものの比重が上がっているのですが、これほどノンシリーズが出ていないとは思っていませんでした。

帯に
「仕事と私…と殺人事件ーーどっちが大切!?」
と書いてありますが、これ、主人公奈々子が恋人に対して発する発言ではなくて、奈々子が自らに問いかける質問であるように思えるところが、いかにも赤川次郎ですね。

殺し屋が登場したり、悪役があまりにもあからさまだったり、とミステリとして上首尾とは到底いえませんが、いろんなストーリや登場人物が絡み合って、ラストになだれ込むところは、さすが赤川次郎。

ノンシリーズものも、こうやって時折楽しみたいですね。



タグ:赤川次郎
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牡丹色のウエストポーチ: 杉原爽香〈44歳の春〉 [日本の作家 赤川次郎]


牡丹色のウエストポーチ: 杉原爽香〈44歳の春〉 (光文社文庫)

牡丹色のウエストポーチ: 杉原爽香〈44歳の春〉 (光文社文庫)

  • 作者: 次郎, 赤川
  • 出版社/メーカー: 光文社
  • 発売日: 2017/09/08
  • メディア: 文庫

<カバー裏あらすじ>
「杉原爽香の娘を殺して」夜明け前の公園で交わされた契約が、危険な事件の連鎖を誘い込む。不穏な思惑などつゆ知らず、学校行事の一環で山間のキャンプ地に赴くこととなった爽香と娘の珠実。楽しいはずの旅行先で、殺意は着実に迫りつつあった……。新たな事件、移ろう人間関係、それぞれの成長。登場人物が読者とともに年齢を重ねる大人気シリーズ第三十弾!


このシリーズは先に、
「灰色のパラダイス: 杉原爽香〈45歳の冬〉」 (光文社文庫)(感想ページはこちら
「黄緑のネームプレート: 杉原爽香〈46歳の秋〉」 (光文社文庫)(感想ページはこちら
を読んでしまいましたが、経緯は「灰色のパラダイス: 杉原爽香〈45歳の冬〉」感想に書いた通りで、「牡丹色のウエストポーチ: 杉原爽香〈44歳の春〉」を読んでいなかったのに、間違えて日本に置いて来てしまったからです。
今回の12月の一時帰国で発掘してイギリスに持ってきました。本当は一時帰国中に日本で読んでしまいたかったのですが......

今回は、爽香の娘:珠実の命が狙われるということで、余計な巨悪に挑んだりしないので(失礼)、すっきりした話に仕上がっていました。よかった。

また轢き逃げをしてしまう女性のエピソードもどう決着をつけるのだろうと轢き逃げ当初から思っていましたが、印象的なエンディングを用意しています。
赤川次郎らしい処理になっていまして、常套的といえば常套的なのですが、ちょっとほっとできます。

シリーズ第三十弾ということで、節目の作品でもあったので、いつもより赤川次郎も力が入っていたのかもしれませんね。
「牡丹色のウエストポーチ」というタイトルも、第1作の「若草色のポシェット」 (光文社文庫)をどことなく思わせます。ウエストポーチとポシェット、似ていますよね⁈


<蛇足>
「刑事に限らないが、男というもの、全般に『女の意見』をまともに取り上げない傾向がある。長年仕事をして来ての、爽香の実感だった。」(268ページ)
爽香が育ち成長してきた時代を映したような感慨ですね。
最近の若い人の間では、こういうことはかなり少なくなっているのでは、と期待します。




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三世代探偵団 枯れた花のワルツ [日本の作家 赤川次郎]


三世代探偵団 枯れた花のワルツ

三世代探偵団 枯れた花のワルツ

  • 作者: 赤川 次郎
  • 出版社/メーカー: KADOKAWA
  • 発売日: 2020/01/31
  • メディア: 単行本

<帯あらすじ>
個性爆発の三世代女子を、事件が放っておいてくれない。
天才画家の祖母、恋するマイペース主婦の母と暮らす女子高生・天本有里。祖母が壁画を手がけた病院で、有里は祖母と同世代の大女優・沢柳布子に出会う。布子が主演する映画の撮影を見学することになった有里だが、撮影は波瀾の連続。妻を殺した容疑で逮捕されたエキストラ、金の無心にくる昔の相手役。さらに新たな殺人事件がおきて……。


単行本です。
「三世代探偵団 次の扉に棲む死神」(感想ページはこちら
に続くシリーズ第2弾です。

シリーズ快調ではありますが、登場人物といい、起こる事件と言いいかにも赤川次郎という作品になっていまして、快調ではあるんですが、新たなシリーズを立ち上げた意義というのが今一つわかりません。
と、これでは、「三世代探偵団 次の扉に棲む死神」の感想と変わりませんね......

この作品では、老齢の女優、往年の名女優というべきでしょうか? が登場し、改めて映画に意欲を燃やすという設定がありまして、ちょっとアレンジが加えられていますが、爽香シリーズの栗崎英子がだぶって、だぶって......

シリーズ的には、有里の恋人候補でしょうか? 加賀和人の登場が気になりますね。
このあとの作品に出てくるのでしょうか??
このシリーズならでは特色というのは、この「三世代探偵団 枯れた花のワルツ」でも見出せませんでしたが、次作「三世代探偵団 生命の旗がはためくとき」がすでに刊行されていますので、そのあたりを念頭におきつつ、読み進めていきたいです。


<蛇足1>
「ムッとして、文乃は言った。」(36ページ)
なんとなく、「ムッとして」というのを小説の地の文で読むのは初めてのような気がします。

<蛇足2>
「刑事に向って、そういう口をきくんだね。」
「そりゃそうよ。公僕だもん。」
 と、有里は言った。(237ページ)
公僕という語が高校生の口から出ると、なんだか違和感が......

