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四つの凶器 [海外の作家 ジョン・ディクスン・カー]


四つの凶器 (創元推理文庫)

四つの凶器 (創元推理文庫)

  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2019/12/20
  • メディア: 文庫


<カバー裏あらすじ>
依頼人であるラルフ・ダグラスと高級娼婦ローズの関係を清算するべく青年弁護士リチャードがパリ近郊の別宅に到着した時、娼婦はすでに寝室で事切れていた。死体発見現場からは、カミソリとピストルと睡眠薬、そして短剣が見つかる。過剰に配置された凶器は何を意味するのか。不可能犯罪の巨匠カーの最初期を彩った名探偵アンリ・バンコランの “最後の事件” を描いた力作長編。



「夜歩く」 (創元推理文庫)(ブログの感想ページへのリンクはこちら
「絞首台の謎」 (創元推理文庫)
「髑髏城」 (創元推理文庫)(ブログの感想ページへのリンクはこちら
「蝋人形館の殺人」 (創元推理文庫)(ブログの感想ページへのリンクはこちら
と続いてきたバンコランものの最終作です。
「絞首台の謎」は新訳を日本に置いてきてしまったので読めていません。旧訳では読んでいるんですけどね)
引退しているという設定からか、バンコランのイメージ一新という感じの作品です。
「コーデュロイの上っ張りで、『かかしそっくりのやつ』だったらしいよ。」(31ページ)
「まずカーティスが気づいたのは、これまでかいだことがないほど強烈な最下等の煙草だった。お次に、戸口にたたずむ男が来ているコーデュロイの両肘とも、ずいふん擦り切れているのが目についた。五十代半ばのほっそりとした長身、その身なりに帽子は何の貢献もしていない。パイプをふかし、しわしわのまぶたの下から親切そうな目で三人を見ているが、無精ひげをあたらなくてはさまにならない。それでも、パイプを口から外してぼろ帽子を上げてみせた身のこなしの品格たるや、ちょっと無類だった。」(79ページ)
最後になんとかフォローが入っていますが、悪い方にイメージ一新です(笑)。

ちなみに、バンコランが謎解きのシーンで
「私とて誰でも疑うように生まれついているわけではありません。」(320ページ)
というのですが、いやいや、あなたは誰をも疑うように生まれついてはずです、と思っておかしくなりました。

本作品の目玉は、やはりタイトルにもなっているように凶器が過剰なところだと思うのですが、読後1か月も経っていないのに、感想を書こうとしたら、うろ覚え......慌ててざっと確認しました(苦笑)。
忘れておいていうのもなんですが、やはり、過剰な凶器という状況が真相と密接に絡んでいることはさすがカー、というところなんだと思います。
正直真相そのものはあまり好きなタイプの仕掛けではなかったのですが、過剰な凶器の解釈としてはもっとも自然な解決ともいえる気がします。
原題は The Four False Weapon で「四つの偽の凶器」。この False の部分の含蓄が素晴らしい。

そして好きなタイプではない、と書きましたが、その真相に至る過程はフェアだったと思いますし(なにより、真相の一部は割と早い段階でバンコランが指摘して読者に対してオープンにしています)、プロットも起伏に富んでいて楽しめました。
特に229ページでバンコランが一旦人物を特定してみせた後の展開は目まぐるしくて素敵です。

もう一つ、この作品で面白いのは、カーならでは、と言いましょうか、ロマンスですね。
ロマンスの当事者となりそうな女性は一人しかいないのですが、そういう展開になるとはね。
いや、まあ、冒頭のシーンから判断してもそうなるだろうことはわかっていたといえばわかっていたんですけれども。

カー、やはり面白いです。



<蛇足1>
「髑髏城」(ブログの感想ページへのリンクはこちら)の蛇足でも書きましたが、この訳者の結構クラシックな日本語、今回も楽しめます。
一つだけ挙げておきます。
「生き馬の目を抜く握り屋の賭博嫌い」(158ページ)
「握り屋」って最近めったにみない表現ですね。

<蛇足2>
「予告殺人」 (クリスティー文庫)感想で、訳者の羽田詩津子さんが変わった(新しい?)表記、訳し方をされている、と書きましたが、この「四つの凶器」の和爾さんも同様の訳し方をされています。
「生き馬の目を抜く握り屋の賭博嫌い、(失礼ながら)あなたにさほど首ったけでもない女性が」(158ページ)
「相手にそれが通じるはずだと決めてかかったのはとんだ誤算でしたが(このことは決して彼女には知
らせないように。~~)。」(319ページ)
「脅迫して巻き上げたのだと。(そして、その部分はまったく読み通りでした。~~)最後には認めたものの、」(328ページ)
「賭け狂いの輩は(ここで勝負する人はみんあそうですが)勝負以外のことには我関せずです。」(332ページ)
いままで意識していなかっただけだったのかも。



原題:The Four False Weapon
著者:John Dickson Carr
刊行:1937年
訳者:和爾桃子









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