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同志少女よ、敵を撃て [日本の作家 あ行]


同志少女よ、敵を撃て

同志少女よ、敵を撃て

  • 作者: 逢坂 冬馬
  • 出版社/メーカー: 早川書房
  • 発売日: 2021/11/17
  • メディア: 単行本

<カバー袖あらすじ>
独ソ戦が激化する一九四二年、モスクワ近郊の農村に暮らす少女セラフィマの日常は、突如として奪われた。急襲したドイツ軍によって、母親のエカチェリーナほか村人たちが惨殺されたのだ。自らも射殺される寸前、セラフィマは赤軍の女性兵士イリーナに救われる。「戦いたいか、死にたいか」──そう問われた彼女は、イリーナが教官を務める訓練学校で一流の狙撃兵になることを決意する。母を撃ったドイツ人狙撃手と、母の遺体を焼き払ったイリーナに復讐するために….同じ境遇で家族を喪い、戦うことを選んだ女性狙撃兵たちとともに訓練を重ねたセラフィマは、やがて独ソ戦の決定的な転換点となるスターリングラードの前線へと向かう。おびただしい死の果てに、彼女が目にした“真の敵"とは?


2023年2月に読んだ7冊目の本です。
単行本で読みました。
第11回アガサ・クリスティ―賞受賞作。
逢坂冬馬「同志少女よ、敵を撃て」(早川書房)
ついでに、第19回本屋大賞受賞作です。
また、「このミステリーがすごい!2023年版」第7位、
「2022年 週刊文春ミステリーベスト10 」第7位です。

この作品がアガサ・クリスティ―賞なのか、という思いは正直あります。
選考委員である法月綸太郎は選評で「アガサ・クリスティ―賞の名にふさわしい傑作」と書いていますが、冒険小説は広義のミステリに含まれるようなので、戦争冒険小説もミステリに入るということでOKなのでしょう。かなりミステリの枠を拡げないといけませんが。

でもね、ミステリかどうか、ジャンル分けは読者が勝手にすればよいこと。
むしろ逆に、アガサ・クリスティ―賞を応募先に選んでくれたことを、クリスティー賞サイドが感謝すべきかも。
間違いなく、この賞を代表する受賞作になるだろうからです。これまでのこの賞のベスト作品。それもダントツぶっちぎりのベスト。
(正直、これまでの受賞作には突き抜けたものがなかったように思えます)

ああいい、おもしろい小説を読んだなという充実の読書体験でした。
なにより、この小説の構図が美しい。
小説というものが本来持つべき堅牢な構成の美しさに圧倒されました。
構成の美しさを堪能するためにも、あらすじなどには目を通さずに直接本文へ進まれることをお勧めします。

狙撃手になる少女の成長物語です。
小説や映画で何度か読んだり観たりしてきていますが、改めて狙撃手の特殊性が浮き彫りにされています。
「まったく、狙撃兵というのは薄気味悪い手を使う」(275ページ)
「狙撃兵に好意的な歩兵は少ない」「国を問わず、歩兵と狙撃兵は相性が悪い」(343ページ)
「ママを撃った狙撃兵がことさらに残忍なのではない。
 ただ敵を冷徹に撃つ職人としての狙撃兵は、そこに撃てる敵がいれば撃つ。」(396ページ)

途中、物語に重要な人物として少年狙撃兵ユリアンが出てきます。彼のセリフも印象的。
「けれど、だからもっと敵を倒したい。きっと高みに達すれば、そこで分かるものがあるのではないかな。丘を越えると地平が見えるように、狙撃兵の高みには、きっと何かの境地がある。旅の終わりまで行って旅の正体が分かるように、そこまでいけば分かるはずだよ。そうでなければ、僕らはただ遠くのロウソクを吹き消す技術を学んで、それを競っているようなものだ」(290ページ)

イリーナの元同僚(?)で赤軍の英雄、先輩狙撃手リュドミラ・パヴリチェンコが要所に登場し、強い印象を残します。
「彼女が精神に関わる事柄を話したのは、ただ一度、狙撃兵は動機を階層化しろ、と言ったときだった。愛国心、ソ連人民に対する思い、ファシストを粉砕しろという怒り。それは根底に抱えて己を突き動かすものとして維持しつつ、戦場にいるときは雑念として捨てろ、というものだった。」(362ページ)
「射撃の瞬間、自らは限りなく無に近づく。極限まで研ぎ澄まされた精神は明鏡止水に至り、あらゆる苦痛から解放され、無心の境地で目標を撃つ。そして命中した瞬間から世界が戻ってくる。….覚えがあるだろう、セラフィマ」(373ページ)

