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小鳥を愛した容疑者 [日本の作家 大倉崇裕]


小鳥を愛した容疑者 (講談社文庫)

小鳥を愛した容疑者 (講談社文庫)

  • 作者: 大倉 崇裕
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2012/11/15
  • メディア: 文庫

<カバー裏あらすじ>
銃撃を受けて負傷した警視庁捜査一課の鬼警部補・須藤友三は、リハビリも兼ねて、容疑者のペットを保護する警視庁総務部総務課 “動植物管理係” に配属された。そこでコンビを組むことになったのが、新米巡査の薄圭子。人間よりも動物を愛する薄巡査は、現場に残されたペットから、次々と名推理を披露する!


2021年9月に読んだ2冊目の本です。
大倉崇裕の新シリーズです。
新シリーズといっても単行本が出たのが2010年ですので10年以上経っておりまして、人気シリーズとして続刊が相次ぎ、現在までのところ6冊になっています。

この「小鳥を愛した容疑者」 (講談社文庫)には
「小鳥を愛した容疑者」
「ヘビを愛した容疑者」
「カメを愛した容疑者」
「フクロウを愛した容疑者」
の4編収録です。

巻末についている香山二三郎の解説で詳しく各話が紹介されています。

人気シリーズになるだけあって、各作品充実しています。
キーとなる動物の特徴や性質から手がかりを得て、真相を導き出す薄巡査。このあたりの配分が見事なんですよね。
まあ、大倉崇裕なので安心印に違いないですが。

残念なのは、個人的事情なのですが、この薄巡査のキャラクターが好きになれない......
薄巡査の行動って傍若無人なんですよね。
名探偵にありがちといえばありがちなんですが。
また、新人という設定なので働いているうちにこなれていく、というのが世の常なのですが、真相にたどり着くので、須藤警部補も流してしまっているので、修正されるチャンスもなさそう。
こういう人、身近にいたらイライラしちゃうと思うんですよね、いくら優秀でも。
そう思って読んでしまったので、ちょっと辛い部分がありましたね。
またシリーズ1作目ということもあってか、キャラクター設定自体も、極度の動物好きで動物に関しては勉強熱心という以外の要素が未だ発露していないというのもこういう感想をいただかせた理由なのかもしれません。
もっとも、大倉崇裕のウェルメイドなミステリですので、最後までそれなりに楽しく読めるのですが、ちょっと残念。
といいつつ、シリーズ追いかけていきますが。


<蛇足1>
「警視庁総務部総務課課長として臨場されるわけですから、立派な現場です」
「僕は課長じゃない。課長代理心得だよ」
「略せば課長じゃないですか」(119ページ)
戯れに満ちたやりとりではありますが、すごい略し方ですね(笑)。

<蛇足2>
「河原でばったり出会ったら、ぞっとしないな」(319ページ)
ワニガメについての会話です。
ここの「ぞっとしない」って、どういう意味で使われているのでしょうね?
辞書的には「面白くない」「感心しない」という意味であまりふさわしい場所とは思えません。



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宝石商リチャード氏の謎鑑定 [日本の作家 た行]


宝石商リチャード氏の謎鑑定 (集英社オレンジ文庫)

宝石商リチャード氏の謎鑑定 (集英社オレンジ文庫)

  • 出版社/メーカー: 集英社
  • 発売日: 2015/12/17
  • メディア: 文庫


<カバー裏あらすじ>
酔っ払いに絡まれる美貌の外国人・リチャード氏を助けた正義(せいぎ)。彼が国内外に顧客をもつ敏腕宝石商と知り、誰にも言えない曰くつきのピンク・サファイアの鑑定を依頼する。祖母が死ぬまで守っていたその宝石が秘めた切ない“謎”がリチャード氏により解かれるとき、正義の心に甦るのは……? 美しく輝く宝石に宿る人の心の謎を鮮やかに解き明かすジュエル・ミステリー!!


