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スマイリーと仲間たち [海外の作家 ら行]


スマイリーと仲間たち (ハヤカワ文庫 NV (439))

スマイリーと仲間たち (ハヤカワ文庫 NV (439))

  • 作者: ジョン・ル・カレ
  • 出版社/メーカー: 早川書房
  • 発売日: 1987/04/15
  • メディア: 文庫

<カバー裏あらすじ>
将軍と呼ばれる老亡命者が殺された。将軍は英国情報部の工作員だった。醜聞を恐れる情報部は、彼の工作指揮官だったスマイリーを引退生活から呼び戻し、後始末を依頼する。将軍は死の直前に、ある重要なことをスマイリーに伝えようとしていた。彼の足どりをたどるスマイリーは、やがて事件の背後に潜むカーラの驚くべき秘密を知る! 英ソ情報部の両雄が、積年の対決に決着をつける。三部作の掉尾を飾る本格スパイ小説。


言わずと知れた(?)スパイ小説の金字塔、三部作の最終話です。
映画「裏切りのサーカス」(ブログの感想ページへのリンクはこちら)を観たのを機にヨタヨタと読みだしたシリーズです。
(当時)新訳なった「ティンカー、テイラー、ソルジャー、スパイ〔新訳版〕」 (ハヤカワ文庫NV)を、わりと映画を観た後すぐ読んで、次の「スクールボーイ閣下」〈上〉〈下〉 (ハヤカワ文庫NV) (ブログの感想ページへのリンクはこちら)を読んだのが1年後。
そして最後を飾る本作「スマイリーと仲間たち」 (ハヤカワ文庫NV)を読んだのが今回、実に6年半ぶりです。

「スクールボーイ閣下」〈上〉〈下〉 感想)で、スマイリー三部作って、第1作の「ティンカー、テイラー、ソルジャー、スパイ」 でやられて、第2作の「スクールボーイ閣下」〈上〉〈下〉 で反撃の糸口をつかんで、第3作であるこの「スマイリーと仲間たち」 でやっつける、と書きましたが、その通り、やっつける番が回ってきました! ようやく。

ところが、話がスタートしても、なかなか、なかなか、反撃! という感じにならないんですよね。
反撃どころか、カーラはいずこに、という感じ。
あらすじにも書いてありますが、殺された将軍をめぐるエピソードが中心になっていまして、将軍はソ連からの亡命者で、最後に何か重要なことをスマイリーに伝えようとしていた、という背景。
でもね、そこはジョン・ル・カレですから、派手に大反撃だ~、という感じではなく、地味~に、あくまでも地味~に展開します。
500ページもあるのに、いつ反撃するんだ~。
ようやく反撃しそうになっても、ドーンというのではなく、これまた地味~。
筆致が抑えられているので余計そう感じるのでしょうね。いくらでも派手にできそうなのに、でも、これがル・カレ流ということでしょう。

実際のスパイが映画や小説のようにドンパチ、派手派手しくやってしまったら、世間の余計な注目を集めてしまうので、だめなんでしょう。
これこそ、王道のスパイ、ということなのかも。

といいつつ、引退したスマイリーが担ぎ出され、これまた引退したスマイリーの仲間たちを行脚していくあたりは、現実にはあり得ないでしょうし、そこがフィクションとしての根幹になっているのだと思いますが、それでもそれ以外のところは、リアルに、あくまでリアルに。

ということで、地味な作品ですが、ただ、以前おそれていたような、ル・カレは退屈だ、ということは全くありませんでした。
渋いなー、とは思ったものの、じっくり楽しめる作品でした!


<蛇足1>
いつのまにかヴィクトリア・エンバンクメントに出て、ノーサンバーランド・アヴェニューのとあるパブにきていた。たぶん<ザ・シャーロック・ホームズ>だったのだろう。(191ページ)
スマイリーが、パブ「ザ・シャーロック・ホームズ」(写真はこちらの記事に)に行っています!