物語の終盤は史実に沿って、ドイツの敗色が濃厚です。その流れの中で
「戦後、狙撃手はどのように生きるべき存在でしょうか」
と問われパヴリチェンコは答えます。
「私からアドヴァイスがあるとすれば、二つのものだ。誰か愛する人でも見つけろ。それか趣味を持て。生きがいだ。」(364ページ)
「今度こそ、私には何も残されてはいない。分かったか、セラフィマ。私は言った。愛する人を持つか、生きがいを持て。それが、戦後の狙撃兵だ」(374ページ)
一方で、未だ戦いは終結していないので、
「同志セラフィマ。今はただ考えずに敵を撃て。そして私のようになるな」(377ページ)
とも。
狙撃兵の不安定なありようが強く印象づけられます。

パヴリチェンコだけではなく、主人公であるセラフィマも、ある意味因縁の教官イリーナも、数々の考えさせてくれる言葉を発します。
この二人の関係性も、本書の大きなテーマの一つなので詳細は書きませんが、
「『たいしたもんだ』とイリーナが笑った。『私にはなぜああいう部下がいないのか』
『人徳の違いじゃないですか』
投げやりに答えると同時にドアが開いて、再び護衛兵士が現れた。」(366ページ)
というあたりなど、単なる鬼教官と生徒・部下という位置づけでないことが伺われていいシーンだと思います。

ある程度の戦果を収めたセラフィマが、新聞記者の取材を受けるシーンも、ややありきたりながらいいですね。
「新聞に載る言葉は自分のものではなく、常に、自分の言葉を聞いた新聞記者のものだ。」
「彼の綴る記事。その世界の自分は、きっと目の前で戦友が肉塊になったこともなければ、浮き足だって看護師に殴られたこともない、無敵の戦士なのだろう。変性的な意識のもと、現実から逃れようと歌いながら狙撃したことも、記事は愛国者の美談へと昇華させる。」(330ページ)

描かれるのは戦場が中心で、第二次世界大戦を描くとつきもののドイツの非業はあまり触れられませんが、
「ポーランドに攻め込んだ赤軍兵士たちは、ドイツがユダヤ人を虐殺していることは百も承知であったが、虐殺収容所を用いて何百万人を殺害し、摘発、輸送、収容から抹殺に至るまで社会機構とでも呼ぶべきシステムを構築して、ユダヤ人をヨーロッパから消滅させようとしているとは知らなかった。
 ナチス一党や軍人のみならず、広くドイツ国民の加担なくして成立し得ない大虐殺。」(357ページ)
とさらりと書かれているあたりは、特に、ナチスに限定せずドイツ国民全体に投げかけているところがかえって恐ろしく感じました。

戦争における非情な戦いを描いていますが、
そもそも戦争自体が非人道的なもので、
「この戦争には、人間を悪魔にしてしまうような性質があるんだ。」(356ページ)
というセリフを言う人物とセラフィマが迎える結末は、その象徴的なシーンであり、この小説の構成の美しさを示す箇所です。
また、パヴリチェンコの箇所もそうですが、戦後も視野に入っていることが、戦争を通した少女の成長物語の構成を確固たるものにしているように思えました。

物語の構成という点であえて疑問を呈するとすると、ドイツ側の狙撃手の視点になる箇所が数ヶ所あり、そこも読み応えのあるシーンになってはいる(さらに言うと、女性狙撃手を取り上げ、戦争、戦場における女性をテーマとするうえで、大きなピースとなる箇所となっているので入れておきたい要素・エピソードであることは重々理解できる)のですが、全体を通してみた時に、セラフィマたちの物語とのアンバランスさが気になりました。
もっとも書き込みすぎるとこの小説自体が長すぎることになってしまったかもしれません(今でも少々長い気がします)。

とはいえ、全体として非常に堂々とした構造を持つ戦争冒険小説で、ロシアによるウクライナ侵攻とタイミングが合ってしまったことといい話題性十分で、広くお勧めしたいです。


<蛇足>
「だが少佐の意思など、この際問題ではない。」(274ページ)
「意思」という用字、気になります。学校で習う「いし」は「意志」だったかと思います。
「意思」は法律用語のような気がしてならないのです。



<2023.8.3追記>
このミステリーがすごい!と週刊文春ミステリーベスト10のランキングを追記しました。




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私の嫌いな探偵 [日本の作家 東川篤哉]


私の嫌いな探偵 (光文社文庫)

私の嫌いな探偵 (光文社文庫)

  • 作者: 東川 篤哉
  • 出版社/メーカー: 光文社
  • 発売日: 2015/12/08
  • メディア: 文庫

<カバー裏あらすじ>
男が真夜中の駐車場を全力疾走し、そのままビルの壁に激突して重傷を負った。探偵の鵜飼杜夫は、不可解な行動の裏に隠された、重大な秘密を解き明かしてゆく。(「死に至る全力疾走の謎」)烏賊神神社の祠で発見された女性の他殺死体が、いったん消失した後、再び出現した! その驚きの真相とは?(「烏賊神家の一族の殺人」) 何遍読んでも面白い、烏賊川市シリーズ傑作集!


2023年2月に読んだ6冊目の本です。
「私の嫌いな探偵」 (光文社文庫)
東川篤哉の烏賊川市シリーズの短編集で
「死に至る全力疾走の謎」
「探偵が撮ってしまった画」
「烏賊神家の一族の殺人」
「死者は溜め息を漏らさない」
「二〇四号室は燃えているか?」
の5編収録。

「私立探偵、鵜飼杜夫。黎明ビルの四階にて《トラブル大歓迎》のキャッチフレーズとともに、探偵事務所の看板を掲げる彼こそは、街いちばんの名物探偵、略して、名探偵である。」(63ページ)
とは言い得て妙。
名探偵とは言い難いけれど、それでもこの鵜飼杜夫、数々の事件を解決してきてはいますね。

「死に至る全力疾走の謎」は奇抜なトリックが特徴ですが、このトリックでこの作品のような状況になるでしょうか?
すくなくとも「壁に向かってもの凄い勢いで走っていく姿」(18ページの目撃者の証言)のようには見えないと思います。

「探偵が撮ってしまった画」は連続した写真が不可能状況を解き明かすきっかけになるという話ですが、うーん、この段取りに切れ味がないのが残念。トリックの解明はできたとしても決め手にはならないし、トリックそのものがあまりにも凡庸で写真がなくても解明できそうです。

「烏賊神家の一族の殺人」は現場の状況がわかりにくいのが難点。まあ、はっきり書いてしまうとトリックが露骨になりすぎるからだと思いますが、ずるい印象をぬぐえません。
ただ、剣先マイカというゆるキャラには注目すべきではあるマイカ(笑)。

「死者は溜め息を漏らさない」は、エクトプラズムを見た中学生という謎がおもしろい。
ただ解明された状況を見て、エクトプラズムと思うことはないのではないかと感じてしまうのが難点です。

「二〇四号室は燃えているか?」での小道具(と書いておきます)を利用したトリックがあまりにも陳腐なのでびっくりできますが、作中に書かれているような流れで手がかりが捜査で見過ごされることはあり得ないと思うので、さらにがっかり。

ベタな笑いにくるまれた本格ミステリというのがこのシリーズの(というか東川篤哉の)売りだと思うのですが、どうもこの短篇集ではユーモアというのを隠れ蓑にして詰めるべき点を詰めないでいるように思えてならないですね。





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静かな炎天 [日本の作家 若竹七海]


静かな炎天 (文春文庫)

静かな炎天 (文春文庫)

  • 作者: 七海, 若竹
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2016/08/04
  • メディア: 文庫

<カバー裏あらすじ>
ひき逃げで息子に重傷を負わせた男の素行調査。疎遠になっている従妹の消息。依頼が順調に解決する真夏の日。晶はある疑問を抱く(「静かな炎天」)。イブのイベントの目玉である初版サイン本を入手するため、翻弄される晶の過酷な一日(「聖夜プラス1」)。タフで不運な女探偵・葉村晶の魅力満載の短編集。


2023年2月に読んだ5冊目の本です。
若竹七海「静かな炎天」 (文春文庫)
「このミステリーがすごい! 2017年版」第2位です。


「青い影 7月」
「静かな炎天 8月」
「熱海ブライトン・ロック 9月」
「副島さんは言っている 10月」
「血の凶作 11月」
「聖夜プラス1 12月」
の6話収録の短編集。
各話7月から12月まで、月が振られているのがいいですね。
葉村晶ものとして短篇集は「依頼人は死んだ」 (文春文庫)以来ですが、あちらもこういう趣向だったかな? 実家に戻ったら確かめてみなければ。

葉村晶は相変わらずの不運続きで、トラブルに巻き込まれて、という定番の怪我以外に、四十肩まで襲ってくるという(笑)。
しかも、毎月、毎月。

amazon に各話の簡単な紹介があったので、引用します。

バスとダンプカーの衝突事故を目撃した晶は、事故で死んだ女性の母から娘のバッグがなくなっているという相談を受ける。晶は現場から立ち去った女の存在を思い出す…「青い影~7月~」
・かつて息子をひき逃げで重傷を負わせた男の素行調査。疎遠になっている従妹の消息。晶に持ち込まれる依頼が順調に解決する真夏の日。晶はある疑問を抱く…「静かな炎天~8月~」
・35年前、熱海で行方不明になった作家・設楽創。その失踪の謎を特集したいという編集者から依頼を受けた晶は失踪直前の日記に頻繁に登場する5人の名前を渡される。…「熱海ブライトン・ロック~9月~」
・元同僚の村木から突然電話がかかってきた。星野という女性について調べろという。星野は殺されており、容疑者と目される男が村木の入院する病院にたてこもっていた。…「副島さんは言っている~10月~」
・ハードボイルド作家・角田港大の戸籍抄本を使っていた男がアパートの火事で死んだ。いったいこの男は何者なのか?…「血の凶作~11月~」
・クリスマスイブのオークション・イベントの目玉になる『深夜プラス1』初版サイン本を入手するため、翻弄される晶の過酷な一日を描く「聖夜プラス1~12月~」。

いずれも、ふと覗く悪意、邪気が魅力なのですが、その中でも鮮烈なのが表題作「静かな炎天」でしょうか。
葉村晶にしては珍しく、快調に細かな依頼を迅速にこなしてしまうという幸運の中、まさかそんな、とあっけにとられてしまいました。
すばらしい。

こちらがヨタヨタと積読している間に、すでにシリーズの続刊が2冊も出ています。
「錆びた滑車」 (文春文庫)
「不穏な眠り」 (文春文庫)
今年は読むぞ!


<蛇足1>
「住人の留守を狙って忍び込む空き巣には、侵入のための技術がいる。一方で、住人が在宅中、庭に面した窓を開けっ放しにしているその隙をつき、屋内に入り込み、リビングやキッチンにおきっぱなしのバッグなどから現金だけを抜き取って、一分足らずで仕事を終える居空きには、確かな観察眼となによりも度胸が必要だ。」(37ページ)
居空きというのがあるんですね。恐ろしい。

<蛇足2>
「ディック・フランシスの主人公がこういう仕事をしていたな、と思いつつ、さらに情報をかき集めた。」(166ページ)
うわぁ、覚えてないなぁ、どの小説かなぁ、と思ったのですが、巻末の「富山店長のミステリ紹介ふたたび」で説明されていました。(308ページ)
こういうのありがたいです。

このミステリ紹介は、知っている本でも知らない本でも楽しめるとても楽しい好企画ですね。

『血の収穫』 前記ダシール・ハメットの傑作。原題は ”Red Harvest” なので『赤い収穫』という邦題もありますが、『血の収穫』のほうがぐっとくるかな。いろいろご意見もありましょうが、私は「原点に忠実」よりも「生き生きとした日本語」派。『四人姉妹』より『若草物語』、『二年間の休暇』より『十五少年漂流記』、『リトル・プリンス』より『小公子』。昭和の邦題は味がありましたなぁ。

というくだりとか共感して自分の年齢を実感したしたりして。


<2023.8.3追記>
このミステリーがすごい!  のランキング情報を追記しました。


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中尉 [日本の作家 か行]


中尉 (角川文庫)

中尉 (角川文庫)

  • 作者: 古処 誠二
  • 出版社/メーカー: KADOKAWA
  • 発売日: 2017/07/25
  • メディア: 文庫

<カバー裏あらすじ>
敗戦間近のビルマ戦線にペスト囲い込みのため派遣された軍医・伊与田中尉。護衛の任に就いたわたしは、風采のあがらぬ怠惰な軍医に苛立ちを隠せずにいた。しかし、駐屯する部落で若者の脱走と中尉の誘拐事件が起こるに及んで事情は一変する。誰がスパイと通じていたのか。あの男はいったい何者だったのか――。一筋縄ではいかない人の心を緊迫状況の中に描き出し、世の不条理をあぶり出した戦争小説の傑作。


2023年2月に読んだ4冊目の本です。
ずっと読んできている古処誠二の作品です。
引用したあらすじに戦争小説とあるように、この「中尉」 (角川文庫)は、第二次世界大戦敗戦前後のビルマを舞台にしたもので、ミステリではありません。
あえてミステリ仕立てにしていないのだと思われますが、謎とその真相は非常に魅力的です。

はっきりと書かれてはいないものの、冒頭やラストから判断すると、現在進行形で物語られるのではなく、あとから振り返って述べられているという設定と思われますが、そうした場合によくある、反戦思想をもった視点人物というのではなく、この作品のわたしは、当時の価値観が伝わってくるのがポイントだと思います。
一方で、基本的には天皇を頂点とする大日本帝国の体制を信奉する軍人でありながら、冷静な目を兼ね備えているのが興味深い。

「兵役は苛酷で誰もが避けたい。ゆえに丈夫な男にしかこなせない義務だとわたしは信じていた。兵役を損と位置づける発言を悔やむ程度の心がけは少なくとも持っていた。女に月経と出産の苦しみがあるのならば男に入営と出征の苦しみがなければ不公平だとも思っていた。」(141ページ)
あるいは
「天皇陛下という存在は戦に負けたときにこそ真価を発揮する。」(144ページ)
などという意見は、この主人公:わたしならでは、と思えます。

「とある駅で使役に出たとき『君たちが負けたのは君たちが弱かったからではない』と監視兵に言われたことがある。敗者への気遣いならばわたしは逆に憤慨しただろうが、そのインド兵はどこまでも真剣だった。『もし日本に優秀な指導者がいたら今ごろ君たちはインドに駐留している』との自説を監視そっちのけで語るのだった。インパールを日本軍が占領していればインドの国民は刺激されていた。そして反英に立ち上がっていたという主旨だった。」(140ぺージ)
というのも興味深いですし、
「それにしても世界大戦の終わりが新たな戦を招くのだからこの世は複雑だった。」(146ページ)
などと情勢に冷静な目を向けているのも、現代の読者からするとたいへんありがたい語り手です。

事件に対しても冷静で
「それから先のことは知らない。どのような捜索がなされたのかも知らない。憲兵があとを引き継いだからにはわたしがメダメンサ部落にとどまる理由はなかった。いや、とどまってはならなかった。」(175ページ)
と、思索をめぐらすだけ(いろいろと周りから聞いてはいますが)で、勝手に暴走して捜索することなく、というのも立派です。

その意味では、中尉の誘拐事件の真相も、あくまでわたしの想像でしかないものの、最初に書いたように、非常に魅力的です。
戦時下の状況など正直想像を超えているのだろうと思いますが、それでも非常に説得力のある真相が隠されています。
この真相であれば、いくらでも話を大きくしてさまざまな要素をぶち込むことも可能なように思いますが、あえて登場人物を限定しすっきり見せているところがすごい。

わたしの戦後が幸せなものであるよう祈っています。


<蛇足1>
「ペストの収束までもう一息である。だが、もう一息となれば人間どうしても気がゆるむ。今一度、初日の心に戻るべきである。」(88ページ)
伊与田中尉のセリフです。
「初日の心」となっていて「初心」となっているに注目です。
「初心忘るべからず」の「初心」は本来「最初のころの気持ち」ではないので、こう言うべきですね。

<蛇足2>
「我々の建制は戦中と同じだった。」(145ページ)
なんとなく雰囲気はつかめるのですが、建制がわからず調べました。軍隊で、編制表に定められた本属の組織、とのことです。




タグ:古処誠二
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京都なぞとき四季報 町を歩いて不思議なバーへ [日本の作家 円居挽]


京都なぞとき四季報 町を歩いて不思議なバーへ (角川文庫)

京都なぞとき四季報 町を歩いて不思議なバーへ (角川文庫)

  • 作者: 円居 挽
  • 出版社/メーカー: KADOKAWA
  • 発売日: 2017/12/21
  • メディア: 文庫

<カバー裏あらすじ>
時間や場所を問わず、京大構内で営業を始める「三号館」は、謎を持つ人しかたどり着けないという不思議なバー。妖艶な女マスターは、どんな悩みや謎もすっきり解決してくれるという。四つ葉のクローバータクシー、鴨川の川床、京都水族館、祇園祭……街歩きサークルの遠近倫人(とおちかりんと)は、身近で起こった不思議な出来事の謎を「三号館」に持ち込んでみるが……。季節感溢れる古都で起こる不思議と恋。学生たちのほっこり京都ミステリー。


2023年2月に読んだ4冊目の本です。
これまた円居挽の新シリーズ。「京都なぞとき四季報 町を歩いて不思議なバーへ」 (角川文庫)
親本が出版されてからもう8年以上経ちますが......

単行本のときのタイトルが「クローバー・リーフをもう一杯 今宵、謎解きバー『三号館』へ」ということで、バーで謎解きって、ああよくある設定だな、と思いましたが、そのバーの名前が三番館ならぬ三号館。
これ、絶対意識していますよね! と言いながら、こちらのシリーズは三番館シリーズと違って倒叙ものではないなぁ......
あと、主人公が参加しているサークル名が、加茂川乱歩(笑)。こういうのいいではないですか。

文庫化に際してタイトルが「京都なぞとき四季報 町を歩いて不思議なバーへ」 (角川文庫)と変わっています。
副題として「町を歩いて不思議なバーへ」となっていますが、バー自体は京都大学の構内にある、ということですので、町を歩いて、というのは違うなぁ、と思いましたが、町を歩いて謎にぶつかってバーで謎が解けるということなので、これでいいんだなあ、と納得。