ここから2021年9月に読んだ本の感想に移ります。
さいきん流行りのキャラ・ミスというやつでしょうか。
割と書店でシリーズが山積みにされていて気になっていましたので手に取りました。

Case1 ピンク・サファイアの正義
Case2 ルビーの真実
Case3 アメシストの加護
Case4 追憶のダイヤモンド
extra case ローズクォーツに願いを

という構成の連作短編集です。

引用したあらすじにジュエル・ミステリーとあり、タイトルにも謎という語が使われていますが、ミステリーとして読むのは酷な気がしました。
あえていうなら、日常の謎になるのかな、とは思いますが、あまりにもミステリとしては薄味です。
作者もミステリーを書こうとはされていないのではないかと思います。

それよりも、主人公である正義と、雇い主となる美貌の(男です)宝石商リチャード氏の関係に焦点が当たっていると思われます。
BL(ボーイズラブ)のテイストが軽くしています。
リチャード氏の一方的な片想いのような感じになっており、正義はまったく気づいていない(さらには女性ー岩石屋!ーに恋心を抱いている)という構図で、こういうの定石なのかもしれませんね。

いわゆるLGBTを扱っている作品も入っています。
「あなたの友達で、同性のパートナーと一緒に暮らしている人はいる? 多分いないでしょう。差別とか風当りとか、そういう問題だけじゃなくてね、こういうのは砂漠の真ん中で家庭菜園やるみたいなしんどさがあるのよ。何で私だけ、他の人がしなくていい苦労をしなくちゃいけないのって。こういうの隣の芝生って言うのかしらね。」(132ページ)
安易に「わかる」というのがよくないテーマではありますが、このセリフは蒙を啓く感じがします。
この人物は当時に別の興味深い論点も提供してくれています。
「真美さんは、彼女の家の教育方針のことを聞かせてくれた。『他人に迷惑をかけないこと』。『無用に目立たないこと』。普通に生きて、普通に学校に行って、普通に結婚して、普通に子どもを産んで、普通に育てて、普通に歳を取る。それが一番苦労せず、目立たず、楽に生きる方法なのだと。」(133ページ)

ところで、このリチャード氏という言い方、わざとだと思いますが、変ですね。
リチャード氏の名前は、リチャード・ラナシンハ・ドヴルビアン。イギリス国籍という設定です。
氏という敬称は姓につけるものなので、ドヴルビアン氏というべきで、リチャード氏というのはおかしいですね。
(同姓がいる場合に区別するためファーストネームの方に氏をつけることはありますが)

シリーズは好調でもう10冊以上出ているのですね。
続きを読むかどうか、迷っています。


<蛇足1>
「遠い外国の昔話ではなく、六十年代の東京の話だ。」(27ページ)
主人公である正義の祖母の話のところで出てくるのですが、60年代というのはちょっと計算ミスなのではないかなぁ、と思ってしまいました。
復員兵と結婚し三人の子供を産んだのち離婚、掏摸をして生計をたて娘を育てた、というのですが、
「もはや戦後ではない」と書かれたのが1956年度の『経済白書』の序文。
もう10年ずらした方がよかったのでは?
でもそうすると主人公との年齢差が合わなくなりますかね?

<蛇足2>
「ちょっとナルシストで嫌味なところはあるが、おかげで俺の大学生活はバラ色になりそうだ。」(96ページ)
上司であるリチャード氏を引き合いに出す場面なのですが、正しくは「ナルシシスト」ですね。
日本語ではこの作品のように「シ」が一つ落ちて「ナルシスト」とされることが多いですが。









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Q.E.D. iff -証明終了-(1) [コミック 加藤元浩]


Q.E.D.iff -証明終了-(1) (講談社コミックス月刊マガジン)

Q.E.D.iff -証明終了-(1) (講談社コミックス月刊マガジン)

  • 作者: 加藤 元浩
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2015/06/17
  • メディア: コミック

<カバー裏あらすじ>
「iff」
密室だったはずのアトリエで絞殺された彫刻家。彼に対して複雑な思いを抱く関係者の中から燈馬が導き出した、犯人と「同値」の人物とは
「量子力学の年に」
100年前の新興宗教の教祖がミイラとなって発見された。事件の手がかりを残したのは、当時の最先端科学に人生を揺さぶられた科学雑誌記者だった。


映画に寄り道したついでに(?)、コミックの感想も。
50巻で終わった「Q.E.D.」シリーズが、発表する雑誌を変えてリニューアルしたのが、この「Q.E.D. iff」シリーズです。
といいながら、中身は「Q.E.D.」シリーズの頃と変わっていませんね。
通しタイトルとして採用された iff は、Q.E.D. と同じく数学からとられています。
『「if and only if」の略で「同値」って意味です。』
と燈馬の口から説明されています。
「同値」。懐かしいですね。高校数学で習いましたね。必要十分である

記念すべき第1話となる「iff」は、残念ながら、犯人もその決め手もちょっとありきたりでした。
続く「量子力学の年に」も、新興宗教や量子力学などの装飾を取り払ってみれば、きわめてありふれた話になってしまっていて残念。
今回は、直前に読んだ「C.M.B.森羅博物館の事件目録(29)」 (講談社コミックス月刊マガジン)の印象が強烈すぎて、割を食っちゃったのかもしれませんね。
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C.M.B.森羅博物館の事件目録(29) [コミック 加藤元浩]

C.M.B.森羅博物館の事件目録(29) (講談社コミックス月刊マガジン)

C.M.B.森羅博物館の事件目録(29) (講談社コミックス月刊マガジン)

  • 作者: 加藤 元浩
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2015/06/17
  • メディア: コミック

<帯あらすじ>
石油王が忍ばせた「生と死」を巡る秘密とは?
小さなお守りが明かすのは、立志伝中の人物が最期に求めたもの――
「プラクルアン」他 読み切りミステリ4編収録


この第29巻は、
「プラクルアン」
「被害者、加害者、目的者」
「椿屋敷」
「自白」
の4話収録。


「プラクルアン」
タイトルになっているプラクルアンというのは、タイで作られる 1cm ほどの小さな仏像のお守りのことらしく、カバー裏でも説明がついています。
怪物と呼ばれた石油王が大事そうにしまっていた安物のプラクルアンに込められた秘密。
「花の美しさを湛える時期にはどうしても見えない価値がある
 それは”命”だ
 いろいろな楽しみや贅沢にかき消され 生きている実感を失ってしまうんだ
 そしてその虚しささえも見失ってしまう
 だからこそ 自分の命を映す鏡が必要だ」
と孫娘に言っていた石油王。
謎を解くためにタイへ向かう森羅たち。
七瀬と孫娘に知らせる「答え」は王道なのですが、そのあと森羅がえぐる真相のえぐいこと。
ちょっとビターすぎて、読んでいるだけでダメージを受けちゃいました。

「被害者、加害者、目的者」は、初詣で遭遇したひったくり事件の顛末を描いています。
ひったくりの真相自体は特筆すべきところはないのですが、森羅の目のつけどころには(いつもながら)気が利いていると思いました。

「椿屋敷」はちょっと露骨な手がかりのおかげで底が割れやすくなっています。
皮肉なエンディングも効果をあげているようには思えませんでした。

「自白」は、なぜ自白したのか、というのがテーマで森羅が激怒するという珍しい展開を見せるのですが、これまた後味が......


C.M.B. って、こんなに悪意というか、邪な意図にあふれた物語でしたっけ?
子どもは大人が思うよりも強い存在ではありますが、このような味わいの作品を、月刊少年マガジンという媒体で発表したんですね......



タグ:CMB 加藤元浩
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霧にたたずむ花嫁 [日本の作家 赤川次郎]


霧にたたずむ花嫁 (ジョイ・ノベルス)

霧にたたずむ花嫁 (ジョイ・ノベルス)

  • 作者: 赤川 次郎
  • 出版社/メーカー: 実業之日本社
  • 発売日: 2021/01/29
  • メディア: 新書

<カバー裏あらすじ>
花嫁をつけ狙うのは誰──
亜由美の恋の行方は?
霧の中、家路を辿っていた仲間朋代は不穏な気配を感じ、逃げようとする。もうダメだと思った瞬間、偶然いあわせた亜由美の恋人、谷山によって助けられる。これをきっかけに朋代と谷山は急接近し、なんと結婚することに。失恋した亜由美は傷を癒そうと旅に出るが、そこでもトラブルに巻き込まれ──。
花嫁シリーズ第34弾。表題作のほか「カリスマ花嫁の誇り」収録。


2021年8月に読んだ最後の本です。
花嫁シリーズ34作目。
「カリスマ花嫁の誇り」と表題作「霧にたたずむ花嫁」の2話収録。

「カリスマ花嫁の誇り」は、島を所有する金持ちの館で起こる事件ですが、いわゆるお屋敷もの風展開にはならず(そんな枚数もありませんし)、当主の誕生パーティにいろいろな面々が集って事件が起こるという、いつもの赤川次郎作品です。
ただ、いつもより、金持ち連中にそそぐ作者のまなざしは柔らかいような。

「霧にたたずむ花嫁」は、亜由美を捨てて谷山先生が結婚してしまうという、シリーズにとっての超一大事発生です。
このところ出てこないなぁと思っていたら、こんな登場の仕方をするとは、谷山~。
もちろん、そんな結婚話は一筋縄ではいかないのですが。
今後どうなっちゃうのでしょうか?


<蛇足1>
「犬の名探偵か? 猫なら聞いたことがあるけどな。」(30ページ)
言わずと知れた、三毛猫ホームズを念頭においていますね。
ドン・ファンが聞きつけて、気を悪くしないといいのですが(笑)。
あと、迷犬ルパン(by 辻真先)もお忘れなく、ですよ。


<蛇足2>
「まだ熱くて、やっと持てるくらいのクロワッサンを一口食べて、生田綾子は声を上げた。」(144ページ)
「焼きたてのクロワッサンのおいしさが分るようなら、もう死ぬ気はなくなったのだろう。」(145ページ)
生きるという実感はこんなところから始まるのかもしれませんね。
しかし、やっと持てるくらい熱いクロワッサンがホテルの朝食で出るとは......

<蛇足3>
「でも、事情が事情ですもの、警察だって分ってくれますよ。」(183ページ)
赤川次郎には珍しく、物わかりのよい警察が引き合いに出されています。


古い記事をベースに書いていたので、元の記事が残っていました。
削除しました。失礼しました。



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キャサリンはどのように子供を産んだのか? [日本の作家 森博嗣]


キャサリンはどのように子供を産んだのか? How Did Catherine Cooper Have a Child ? (講談社タイガ)

キャサリンはどのように子供を産んだのか? How Did Catherine Cooper Have a Child ? (講談社タイガ)

  • 作者: 森 博嗣
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2020/02/21
  • メディア: 文庫

<カバー裏あらすじ>
国家反逆罪の被疑者であるキャサリン・クーパ博士と彼女の元を訪れていた検事局の八人が、忽然と姿を消した。博士は先天的な疾患のため研究所に作られた無菌ドームから出ることができず、研究所は、人工知能による完璧なセキュリティ下に置かれていた。
消えた九人の謎を探るグアトは、博士は無菌ドーム内で出産し、閉じた世界に母子だけで暮らしていたという情報を得るのだが。


森博嗣の新しいシリーズ、WWシリーズの、
「それでもデミアンは一人なのか?」 (講談社タイガ)(感想ページはこちら
「神はいつ問われるのか?」 (講談社タイガ)(感想ページはこちら
に続く第3作です。

あらすじにも書かれている人間消失が事件で、作中136ページでヴォッシュ博士が指摘しているように真賀田博士の事件と似通っているところがポイントですね。

森博嗣の本を読むといつも思うのは、「すべてがFになる」 (講談社文庫)と比べると、遥けき地点まで来たなぁという感慨です。
この人間消失の真相も、真賀田博士の事件とは異次元の解決を見せます。

このレベルになるとさわりを出してもネタバレにはならないでしょうから、自分の備忘として引用しておきます。
「生命ではなく、存在なのだ。
 存在こそが、最も重要な、この世界を形成するユニットであり、基本だ。
 リアルとヴァーチャルの両立は、あらゆる存在を脅かす。物体とは、単にリアルの存在の総称でしかない。存在は既に、原子からなる物体よりも、その焦点を引く視線でしか捉えることができないものになっているのだ。」(249ページ)

しかし、こんな地点までたどり着いてしまうと、このあと物語はどこに向かうのでしょうね?
森博嗣の中では、すっかり地図が出来上がっているのでしょうけれど。
それはリアルとヴァーチャルの全き融合なのかも、ですね。


Wシリーズのように英語タイトルと章題も記録しておきます。
How Did Catherine Cooper Have a Child ?
第1章 どのように彼女は姿を消したか? How did she disappear?
第2章 どのように彼女は届けられたか? How did she arrive?
第3章 どのように彼女は破壊したか? How did she destroy?
第4章 どのように彼女は生かされたか? How was she alive?
今回引用されているのは、グレッグ・イーガンの「ディアスポラ」 (ハヤカワ文庫 SF)です。

<蛇足1>
「いきなり、だからねって」テーブルの椅子に座っていたロジは吹き出した。(13ページ)
あれ? ロジってこういう反応をする人でしたか?
グアドとの関係性がどんどん変わってきている証左かも。

<蛇足2>
「幸い、僕には研究という大賞があった。それに打ち込んできたから、ほかのさまざまな不満に出合わなかった。その点では、今は少しだけ不安を感じている。研究から離れたこともあるし、大切な人ができたこともある。失うものを得てしまった、ともいえるだろう。」(33ページ)
さらっとグアドがすごいことを言っています!

