天空の少年探偵団 [日本の作家 あ行]
<カバー裏あらすじ>
君たち、夏休みの宿題は順調かい?──交番の鈴木さんが持ちかけてくれた天空館行き。僕らはねじり鉢巻で宿題を片づけ、噂の邸宅に意気揚々と乗り込んだ。ぜひ少年探偵団に会いたいと駆けつけたおじいさんおばあさんと合流し、賑やかな一夜を過ごしたところまではよかった。でも朝起きたら、あんなに愉快そうだった巨体のおじいさんが亡くなっていたんだ。しかも“不可能状況”で!
読了本落穂拾いを続けて、今回は2016年2月に読んだ、秋梨惟喬の「天空の少年探偵団」 (創元推理文庫)。
前作「憧れの少年探偵団」 (創元推理文庫)(感想ページはこちら)を楽しんで読んだので期待して読みました。
今感想を書こうとしてパラパラめくってみて驚いたのが、語り口。
探偵団の一員(発起人?)で小学六年生という設定なのですが、まあ全体に爺臭い(笑)。
TKOの木下とか、はんにゃやフルポンといったお笑い芸人の名がたとえで出てくるのはよいとしても、成田亨、石ノ森章太郎は小学生には厳しいでしょう。これはまだ子供向けの特撮ヒーロー関連でOKと甘く見積もったとしても、柳生博とか柳生但馬守ときたら完全アウトですよね。
少年探偵団の縁起は冒頭25ページくらいからさらっと語られます。
笑ってしまったのは
「未菜美は名探偵は好きだけど、乱歩の少年探偵団物のことは馬鹿にしていたからね。」(26ページ)
という箇所。いや、子供の頃のぼくなら正直未菜美さんに激しく同意しますよ。
未菜美は別のところでも少年探偵団物を引き合いに出していまして
「秘密の地下道があるとか、壁が回転するとか、部屋自体がエレベーターになってるとか、天井が下りてきて人を押し潰すとか、そんなのありえないじゃん」
「怪人二十面相はよく使ってるよ」
「二十面相はいいのよ。もともと趣味でやってる人なんだから」(166ページ)
なんてところでは笑い出してしまいました。
前作「憧れの少年探偵団」の感想で、
「ミステリとしての趣向もなおざりにせず、凡庸な日常の謎に堕してしまわないようにお願いしたいです。」などと書いてしまいましたが、この「天空の少年探偵団」が扱うのは密室殺人!
と紹介するのはこのあたりにしないと、この企みに満ちた作品の鑑賞の妨げになるかもしれません。
それでもあえて書いておくとすると、少年探偵団物の弱点をうまく利用していることと、館もの、密室ものの難題の一つに豪快な解決を与えていること、でしょうか。
あとがきをみると、続編が期待できそうなのですが、その後刊行されていませんね。
読みたいので、ぜひ、ぜひお願いします。
もろこしシリーズも、ぜひ。
タグ:秋梨惟喬
トリックスターズ [日本の作家 か行]
<カバー裏あらすじ>
巧妙な “嘘” にきっと騙される!
名門城翠大学で起きたゲームと称する大胆な殺人予告。それが世間を大いに賑わす頃。
新入生のぼくは客員教授の青年、佐杏冴奈(さきょうしいな)と出会う。彼は本物の魔術師だという変わり者。どういうわけか、ぼくは先生に気に入られてしまう。
こうしてにわか探偵と助手は殺人予告ゲームに立ち向かう。事件すらも楽しむ先生の享楽的頭脳は冴え渡り、ぼくは振り回され、事件は二転三転、疾風怒濤の展開へとなだれ込む。
あっと驚く結末は、もう一度読み直したくなること必至。極上エンターテインメント!