「クローバー・リーフをもう一杯」
「ジュリエットには早すぎる」
「ブルー・ラグーンに溺れそう」
「ペイルライダーに魅入られて」
「名無しのガフにうってつけの夜」

と5編収録の連作で、京都大学新入生で主人公の遠近倫人が物語が進むにつれて成長していく、という構成です。王道ですね。

個々の謎解き自体は基本的には軽めなのですが、主人公・遠近倫人のボーイ・ミーツ・ガールストーリーを支えるものになっているのが好印象です。

「この際、真実はどうでもいい。せめて青河さんが喜んでくれる素敵な推理を練らなければ……。」(78ページ)
なんてモノローグもありますし、

ただ、謎めいた三号館の謎解きは、非現実的というか無理な印象が拭えませんし(ついでに言うと個々の謎解きもちょっと無理のあるものが多い印象)、ラストがそこなので三番館と女マスターに焦点が当たって、遠近倫人のお相手となるはずの青河さんの印象が薄れてしまったのは残念。
続編「京都なぞとき四季報 古書と誤解と銀河鉄道」(角川文庫)が出ているので、その後を確かめてみることにしましょう。



<蛇足1>
「そういえば昔、河原町通沿いに丸善があったんだ」(26ページ)
こう書かれているともうないのかと思いますが、今でも丸善はありますね......
ただビルの中にあるので、わかりにくくなってしまっています。

<蛇足2>
「青河さんは家庭教師のアルバイトがあるとかで、五時過ぎに三条京阪で別れた。あわよくば食事でもと思っていた俺は一人寂しく歩いて帰った。
 迷いながら歩いていたのもあって、京大に辿り着いた時にはもう夜になっていた。」(31ページ)
京都のいわゆる碁盤の目の町は、慣れた人にはきわめてわかりやすいとされるものの、知らない人(方角がただちにわからない人)にはかえって迷いやすいと思っています。
それにしても、(大学に入ったばかり、京都へ移って来たばかりの)4月のこととはいえ三条京阪から京都大学まで迷うとはちょっと思えないのですが......

<蛇足3>
「灰原は女子アナめいたハーフ系の美人で、サークルの男性陣からは人気があった。しかし当人は普通の男に興味は無さそうだ。」(79ページ)
普通の男に興味は無い......すごい設定ですね。

<蛇足4>
「昼前に東寺に集まって、予め決めておいたチェックポイントを通りながら観光していくというコースだった」(110ページ)
東寺というのは、京都駅近くで東海道新幹線から見える五重塔のあるあの東寺ですが、広いので待ち合わせ場所には不向きな気がします。携帯があるから、いいのでしょうか?
あるいは、近鉄の東寺駅のことかな?

<蛇足5>
「「乾杯」」(207ページ)
この箇所、括弧が二重になっていて不思議です。なんだろ?

<蛇足6>
「ソーマは神のお酒、つまり神酒(みき)や。」(224ページ)
うろ覚えだったので、調べてみたら、「ヴェーダなどのインド神話に登場する神々の飲料」とのことでした。

<蛇足7>
主人公遠近倫人が放火犯であると疑われるシーンがあります。
そこでは大学からみっちり絞られるという場面も。
しかし、
「あなたが放火犯であるという確証はありませんが、その可能性が高いとする証言を得ています」(242ページ)
というだけの状況で
「最悪は除籍処分ですが、そこまではいかずとも今年度の単位無効はありえます」(243ページ)
などということがあるのでしょうか? 少々乱暴すぎるように思います。
特にこの大学が京都大学であるとなると、かなり違和感があるのですが(京都大学はかなりリベラルな校風で知られているという認識です)。






タグ:円居挽
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未来探偵アドのネジれた事件簿 タイムパラドクスイリ [日本の作家 森川智喜]


未来探偵アドのネジれた事件簿: タイムパラドクスイリ (新潮文庫nex)

未来探偵アドのネジれた事件簿: タイムパラドクスイリ (新潮文庫nex)

  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2014/10/28
  • メディア: 文庫

<裏表紙あらすじ>
依頼を解決するのは未来のボク?過去のボク?
「愛犬の行方を探してほしい」「息子が暴れて……」「大切な宝石が消えてしまった」。益井探偵事務所にはさまざまな依頼が舞い込む。彼の相棒は芽原アド、23世紀からやってきた元タイムパトロール隊員だ。携帯式時間移動装置を片手に、真相を探る二人のもとに、未来から武村ロミが加わって──。未来犯罪との対決の行方は? 本格ミステリ大賞受賞作家が贈る、時空間ミステリ誕生。


2023年2月に読んだ2冊目の本です。
森川智喜の7作目の本のようです。「未来探偵アドのネジれた事件簿: タイムパラドクスイリ」 (新潮文庫nex)
5作目、6作目にあたる
「半導体探偵マキナの未定義な冒険」(文藝春秋)
「なぜなら雨が降ったから」(講談社)
の2冊が文庫化されておらず、ぼくが読むのは5冊目となります。

今回森川智喜が用意した趣向は、未来探偵。タイムマシンが常態化した未来から来た探偵です。
タイムマシンも、小型化されていて、名付けて《タマテバコ》。

この作品、未来二二四X年から作品がスタートし、タイムパトロール内で、芽原アドの提唱した取り組みが否定されたよう。

で、話は現在二〇一X年へ。
益井丸太は、相棒である未来探偵芽原アドと探偵事務所を営んでいる。芽原アドはタイムマシンを持っています。
もう一つ、重力遮断服というのがあって、宙を浮くことができる。いいですねぇ。

タイムマシンがあれば、事件発生時に飛んで行って、犯行を目的すれば簡単に真相がわかる、とは誰でも思うことですよね。
この作品ではなんと、本当にそうしてしまいます(笑)。
あるいは未来に行って、事件がどう決着したのか聞いてしまう。または未来から芽原アドがやってきて真相を教えてくれる。
なんだそれ、という感じですね。ミステリの探偵なのに推理は放棄しちゃってますよ!
<ズル>だ!

過去に行って犯行を阻止してしまったら、事件自体が起こらず、すると事件の捜査を依頼されることもなく.....とタイムパラドックスに悩むことになるのですが、そこは「因果」という概念が導入されていて、因果ポテンシャルの多寡によりうまく修復されたりされなかったりする、と。題して因果物理学。なんか楽しそうです。
でも正直このあたりのメカニズムは納得するレベルには到底至りません。
登場する現代人である益井丸太同様
「この矛盾はね、無限のものを扱っているのに、有限と同じ発想で計算したから発生したの。いま益井さんがいったのも同じこと。無限に伸びる時間軸や、未来からやってくることができる無限回の機会を、有限と同じ感覚で扱うのがだめなの。わかった?」(156ページ)
と言われても、なんのことだか......
でも、要するに、タイムパラドックスを吹っ飛ばしたんだと思うんですよね、作品の設定上。
矛盾している、あるいは矛盾が起こってしまうという印象がぬぐえないのですが、それでも、タイムパラドックスを気にしなくてもいい、ということだ、と割り切ってしまって、理屈はわからなくてもこの作品は楽しめます。

この作品のメインは、現在時点における探偵の活動で、探偵事務所に持ち込まれる事件が、殺人はなく軽めのものである点も効果を上げています。
そこへ未来人の犯罪者が絡んできます。そこは盗難とか詐欺という事件になって、その中では重めの犯罪です。
<ズル>をする探偵による軽妙な捜査が楽しいのですが、この物語の様相がラストに至ってすっとボーイ・ミーツ・ガールに転じるところがポイントだと思います。
この変化の根底をなす部分は堂々と明らかになっていまして好印象。
楽しかったですね。


<蛇足>
「どうして、後ろに人がいるってわかったんですか?」
「街頭に照らされて、顔が見えていましたので」(216ページ)
わかりやすい誤植ですね。街灯。





タグ:森川智喜
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大江戸科学捜査 八丁堀のおゆう 千両富くじ根津の夢 [日本の作家 や行]


大江戸科学捜査 八丁堀のおゆう 千両富くじ根津の夢 (宝島社文庫 『このミス』大賞シリーズ)

大江戸科学捜査 八丁堀のおゆう 千両富くじ根津の夢 (宝島社文庫 『このミス』大賞シリーズ)

  • 作者: 山本 巧次
  • 出版社/メーカー: 宝島社
  • 発売日: 2016/12/06
  • メディア: 文庫

<カバー裏あらすじ>
史上最高額――根津・明昌院の千両富くじに沸く江戸の町で、呉服商の大店に盗人が忍び込んだ。同心の伝三郎たちは、その鮮やかな手口から、七年前に八軒の蔵を破った神出鬼没の盗人“疾風の文蔵”の仕業に違いないと確信する。一方、江戸と現代で二重生活を送る元OLの関口優佳=おゆうは、長屋の奥さんから依頼された旦那探しと並行して、現代科学を駆使して伝三郎の捜査に協力するが……。


2023年2月に読んだ最初の本です。
山本巧次「大江戸科学捜査 八丁堀のおゆう 千両富くじ根津の夢」 (宝島社文庫 )
シリーズ第3弾。

このシリーズ、快調ですね。
広く解禁されることになった富くじとして、高額賞金で耳目を集める根津・明昌院の千両富くじが中心テーマです。
それと、江戸を騒がせる大店の窃盗事件がどう絡むのか。七年間遠ざかっていた盗人“疾風の文蔵”はなぜ戻ってきたのか、という謎もついてきます。

富くじをめぐる事件の構図が非常に印象的です。
このアイデアは素晴らしい。

これと比べると窃盗事件の方は底が割れやすくなっていますが、おゆうが近所の奥さんから捜索を頼まれる元錠前師で金物細工師の行方と絡ませるのは手堅いですし、事件全体の構図にしっかり溶け込んでいるのがいいですね。