<蛇足3>
「しばらく、マシュマロのように柔らかい沈黙が続いた。」(48ページ)
マシュマロのような柔らかい沈黙、ですか。
張りつめたような緊張感漂う沈黙とは正反対の沈黙なのでしょうね。

<蛇足4>
「ああ、ちょっと、考えごとをしていた」僕は彼女に言った。
「そうでしょうね、きっと」ロジは猫のように微笑んだ。(250ページ)
猫のように微笑む......
ロジが!?


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リケジョ探偵の謎解きラボ [日本の作家 喜多喜久]


リケジョ探偵の謎解きラボ (宝島社文庫 『このミス』大賞シリーズ)

リケジョ探偵の謎解きラボ (宝島社文庫 『このミス』大賞シリーズ)

  • 作者: 喜多 喜久
  • 出版社/メーカー: 宝島社
  • 発売日: 2017/05/09
  • メディア: 文庫

<カバー裏あらすじ>
保険調査員の仕事は、保険会社から支払われる保険金に関して、被保険者側に問題がないか調査・報告すること。しかし、江崎に回ってくるのは、大学教授の密室での突然死をはじめとした不審死ばかり。その死は果たして自殺か事故か、殺人か――。そんなとき、江崎は意中の研究者・友永久理子に相談を持ちかける。恋人より研究優先の熱血“理系女子”探偵が、化学を駆使し不審死の謎に迫る!


2021年8月に読んだ15冊目の本です。
喜多喜久って多作家ですよね。
お気に入りの作家なので基本的には全部読みたいなと思っているのですが、この「リケジョ探偵の謎解きラボ」 (宝島社文庫)はタイトルを見てちょっと臆してしまいました。
「リケジョ探偵」
作者なのか出版社なのかわかりませんが、狙ったようなタイトルで、なんかいかにもな感じがして......

帯に上野樹里の推薦コメントがついていまして
「研究一番、彼氏は二番?
 久理子のリケジョっぷりは潔くて素敵?
 ドラマ以外の物語も読めて嬉しい!
 難解な事件も、二人の恋の行方も、
 最後まで誠彦と頭を抱えながら是非楽しんでほしい!(笑)」
非常に要領よくまとめられています。

連作短編集で4話収録で、それにつれて二人の仲が深まって?いきます。
「Research01・小さな殺し屋」
内側から鍵のかかった部屋で心臓麻痺で死んだ大学教授。
おもしろいのは、犯行の場面はないのですが、犯人と思しき妻が死体を”発見”するシーンから始まることです。
犯人もリケジョでして、リケジョ対決というところでしょうか。
「Research02・亡霊に殺された女」
飛び降り自殺をしたと思われる妻の死は自殺ではないと信じる夫の依頼を受けて死の原因を調べます。
怪しげな占い師を絡めるところがポイントなんですが、平凡な印象です。
「Research03・海に棲む孔雀」
和歌山で起きた溺死事件は保険金目当てだという密告電話があって、調査に出かける誠彦。
泊りがけの調査になるので、公私混同して久理子を誘おうとするのが笑えます(といっても、気の弱い?誠彦の独自案ではなく、所長にそそのかされて、なのですが)。
ある意味典型的な話の進み方をするのですが、警察官が介入しているのがポイントですね。
事件の方は、賛否両論というか、議論を呼びそうな決着をみますが、誠彦と久理子の仲の進展の方が重要なのかもしれません。
しかし、下僕(笑)。
「Research04・家族の形」
久理子に留学話が持ち上がって気が気じゃない誠彦が取り組むのが交通事故。
介護の必要な老人が出てきた段階である程度真相は透けて見えてしまうのですが(手がかりも露骨ですし)、誠彦はこれまた微妙な決着に持っていきます。
まあ、警察じゃないから、ということなのでしょうが、第3話、第4話とこういうのが続くと、ちょっと全体のテイストがちぐはぐな印象を受けてしまいます。

続編「リケジョ探偵の謎解きラボ 彼女の推理と決断」 (宝島社文庫)が出ているので、二人の恋の行方?が気になります。


<蛇足>
「今日は、草刈り直後の地面にポン酢を振りかけたような臭いがしていた。」(187ページ)
実験室のある建物に入った時の描写なんですが、どんな匂いなんだろ?


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