<蛇足3>
「今どき、クラブ活動に熱中する子はそう多くない。有里にしても、勉強そっちのけで打ち込んでいるわけではなかった。」(262ページ)
そうなんですか? 
ぼく自身クラブ活動に熱心に取り組んでいたわけではないので、こんなことを言うのはあれなんですが、クラブ活動に熱中するのはいいことだと思うので、若い皆さんにはぜひ打ち込んでほしいです......





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花嫁は三度ベルを鳴らす [日本の作家 赤川次郎]

花嫁は三度ベルを鳴らす (ジョイ・ノベルス)

花嫁は三度ベルを鳴らす (ジョイ・ノベルス)

  • 作者: 赤川 次郎
  • 出版社/メーカー: 実業之日本社
  • 発売日: 2020/02/03
  • メディア: 新書

<カバー裏あらすじ>
旅先で埋葬される妻
そこは奇妙な風習が残る土地だった……
実業家の片瀬耕一は妻の靖代、その妹である早紀と東欧を旅していた。トランシルバニアに入ったとき、靖代は体調を崩して亡くなってしまう。異国の地だったが、その土地に埋葬することに。そこには奇妙な風習があり、棺の中で目覚めた時に鳴らすベルを墓標の十字架に取り付けるのだ。鳴るはずのないベルが鳴り響くとき、女子大生・亜由美と相棒ドン・ファンは事件に巻き込まれていく! シリーズ第33弾! 表題作ほか「花嫁は滝をのぼる」収録。


花嫁シリーズも33作目です。奥付は2020年2月になっています。
表題作「花嫁は三度ベルを鳴らす」と「花嫁は滝をのぼる」の2話収録。


「花嫁は三度ベルを鳴らす」は、ドラキュラの故郷といわれるトランシルバニアが舞台ですね。
「花嫁は三度ベルを鳴らす」というタイトルは、当然ジェームズ・M. ケインの郵便配達は二度ベルを鳴らす (新潮文庫)を踏まえたものですが、内容はまったく関係ないですね。
「花嫁は三度ベルを鳴らす」のプロット、読み覚えがあるような気がしてならないのですが......気のせいでしょうか? 赤川次郎の別のシリーズで似たようなお話、ありませんでしたっけ?
「吸血鬼はお年ごろ」シリーズかな?
「吸血鬼に鐘は鳴る」 (集英社オレンジ文庫)(感想ページはこちら)をダブらせて読んだのかもしれません。
というわけで、いつもの赤川次郎の作品世界です。

「花嫁は滝をのぼる」は、世界陸上大会の開催をめぐる政治家、国の横暴と、その被害にある弱者という、こちらも違うかたちでの典型的な赤川次郎の作品世界です。
この種の話、読むほうとしてはもうすっかり飽きてしまっているのですが、大事なことなので、繰り返し、繰り返し訴えていかなければ、と考えておられるのでしょうね...... いわゆる劇場型の決着になっているのがその証拠かな?



<蛇足1>
「ここが、いつも亜由美の部屋だったり、二人きりしかいない、湖を見下ろす湖畔のベンチだったらよかったのだが」(14ページ)
「~たり、~たり」が崩れてしまっていますね。長い文章なのでミスしやすいところではありますが。
あと、湖を見下ろすようなところも、湖畔と呼べるのでしょうか? ちょっと気になりました。

<蛇足2>
「何かご用ですか?」
 用があるから来たのだろうが、谷山の方もそこへ考えが至らない。(15ページ)
「何かご用ですか?」というセリフ、何の用かを話すよう促すセリフであって、必ずしも用のない人に向けたセリフとは限らないように思うのですが......「考えが至らない」と言われてしまっては、谷川准教授かわいそう。久しぶりに登場したのですが、たいした役割を果たしませんしね......残念。

<蛇足3>
「あなたなんですね、航空券を送って来たの」
「ファーストクラスにできなくてすみません」(34ページ)
亜由美のところへトランシルバニアへ向かう航空券が誰だかわからない人物から送られてきた際の電話での会話です。
ところが、そのあとに
「ファーストクラスでこそなかったが、成田に着いてみると、亜由美たちの席はビジネスクラスに帰られていた。」(37ページ)
となっています。
すると、元のチケットはエコノミークラスだったわけですよね。このケースで「ファーストクラスにできなくて」と言いますでしょうか? ビジネスクラスのチケットだったならともかく、エコノミークラスのチケットでは、「ビジネスクラスに(も)できなくて」というところじゃないかな、と思うのですがーー最終アップグレードしてビジネスクラスにしてはいるようですが。

<蛇足4>
「カッパ、はおった方が」
「そうね、滝の近くにいくんだから」(116ページ)
大学生の会話です。最近の大学生でも「カッパ」という語、使うんですね。
ヤッケとかカッパとか、半ば死語と化していると思っていました。

<蛇足5>
開催国に立候補する国はいくつもあったが、北山はあらゆるつてを利用して、立候補を取り下げさせたり、他国のマイナスイメージを、マスコミを使って流した。(145ページ)
ここも長めの文章で「~たり、~たり」が崩れてしまっていますね。
それにしても、世界陸上大会の開催国決定に影響を与えるために他国のマイナスイメージを流すとすると、ここでいうマスコミは日本のマスコミではなく、主として海外に影響力のあるマスコミということになりますね。元総理とはいえ、そんな海外にまで影響力を及ぼせるなんて、日本の政治家では珍しい気がします。




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