蔵を守る鍵として、和錠が出てきます。錠前師の出番ですね。
「和錠とは日本独特の錠前で、泰平の世になって失業した刀鍛冶が技術を生かして製作し、江戸時代に発達したものだ。明治以降は手軽な南京錠に取って代わられたが、いかにも日本の匠らしい精緻で凝った作りは、芸術品と言うべき価値がある。」(73ページ)
と説明されていますが、たぶん、見たことないですね。
見てみたい。

このシリーズは、江戸を舞台に科学捜査を持ち込むところが特色ですが、遺留品を手掛かりにする手際も、指紋やDNAといった技術を表立っては説明に使えないことによる限界も、かなりこなれてきて、自然な仕上がりです。
もっとも暗視スコープやスタンガンまで持っていって、立ち回りまで演じるのはさすがにやりすぎで苦笑しますがーーこれはこれで見どころなんですけどね。255ページに、おゆうが活躍できた言い訳(?) が書かれていますが、苦しいですよね。

そして、おゆうを敵視する茂三とのやりとりもいい。
シリーズ第1作の「大江戸科学捜査 八丁堀のおゆう」 (宝島社文庫)で披露されていた設定がここで生きてくるとは。

最後に、伝三郎が少々不穏な独白をするシーンで終わるので、シリーズの今後がますます楽しみになりました。

シリーズは、
「大江戸科学捜査 八丁堀のおゆう」 (宝島社文庫)(感想ページはこちら
「大江戸科学捜査 八丁堀のおゆう 両国橋の御落胤」 (宝島社文庫)(感想ページはこちら
「大江戸科学捜査 八丁堀のおゆう 千両富くじ根津の夢」 (宝島社文庫)
「大江戸科学捜査 八丁堀のおゆう 北斎に聞いてみろ」 (宝島社文庫)
「大江戸科学捜査 八丁堀のおゆう ドローン江戸を翔ぶ」 (宝島社文庫)
「大江戸科学捜査 八丁掘のおゆう 北からの黒船」 (宝島社文庫)
「大江戸科学捜査 八丁堀のおゆう 妖刀は怪盗を招く」 (宝島社文庫)
「大江戸科学捜査 八丁堀のおゆう ステイホームは江戸で」 (宝島社文庫 )
「大江戸科学捜査 八丁堀のおゆう 司法解剖には解体新書を」 (宝島社文庫)
と順調に続いています。
読み進めるのが楽しみなシリーズです。おすすめです。


<蛇足1>
「はい、ちょっと拝見させていただきます」
おゆうは鷹揚に告げると、ざっと店の中を見渡した。(180ページ)
「拝見」が敬語なので「拝見します」が正しい。まあ、「させていただきます」自体があまりよろしくはないのですが......
江戸時代にこれはないでしょう、と普通ならいうところですが、この話者は、おゆう=現代人の関口優佳ですから、問題ないのですね。現代人ならよくある間違いですから。
ただ、こう言われた店の者は、ぎょっとしたと思います。
そういえば、古文の授業で二重敬語は天皇にしか使わないと習ったのですが、江戸時代将軍にも使ったのでしょうか? ふと気になりました。


<蛇足2>
途中、伝三郎が謹慎となった際、勝手な行動を奉行所が見て見ぬふりしようとするくだりがあります。
「そうか。処分を出した浅川の立場もあるので、奉行がそれを取り消すわけにもいかない。さりとて、明昌院も放置できない。そこで謹慎を逆手に取って、利用することにしたのだ。さすが切れ者と評判の、筒井和泉守だ。」(214ページ)
でも、これ、切れ者の判断でしょうか?
現代の感覚でコンプラ意識というつもりは毛頭ありませんが、そもそもそれほどの妙手とも思えないのですが。
一方で、伝三郎に相当の信を置いていることの証ではありますね。

<蛇足3>
「その午後、おゆうは大番屋の一室で、他の目明したちと座って伝三郎と境田を待っていた。」(268ページ)
さらっと書いてありますが、十手を渡されているので、こういうオフィシャルな場(今でいうと捜査本部の会議ですね)にもしれっとおゆうは参加できるのでしょうか? 今だと考えられない気がしますね。
この場には引退した茂三も参加しています。

<蛇足4>
「目明したちから控えめな失笑が漏れた。」(269ページ)
言葉本来の意味からすると、控えめな失笑というのは変らしいですね。
調べてみると失笑というのは「(笑ってはならないような場面で)おかしさに堪えきれず,ふきだして笑うこと。」ということですから。
文化庁が毎年やっている調査で知りました。

<蛇足5>
「大宮宿を経て、粕壁には明日にも着くだろう。日光街道を行けば真っ直ぐ粕壁だが、江戸所払いは三カ所ある大木戸で執行と決まっているので、少し遠回りでも中山道を行くことになる。」(360ページ)
春日部は粕壁と書いたのですね。
「埼玉県の粕壁町が町村合併で春日部町になったのは、昭和十九年の四月」と作中に説明があります。






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