読了本落穂ひろい、です。
久住四季のデビュー作です。
「推理作家(僕)が探偵と暮らすわけ」 (メディアワークス文庫)(感想ページはこちら)の感想を先に書いてしまっていますが、この「トリックスターズ」 (メディアワークス文庫)の方を先に読んでいます。
手元の記録によると、2016年の4月に読んでいます。
引用したあらすじにもある通り、魔術師のいる世界となっています。
事件を振り返る冒頭に
「あの事件はただ、世界を転がし、運命すら弄ぶ、魔術師たち(トリックスターズ)の物語だったのだ、と――」(15ページ)
と書かれていて、タイトルの「トリックスターズ」とは魔術師たちのことを指しています。
舞台となるのは、魔術を研究する魔学部のある城翠大学。
キャンパスがあるのは「東京都を横断するJR中央総武線沿線のちょうど真ん中辺りに位置している」宮古。これ、架空の地名ですよね?
語り手はそこの新入生、天乃原周。
派手な舞台設定と登場人物が整っている一方で、普通の学生たちも多く登場して物語になじみやすくしてくれています。
このあたりのバランスがいいですね。
事件そのものは、真相含めて派手でいいのですが、振り返ってみると、動機と手段が釣り合わない気がしています。
それでも、魔術を前提とした謎解きは堂々としていますし、手がかりのバラまき方も好感度大。
そして最後の最後に繰り広げられる、周と佐杏冴奈のやりとりは、手垢にまみれたようなものではあっても、次々と繰り出される心地よさに浸れます。
これ、いいですよ!
登場する警部の名前が、須津黎人(すどれいと)と暮具総(くれぐそう)というのがお茶目でした。
実はこのあと、シリーズ続刊を読むのがすっかりご無沙汰になっているのですが、とりかかろうと思います。
出口のない部屋 [日本の作家 か行]
<カバー裏あらすじ>
赤いドアの小さな部屋に誘われるように入り込んだ3人の男女。自信あふれる免疫学専門の大学講師・夏木祐子、善良そうな開業医の妻・船出鏡子、そして若く傲慢な売れっ子作家・佐島響。見ず知らずの彼らは、なぜ一緒にこの部屋に閉じ込められたのか?それぞれが語りだした身の上話にちりばめられた謎。そして全ての物語が終わったとき浮かび上がる驚くべき真実――。鮎川哲也賞作家が鮮やかな手法で贈る、傑作ミステリー!
2022年3月に読んだ2作目(3冊目)の本です。
岸田るり子らしい、凝った作品です。
こういう凝った作品は好きなので、いいぞいいぞ、というところなのですが、ちょっと苦しいかな、と。
出版社の社員がホラー作家の家に訪れ原稿を受け取るシーンから幕を開けます。
なにやら因縁がありそうな二人。
「読ませていただいてよろしいですか?」
というセリフを受け、そのあと作中作が展開します。
引用したカバー裏のあらすじは、この作中作をメインにしていますね。
意図せず小さい部屋に閉じ込められた三人の男女、とホラー映画でよくある設定です。
そしてそれぞれの物語が交互に語られます。
それらを繋ぐのが、作中作の外の、(因縁があるらしい)編集者と作家。
非常に凝った意欲的なプロットではあるのですが、これ、破綻していませんでしょうか?
まず、作中作が実名で綴られている、というのが不自然です。
もちろん実在の人物が登場する小説というのもあり、なのですが、この作中作をそういう形で書く必然性が物語として感じられません。
そしてその中身は、編集者と作家の関係性にもかかわるもの、なのですが、この編集者が原稿を取りに行く段取りが偶然なのです。
担当でもないのに編集長に無理を言って取りに行くということなので、それは編集者サイドで作家との関係性をはっきりさせようという意図があったものではあるのですが、その時の原稿がたまたま実名入りの、二人の関係性にかかわる物語だった、というのは、ちょっといただけない。
千街晶之の解説によれば、本書の大前提として、サルトルの「出口なし」という戯曲の影響を受けたもの、ということで、この戯曲を読んでも観てもいないため、大きな読み違い、勘違いをしている可能性がありますが、この不自然さにはがっかりました。
一方で、紡ぎ出される物語は面白かったですね。
イヤミスにはなっていませんが、三者三様の物語は濃密だったと思います。
それを受けての、編集者と作家自身のエピソードも、薄々想像がついたので驚いた、というのとは違いますが、いざ明らかになると衝撃を受けました。
大学の実験室で発見される首だけの死体とか、焼身で死を遂げるシーンとか、むごたらしく美しい感じで、夢に出そうです。
トリックも、奇を衒ったものではないですが、納得感のあるものが使われていて、無理なく伏線が敷かれています。
もうちょっと繋ぎの部分がうまくいっていればなぁ、と残念です。
非常に期待が持てる作家さんなので、また別の作品を読みたいです。
<蛇足>
「牡蠣を白ワインで蒸して、水菜、チシャ、レタス、赤ピーマンの細切りをバルサミコ酢であえた前菜を皿に盛り、バジルを上にちらす。」(170ページ)
あれ? チシャってレタスのことではありませんでしたか?
