SSブログ

QED ~flumen~ ホームズの真実 [日本の作家 高田崇史]


QED ~flumen~ ホームズの真実 (講談社文庫)

QED ~flumen~ ホームズの真実 (講談社文庫)

  • 作者: 高田 崇史
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2016/09/15
  • メディア: 文庫

<カバー裏あらすじ>
シャーロキアンの展覧会に招かれた崇(タタル)と奈々は、またもや事件に巻き込まれる。参加者の一人、槿遼子が会場である館の二階から墜落。遼子の手にはスミレの花が握りしめられていた。崇は事件の鍵を「紫」と指摘。ホームズと紫式部、物語と現実が綯い交ぜとなって奇想の結末へ。「QEDパーフェクトガイドブック」収録


2021年12月に読んだ7冊目の本です。
祟と奈々のシリーズも「QED 伊勢の曙光」 (講談社文庫)(感想ページはこちら)で完結したわけですが、うれしいことにその後も何作か出版されていますね。
この「QED ~flumen~ ホームズの真実」 (講談社文庫)は、flumen と銘打たれた番外編ですね。

ホームズは以前「QED ベイカー街の問題」 (講談社文庫)でも扱っていましたので、再来です。
まあ、シャーロック・ホームズはミステリにおける金字塔ですし、架空の存在であるというのにそれを探求するシャーロキアンがいるという不滅の存在ですから、謎は尽きぬということなのでしょう。

とはいえ今回は、帯にもDr. 田中喜芳が書かれているように
「ホームズ物語」風味の下味に、「源氏物語」のスパイスがひかる。シャーロキアンをも唸らせる一冊!
というわけです。
シャーロック・ホームズに加えて、源氏物語の謎が扱われます。
おもしろかった!

冒頭から
「奈々さん、ご結婚されるんですって?」
という大ネタでびっくりしますが、未だ結婚していなかったの!? まあ、そんなことだろうとは思っていましたが(笑)。

事件としてはダイイングメッセージが扱われているのですが、ダイイングメッセージに対する崇の態度には共感しました。
「個人的な犯罪事件において、犯人が持っていたとされる犯行動機ほどあてにならないものはない。それは、こちら側の人間が事件を納得したいという願望によっていくらでも創造されてしまうからだ」(95ページ)
「動機というのは、たとえば俺たちが自分の真情や思いを言葉にした瞬間、全てがフィクションと化してしまうように、犯人が口にした瞬間から非現実化されてしまう。言葉や文字となったノンフィクションというものは存在しないんです」(96ページ)

最後の最後に明かされるホームズの真実は、なかなか夢があっておもしろい。
ゆっくりとでもこのシリーズは読み続けていきたいです。


<蛇足1>
「Widecombe ――ワイドコンベまで六時間?」
「そう。但し、地元の人たちは『ウィディカム』と呼んでいたが」(63ページ)
「バスカヴィル家の犬」の現場ダートムアの地名ですが、ワイドコンベとは思い切った日本語......
地元では「ウィディカム」と呼ぶと書かれていますが、combe の部分はイギリスでは一般的に「クーム」と発音される語ですので「ウィディクム」の方が近いような気がしますが、まあ誤差の範囲ですね。

<蛇足2>
「担当している楽器はヴァイオリン。もちろんこの楽器の名称は、スミレ属の学名『Viola』から来ています。楽器の形と花びらの形が似ているという理由でね。」(126ページ)
ヴァイオリンの名前の由来を始めて知った気がします。

<蛇足3>
「では、実際に本文(ほんもん)に当たってみましょうか。」(168ページ)
本文という語に「ほんもん」とルビが振ってあっておやっと思いました。
高校時代古文の先生が「ほんもん」と読んでいたことを懐かしく思い出しました。




タグ:QED 高田崇史
nice!(14)  コメント(0) 
共通テーマ: