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箱根地獄谷殺人 [日本の作家 さ行]


箱根地獄谷殺人 (天山文庫 し 3-1)

箱根地獄谷殺人 (天山文庫 し 3-1)

  • 作者: 島田 一男
  • 出版社/メーカー: 大陸書房
  • 発売日: 2022/08/23
  • メディア: 文庫

<カバー裏あらすじ>
箱根・芦ノ湖に程近い山村で起きた硫化水素ガスによる殺人未遂事件。幸い狙われた資産家の未亡人が異常に気づくのが早く、犯人の企みは潰えたかにみえたが、その一週間後の夜、彼女は右眼に破魔矢を射込まれて殺された。犯行現場の離れ屋は完全な密室状態。しかも捜査線上にあがった容疑者には完璧なアリバイが… 温泉郷・箱根で次々に起こる殺人事件。真相を追う新聞記者・日下部の冷静な眼が巧妙なトリックを暴く本格推理の傑作。


2022年の読書、第1作目です。
島田一男の「箱根地獄谷殺人」 (天山文庫)
お正月に実家に帰省していまして、そこで大昔の積読本を読もうと思って手に取ったものです。
天山文庫自体が今はもうないですね。
奥付を見ると(といいつつカバーにかかれているだけですが)、1988年11月5日初版となっています。
古すぎるからか、amazon では書影がなく、上に引用してもしょうがないかなと思いつつ(笑)、いつものフォーマットということでそのままにしておきます。
巻末に、本書は『犯罪山脈』(光風社刊)を加筆し改題したもの、と書かれてあります。

島田一男は多作家で、初期の頃は本格ミステリを書かれていましたが、事件記者シリーズや捜査官シリーズのような作風に転じられたというイメージで、失礼ながら多作家の書き飛ばしなんじゃないかと思ったりもしたものです。

ところが、です。実際に読んでみたら、こんな失礼なイメージを持っていたことを猛烈に反省しました。
「魔弓」
「腐屍」
「毒唇」
「死火山」
「邪霊」
の5編収録の連作短編集なのですが、軽く書いているようでいて、それぞれにしっかりとしたミステリらしいトリックが盛り込まれています。

新聞記者を主人公に据えていまして、現在とはずいぶん違うセリフ回しや人間関係のあり方が、古びているといえば古びているのですが、今となってはむしろとても興味深い。
刑事ではなく新聞記者という設定も効果的に使われています。

主人公が強羅支局から本社へ転勤になることで連作が終わりを迎えるのですが、もっと続けばいいのにな、と思いました。

島田一男の本はいまやほとんど手に入りませんが、この「箱根地獄谷殺人」 のような作品は復刊していってほしいですね。



タグ:島田一男
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