タグ:岸田るり子
War of High School [タイ・ドラマ]
タイ・ドラマの感想です。
題して「War of High School」
古い作品です。
いつもの MyDramaList によると、2016年8月から12月まで Channel 9 で放映されていたようです。
ということは、「Make It Right」(感想ページはこちら)とほぼ同時期ですね。
YouTube で観たように思うのですが、今確認してみると、EP1が観られなくなっていますね。
EP2 からは英語字幕付きで観ることができます。
主演は「Make It Right」にも出ていた Ohm さん。
Ohm さん演じるパウンドをめぐって、女子高校生二人(上のポスターの二人です)が争いを繰り広げる、というストーリーがメインの流れのうちの一つです。
両手に花、と浮かれていられる状況ではなくて、高校の女王の座をめぐって派閥を形成して熾烈な争いをしている二人、という設定でして、かなり強烈です。
むしろ、両者に挟まれてパウンドは苦労している感じです。
舞台となる高校は、もとは女子高だったみたいで、新たに初めて男子を迎え入れた――しかも6、7人だけ、という状況。6、7人と幅を持たせているのは、物語を見ていても人数が確定しないのです(笑)。
なんとなく男にしてみたら夢のような状況な気もしますが、いやそれは浅はかというもので、超少数派の男子は肩身も狭く、大変そうです(笑)、
ということで、この二人の女子高校生がメインというべきかもしれません。
女子高生二人の熾烈な争いはまさに「War(戦争)」。
もともとは仲の良かった二人、ということになっていまして、さらにはもう一人女王格の生徒がいたのだけれど、彼女はこの物語が始まる前に校舎から墜落死してしまっているという......
そして、この流れを受けるサスペンス調の展開がもう一つの流れです。
こちらの物語は、犯人探しのような方向に進んでいきます。
二つの流れが、時に絡み合い、時に分かれて、ラストに雪崩れ込んでいきます。
ミステリとして作られているわけではないので、伏線がしっかり貼られていたりはせず、いきなり意外な犯人となるわけですが、強烈に意外でした。
不意打ちとはこのことを言う。
びっくりできますよ。犯人が明かされるシーンでは唖然としてしまいました。
タイ・ドラマらしく(?)、BL的要素もありますが、薄味ですので、BLを期待する人にはあまりおすすめできないかも。
馴染みの俳優さんが結構出てきていますね。
ちょっと鮮明ではないですが、男性陣のポスターを。
このポスターで右側の二人がBL要員ですね。
ベストを着ている方(右から二人目)が Nattapat Sakullerpasuk という俳優さんで 愛称 Film。「Water Boyy」(感想ページはこちら)などにも出ていましたね。
気弱で繊細な感じがよく出ています。
対するのは Kavinpat Thanahiransilp 愛称 Jo という俳優さん。明るいキャラクターに合っていました。
「Make It Right」で Ohm の相手役で過去のある優等生を演じていた俳優 Toey さんが、まったくキャラクターの違う役を演じています。こちらはどこまでも軽いおちゃらけボーイ。
またポスターにはいませんが「Love by Chance」(感想ページはこちら)の Plan も出ています。
ちょっと強引なサプライズを楽しみたい方にはどうぞ、と言いたくなる作品です。
映画:RRR [映画]
映画「RRR」の感想です。
インド映画です。
『バーフバリ』シリーズなどの S・S・ラージャマウリ監督の作品ということで期待してみました。
同時に、『バーフバリ』の敵役がプロデュース・主演した「ハーティー 森の神」(感想ページはこちら)が、失礼ながらまあまあという感想でしたので、ちょっとこわごわ。長いということもちょっと恐れをいだいた理由です。