<蛇足2>
顔立ちにラテン系の、というより、レヴァント人風のといってもいいはしこさがあり(203ページ)
レヴァント人が、ぴんと来なくて調べました。Wikipediaによると「東部地中海沿岸地方の歴史的な名称。厳密な定義はないが、広義にはトルコ、シリア、レバノン、イスラエル、エジプトを含む地域。現代ではやや狭く、シリア、レバノン、ヨルダン、イスラエル(およびパレスチナ自治区)を含む地域(歴史的シリア)を指すことが多い。」らしいです。

<蛇足3>
中央の松材のテーブルには、トーストとマルミットの食べさしが散らかり(254ページ)
マルミットって、なんだろな? と。
「フランス語で「鍋」のことを意味し、具だくさんなスープポトフをアレンジしたような洋風鍋料理のこと。」らしいですね。赤坂にマルミットというお店があるようです。検索するとそのお店のページの紹介がほとんどでした......ちょっと行ってみたくなったかも。

<蛇足4>
ぐうたらで、どうしようもないヴァガボンド(349ページ)
ヴァガボンド? 
放浪者、漂流者、あるいは、ごろつき、やくざ者、無頼漢といった意味でした。

<蛇足5>
彼女は他の下宿人たちに、あの人には不幸があったことがわかるといった。ベーコンをのこすのもそのせいだし、外出が多く、でもかならずひとりで出かけるのもそのせい、明かりをつけっぱなしで寝るのもそのせい、であった。(388ページ)
ほかの部分はともかく、ベーコンの位置づけがよくわかりません(笑)。

<蛇足6>
エレベーターを降りて真っ先に目にはいったのは、福祉厚生部の掲示板で(391ページ)
これ、福利厚生部の間違いでしょうか??

<蛇足7>
その夜十一時すぎ、彼は書類をしまい、机のまわりをかたづけ、メモ類を機密反故(ほご)容器にいれたあと(393ページ)
そこに入れておけば機密を保った状態で破棄してもらえる(焼却処分にでもするのでしょうね)容器のことを、機密反故容器というんですね。ぼくの会社にもありますが、呼び方を意識したことはありませんでした。

<蛇足8>
ロンドン用の靴で水たまりのあいだを踏み、水たまりにだけ注意を集めて進んだ(394ページ)
ロンドン用の靴、なんかあるんですね......
田舎を歩く靴と都会を歩く靴を区別しているということでしょうね、きっと。

<蛇足9>
それとも地下の穴蔵のどこかに、蜂蜜室でもあるのだろうか。なにしろ銃器室があり、釣り具室があり、荷物室があるのだ。もしかしたら、愛欲室もあるかもしれない。(395ページ)
邸宅の描写ですが、愛欲室ですか......すごいですねぇ。
でもきっと、愛欲室があるとしても、地下ではないような気がしますね。
原語がどういう単語なのかも気になります......



原題:Smiley’s People
作者:John le Carre
刊行:1979年
翻訳:村上博基






ティンカー、テイラー、ソルジャー、スパイ〔新訳版〕 (ハヤカワ文庫NV)

ティンカー、テイラー、ソルジャー、スパイ〔新訳版〕 (ハヤカワ文庫NV)

  • 作者: ジョン ル・カレ
  • 出版社/メーカー: 早川書房
  • 発売日: 2012/03/31
  • メディア: 文庫

スクールボーイ閣下〈上〉 (ハヤカワ文庫NV)スクールボーイ閣下〈下〉 (ハヤカワ文庫NV)

スクールボーイ閣下〈上〉 (ハヤカワ文庫NV)
スクールボーイ閣下〈下〉 (ハヤカワ文庫NV)

  • 作者: ジョン ル・カレ
  • 出版社/メーカー: 早川書房
  • 発売日: 1987/01/31
  • メディア: 文庫





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