いつものようにシネマ・トゥデイから引用してみます。
見どころ:『バーフバリ』シリーズなどのS・S・ラージャマウリ監督によるアクション。イギリス植民地時代のインドを舞台に、イギリス軍に捕らえられた少女を救う使命を帯びた男と、イギリスの警察官が育む友情と闘いを描く。互いの事情を知らないまま親友となる男たちを、『バードシャー テルグの皇帝』などのN・T・ラーマ・ラオ・Jrとラージャマウリ監督作『マガディーラ 勇者転生』などのラーム・チャランが演じる。
あらすじ:1920年、イギリスの植民地政策下にあるインド。野性を秘めた男・ビーム(N・T・ラーマ・ラオ・Jr)はイギリス軍に連れ去られた村の少女を救うため、仲間と共にデリーへ向かう。そこで、ある出来事をきっかけに内なる怒りを燃やす男・ラーマ(ラーム・チャラン)と出会い、互いの身分を知らないまま親友となる。しかしラーマはイギリス軍の警察官であり、ビームの本当の目的を知った彼は友を投獄する。
これは快作でした。
長さもそれほど気になりませんでした。
なにより、主人公二人がひょんなことから友情を結び、対決し、そして......というすごくわかりやすいストーリー展開がまず〇。
敵は敵らしく、味方は味方らしくという太いストーリーに、主役二人の葛藤というのが絡まります。
こういう葛藤が描かれると、そこに大きな焦点が当たって、長々と下手をすると辛気臭い葛藤シーンが続いたりするのですが、あくまで娯楽大作の活劇調であることを外さず、素晴らしい。
わかりやすさをバカにする人もいるかもしれませんが、いやいや、これこそが王道ですよ。
映画というのはいろいろなことができる表現形式ですから、難しい社会問題や人生とはなにかを問うことも当然できますが、一方で肩の凝らない娯楽を提供するということも大事な役割です。
インド独立を目指す運動が背景にあるので、当時統治していたイギリスは完全な悪者です。総督夫人の絵に描いたような悪さがまた楽しい。
細かいところは気にせずに、監督や制作陣のおもてなしにどっぷり浸るのがよいと思います。
製作年:2021年
原 題:RRR
製作国:インド
監 督:S・S・ラージャマウリ
時 間:179分
アイス・ステーション [海外の作家 ら行]
アイス・ステーション 上 (ランダムハウス講談社文庫)
アイス・ステーション 下 (ランダムハウス講談社文庫)
- 作者: マシュー・ライリー
- 出版社/メーカー: ランダムハウス講談社
- 発売日: 2006/08/02
- メディア: 文庫
<カバー裏あらすじ>
アメリカが南極に持つウィルクス・アイス・ステーション(氷雪観測基地)からSOSが発信された。海中洞窟でダイバーたちが氷に埋もれた “宇宙船” を発見、何かに襲撃され、大量の死者が出たという。米国海兵隊偵察部隊は急遽、救援に向かったが、基地に到着するやいなや、フランス軍最強の戦闘部隊から奇襲を受ける。海中深く眠る謎の黒い物体を巡る国際争奪戦の幕が開く。SF軍事サスペンス大作。『スケアクロウvol.1‐3』を改題、文庫化。<上巻>
海中深くに沈む “宇宙船” を手に入れようと、米国海兵隊に次々と襲いかかる強敵——フランス軍、イギリス陸軍特殊空挺部隊(SAS)……。気象条件の悪化により、外部との交信を完全に遮断された南極基地で、激しい戦闘が繰り広げられる。その渦中、謎の解明のため、深海へのダイビングを決行した海兵隊員と古生物学者は黒い金属製の “宇宙船” の正体を突きとめる。氷に閉ざされた大陸に隠されてきた秘密がやがて明らかになる……。<下巻>
この作品から2022年3月に読んだ本です。
これぞザ・ローラーコースター・ノベル。
帯では福井晴敏が絶賛していると書いてありまして、
アクション、謀略、サスペンス、SF……豪州からやって来た究極の大皿料理!
もうお腹いっぱいです!!
とのこと。でも、まさにその通りで、次から次へと主人公に難題が襲いかかる。たっぷり。
上に引用したあらすじを事前に読まずに読んでいったのですが、今あらすじを見てみると、結構いろいろと書いてありますね(笑)。まあ、謎解きものではないので、ネタバレだと怒ることもないですが。
味わいとか深みなどというものはかけらもありませんが、こういう作品は割り切って楽しむものかと。
シリーズ3作目まで翻訳されていたようなのですが、なにしろ版元が消滅してしまっているので手に入りませんね。肩の力を抜きまくって読む息抜きに良さそうなのですが、残念です。
ところで、海豹の子ども・ウェンディがいい活躍をします。お気に入り。
この ”海豹” 、本文では ”海豹” つまりあざらしと書いてあるのですが、巻頭の登場人物表では(そうなんです。人間ではないのですが、ウェンディは登場人物表に載っているのです!)、メスのオットセイ、と違う種類の生き物にされちゃっています。英語だとどちらが正しいのでしょうね?
<蛇足>
「わたしたち人類という生物が地球上に生まれてから、まだ百万年にもならない。」(上巻291ページ)
あれ? そうだっけ? と思ってしまいました。
その後
「地球の歴史を一日二十四時間の枠に収めたとすると、現在の人類が生まれたのはわずか三秒前。いわゆる文明化された人間生活が――ホモサピエンスとしての暮らしが――この地上に存在した時間はさらに短く、ほんの二千年弱、地球の時計では一秒にも満たない期間なの」
と敷衍されます。
ホモサピエンスからを人類と区切っているのですね。
原題:Ice Station
著者:Matthew Reilly
刊行:1998年
訳者:泊山梁
タグ:マシュー・ライリー
オチケン探偵の事件簿 [日本の作家 大倉崇裕]
<カバー裏あらすじ>
高座に上がった先輩が、突然演目を差し替えた理由とは? 水泳部と水球部の抗争になぜかオチケン(落語研究会)が関わることに? 大学入学早々、落語にまったく興味がないのに、廃部寸前のオチケンに入部させられた越智健一。風変わりな先輩二人に振り回され、次々起こる事件に巻き込まれ、必修科目の出席も夏休みの宿題もままならない彼の運命やいかに!? 落語の魅力とユーモアが満載の連作ミステリー。
2022年2月に読んだ最後の本です。
「オチケン!」 (PHP文芸文庫)(感想ページはこちら)
「オチケン、ピンチ!!」 (PHP文芸文庫)(感想ページはこちら)
に続くシリーズ第3弾。
第一話「幻の男」では、大学の枠を超え、千条学園の落語研究部の問題に巻き込まれます。
隆々たる落語研究部、なのですが、女子部員をめぐって問題があり、この問題が見事に着地するのが見どころです。
第二話「高田馬場」は、水泳部、水球部、ラグビー部をも巻き込んだ騒動となります。
新学長が計画する新たな学部棟の建設とラグビー場の移転に対する反対運動が持ち上がっているさなか、プールに撒かれた大量の新聞紙、高等科ロビーに展示されているウィニング・ラグビーボール盗難。
この事件の構図、大好きです。
ただ、気になったのは、前作「オチケン、ピンチ!!」 を読んだときには、岸先輩のことが、個人的にどうも好きになれず、中村先輩の方は、すんなり馴染めると思ったのですが、この「オチケン探偵の事件簿」 (PHP文芸文庫)では逆に、中村先輩に嫌な感じを受けてしまいました。こういう人でしたっけ?
この点を確かめるためにも、シリーズ続けてほしいですね。
だって、作中ではまだ夏休みですから、オチケン卒業まで、ぜひ。
<おまけ>
87ページに、別のシリーズの登場人物である牧編集長の名前が出て来て、ニヤリとしました。
<蛇足>
「これって、池袋園芸場じゃないですか」
「そうでしょ、園芸場です」
「いや、僕は演芸場かと思っていました」
「だから、園芸場と言っています」
「演芸が違います!」(272ページ)
演芸と園芸の勘違いをネタにした会話ですが、これ、文章として書かれて読むぶんにはいいのですが、話し言葉としてはどうでしょうね? これで会話成立しますか(笑)?